メンタルヘルス

Q. いないはずの人がいる幻覚を見ました。病院に行くべきですか?

【精神科医が解説】見えないはずのものが見えたり、聞こえないはずの声が聞こえたりする幻覚。精神疾患が原因のこともありますが、多くはありふれたもので心配はいりません。分かりやすく解説します。

中嶋 泰憲

執筆者:中嶋 泰憲

医師 / メンタルヘルスガイド

Q. 部屋に知らない人がいる幻覚を見ました。精神的にマズい状態でしょうか?

悩む男性

「今たしかに人がいたような……」 幻覚が見えたら心の病を疑うべき?


Q. 「夜寝ようとしたとき、誰もいないはずの部屋に人が立っているのを見ました。一瞬ですがかなりはっきりと見えたので、いわゆる『幻覚』を見たのだと思います。最近忙しく、疲れている自覚はありますが、幻覚を見るほどの精神状態となると、かなりマズいのでしょうか? 病院に行くべきか、少し迷っています」
 

A. その後の日常生活に影響が出ていないなら、問題ありません

結論から言うと、日常生活に影響が出ていない限りは、全く問題ありません。そこにいないはずの誰かの姿が見えたり、声が聞こえたりする「幻覚」は、精神医学的には「精神病的な精神体験」と言います。何となく誰かに後をつけられているような気がするのも、その類です。私たちの4人に1人は、一生のうちにそうした精神体験をするとも言われています。

実際、筆者にも似たような経験があります。雪が空を舞う、寒さの厳しい冬の日のことです。午後の外来診療が始まる前、病院内にはまだ誰もいません。しかし突然、診療室の扉を隔てた受付のあたりから、若い女性の笑い声が聞こえたのです。事務の女性も、同じ声を聞きました。もう一人の病院スタッフの笑い声かと思ったのですが、その女性は全く違う場所にいたのです。
 
それでは、聞こえた笑い声は何だったのでしょうか? 幻覚だとすれば、自分も事務の女性も、同じタイミングで同じ内容の精神病的体験をしたことになります。一種の「集団幻覚」と言えるものかもしれません。あるいは、女性の笑い声に似た何らかの音がした可能性もあります。そうならば、単なる聞き違いです。いずれにしても、その声を聞いた筆者も事務の女性も、それまで通りの毎日を送れていますので、精神医学的な問題はないと考えられます。

一度幻覚があったとしても、その後の日常生活に変わりがなければ問題はないのです。もしも、「何度も同じ幻覚を見て、不安が大きい」「幻覚が気になり、仕事に集中できない。夜も眠れない」など、日常生活への支障が出ている場合は、精神科で相談してみることをおすすめします。

また、余談ではありますが、読者の方の中には、笑い声の正体が気になるという方もいるでしょう。事実は分からないままですが、周辺情報が1つあります。実は、病院から見える塀の向こうにはお寺の墓地があるのです。筆者は医師ではありますが、「もし幽霊だったとしても、笑い声をたてる幽霊ならきっと怖いことはしないだろう……」と考えるようにしています。考え方で気持ちを落ち着かせることも、心の健康のために大切なことだからです。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※当サイトにおける医師・医療従事者等による情報の提供は、診断・治療行為ではありません。診断・治療を必要とする方は、適切な医療機関での受診をおすすめいたします。記事内容は執筆者個人の見解によるものであり、全ての方への有効性を保証するものではありません。当サイトで提供する情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、各ガイド、その他当社と契約した情報提供者は一切の責任を負いかねます。
免責事項

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます