Q. 部屋に知らない人がいる幻覚を見ました。精神的にマズい状態でしょうか?

「今たしかに人がいたような……」 幻覚が見えたら心の病を疑うべき?
Q. 「夜寝ようとしたとき、誰もいないはずの部屋に人が立っているのを見ました。一瞬ですがかなりはっきりと見えたので、いわゆる『幻覚』を見たのだと思います。最近忙しく、疲れている自覚はありますが、幻覚を見るほどの精神状態となると、かなりマズいのでしょうか? 病院に行くべきか、少し迷っています」
A. その後の日常生活に影響が出ていないなら、問題ありません
結論から言うと、日常生活に影響が出ていない限りは、全く問題ありません。そこにいないはずの誰かの姿が見えたり、声が聞こえたりする「幻覚」は、精神医学的には「精神病的な精神体験」と言います。何となく誰かに後をつけられているような気がするのも、その類です。私たちの4人に1人は、一生のうちにそうした精神体験をするとも言われています。
実際、筆者にも似たような経験があります。雪が空を舞う、寒さの厳しい冬の日のことです。午後の外来診療が始まる前、病院内にはまだ誰もいません。しかし突然、診療室の扉を隔てた受付のあたりから、若い女性の笑い声が聞こえたのです。事務の女性も、同じ声を聞きました。もう一人の病院スタッフの笑い声かと思ったのですが、その女性は全く違う場所にいたのです。
実際、筆者にも似たような経験があります。雪が空を舞う、寒さの厳しい冬の日のことです。午後の外来診療が始まる前、病院内にはまだ誰もいません。しかし突然、診療室の扉を隔てた受付のあたりから、若い女性の笑い声が聞こえたのです。事務の女性も、同じ声を聞きました。もう一人の病院スタッフの笑い声かと思ったのですが、その女性は全く違う場所にいたのです。
それでは、聞こえた笑い声は何だったのでしょうか? 幻覚だとすれば、自分も事務の女性も、同じタイミングで同じ内容の精神病的体験をしたことになります。一種の「集団幻覚」と言えるものかもしれません。あるいは、女性の笑い声に似た何らかの音がした可能性もあります。そうならば、単なる聞き違いです。いずれにしても、その声を聞いた筆者も事務の女性も、それまで通りの毎日を送れていますので、精神医学的な問題はないと考えられます。
一度幻覚があったとしても、その後の日常生活に変わりがなければ問題はないのです。もしも、「何度も同じ幻覚を見て、不安が大きい」「幻覚が気になり、仕事に集中できない。夜も眠れない」など、日常生活への支障が出ている場合は、精神科で相談してみることをおすすめします。
また、余談ではありますが、読者の方の中には、笑い声の正体が気になるという方もいるでしょう。事実は分からないままですが、周辺情報が1つあります。実は、病院から見える塀の向こうにはお寺の墓地があるのです。筆者は医師ではありますが、「もし幽霊だったとしても、笑い声をたてる幽霊ならきっと怖いことはしないだろう……」と考えるようにしています。考え方で気持ちを落ち着かせることも、心の健康のために大切なことだからです。