転職のノウハウ

「退職代行を使うなんて信じられない」と中高年は言うけれど…“すぐに辞める”メリットとデメリット

入社や異動後のミスマッチなどが原因で、短期間で退職をする人は少なくない。退職代行業者を使う若者もいる。早期に退職するメリット、デメリットを考え、また退職代行業者を使う際の注意点について考察する。

小松 俊明

執筆者:小松 俊明

転職のノウハウ・外資転職ガイド

すぐに退職するメリット、デメリットと退職代行業者を使う際の注意点とは

退職する際、本人の代わりに会社へ退職の意思を伝える「退職代行サービス」を使う若者もいる

春から初夏にかけては、就職や転職で新しい環境を迎えた若手社会人で街はあふれる。一方、年代にかかわらず社員の異動が増える時期でもあるがゆえに、新しい仕事や上司、同僚との出会いと向き合う人も多い。

その結果、新しい環境に対して悩みを抱く人が増え、流行りの「退職代行業者」が忙しくなるのが最近の風物詩となっている。本稿では早期に退職することのメリット・デメリットを考え、退職代行業者を使う場合の注意点についても考察する。
 
<目次>
 

若い世代が退職代行を利用する背景

できることなら短期間での退職はしたくないという人は多いはずだ。新しいことを始めるにはエネルギーがいるものだし、相応の初期投資も発生するので、それらを回収する前に早期に退職することになれば、一方的に損してしまうことが多いからだ。人は誰しも損をしたくないもの。

一方、ネットニュースでは「入社式当日に退職の意思を固めた」という新卒社員のコメントが躍っている。理由はさまざまだが、一言で言えば「聞いていた話と違う」「思っていた会社(仕事)と違った」というような「ミスマッチ」が主たる原因のようだ。

これは若手からベテランに至るまで、多かれ少なかれ共感する感情であるに違いない。自分の理解力が足りなかったのか、それとも相手が変節したのか、ケースバイケースであるだろうが、どちらにしてもボタンの掛け違いは、早々に破綻を招いてしまう。

「退職代行業者って何だ?」と、中高年世代には、この新しいビジネス形態が生まれたこと、そして話題を集めていることに複雑な思いを持つ人は少なくないだろう。

「自分の力で会社を辞められないなんて信じられない」、そうした反応も一定数あるだろうが、世の中がさまざまなハラスメントにあふれていること、誹謗中傷が横行するネット社会があること、そして検察や警察への絶対的な信頼が崩れつつあり、まして政治家への信頼は地に落ちてしまった現代において、退職代行業者は、若い世代にとって“コスパ”“タイパ”のいい自衛手段の1つであり、今後も数は増え続けて世の中に定着していくのではなかろうか。

そうした時代背景を踏まえ、早期に退職することのメリット・デメリットについて改めて整理し、退職代行業者を使う場合の注意点について考察しよう。
 

早期に退職することの「デメリット」

まずは早期に退職することの「早期」とは、どのくらいの期間を指すのだろうか。意見が分かれるところだろうが、本稿では「1年以内の退職」と位置付けて考察したい。その上で、早期に退職することのデメリットは2つの側面から語ることができる。「他者から見た評価」と「自分自身の経験」、この2つだ。

まず「他者から見た評価」とは、早期に退職することがキャリアの履歴に残ることが深く関係している。つまり、個人の職務経歴書を書く際に短期間で退職した事実を記載せざるを得なくなり、将来、転職活動をするたびに新しい雇用主に対して繰り返し説明する必要が生まれるということだ。早期に退職したことは他人からの注目が集まりやすく、特に新しい雇用主が気にすることも多い。またすぐに退職するのではないかという懸念を抱かれやすいのだ。

そもそもなぜ雇用主は社員がすぐに退職することを好まないのか。それは会社の職場環境に慣れ、上司や同僚との信頼関係を築き、会社に仕事で貢献するには一定の時間が必要であるからだ。

もしも社員が早期に退職した場合、会社からすれば一方的な損失が生じてしまう。例えば、早期の退職者が出た職場では社員の士気が下がり、既存の社員の業務負担が上がる可能性もある。採用には多くの労力やコストもかかっているため、それらがすべてむだになりかねない。

このため、企業が中途採用をする際に、社員候補に早期に退職した経歴がある場合、採用を躊躇(ちゅうちょ)することがある。特に二度以上繰り返した人に対する警戒心は強いものだ。“二度あることは三度ある”という思いなのだろう。

次に「自分自身の経験」としても、短期間で退職することにはデメリットが多い。主なデメリットは、人間関係を悪化させる可能性があることや、仕事を覚える時間が足りずにスキルが身に付かないことなどが挙げられる。

新しい環境での再出発に向けて高いエネルギーを使えば使うほど、そこから脱出するためのエネルギーはその何倍も要してしまうかもしれない。早期に退職することは本人にとって楽な選択肢ではないはずだ。
 

最大のメリットは

では短期間で退職することの「メリット」は何か。最大のメリットは自分の過ちを早期に修正できることである。その結果、ダメージを最小限に抑えられる可能性が高い。誰しも失敗をすることはあり、それに気付いたらいち早くアクションを起こすというのはまっとうな考え方である。

ただし、もちろんこれにはリスクもある。時間をかけたことで悩みが軽減されて問題を解決できることもあるからだ。早期の退職を判断した場合、“時間の経過”を味方につけることができない。慣れること、理解を深めること、相手の立場に立つことなどが、自分自身のものの見方や感じ方を変えることがあるが、短期間で退職してしまうと時間が足りず、そうした新たな気付きを得られないことがある。
 

退職代行を使うときの注意点

退職代行業者について、もし使うことを検討するなら注意点がある。それは、退職代行業者を使うメリットとデメリットには“個人差がある”ということだ。なので、自分にとってどのようなメリットやデメリットがあるかを確認することが大切だ。

普通に考えれば、間に人を立てずに直接相手とコミュニケーションを取るほうが誤解は生まれにくく、疑問もその場で解決することができる。しかし辞める社員に対してハラスメントを繰り返す会社があることも事実であることから、自分で退職を伝えることにリスクを感じる人は退職代行業者を使うのもいいのかもしれない。

しかし、単に“コミュニケーションが面倒だから”という理由で退職代行業者を使うと、むしろ問題がこじれてデメリットが拡大する恐れがあるので注意が必要である。
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