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手話で話し、学び、成長するバイリン学校(3ページ目)

日本で初めてとなるろう児(聞こえない子ども)のための日本手話の学校、明晴学園。子どもたちにのびのび成長できる学びの場をと願った親たちの地道な働きかけで生まれました。その取り組みをご紹介します。

筑波 君枝

執筆者:筑波 君枝

ボランティアガイド

夢と熱意さえあれば、応援してくれる人はきっといる!

授業の様子2
子どもたちがイキイキと学ぶ姿を見れば、この学校がなぜ必要だったか容易に理解できます。
子どもの将来の可能性を広げるために充分な教育を受けさせたいとの願いは、どんな親も同じですよね。明晴学園も子どもたちの将来の可能性を摘まないための教育を受けさせたいという親たちの願いが出発点でした。そしてその気持ちが行政を動かし、学校という場を誕生させたのです。

斉藤先生はこう語ってくれました。
「募金を集めたり、ときには行政にかけあったりと、名もないごく普通のお母さんやお父さんが、この活動を支えて、作り上げてきました。苦労は多くても、夢と熱意さえあれば、必ず、応援してくれる人がいるんです。」

実は、斉藤先生、現在は校長先生を務めていますが、元々、教育や福祉の専門家でも、ろうの子を持つ親でもありません。前職は、ニュース23などで活躍するTBSのジャーナリストでした。福祉の現場を取材していくうちに、この問題を知り、深く関わることになったのだそうです。

「振り返ると、すべてを動かしてきたのは子どもたちだなと思います。難しい場面にあっても、子どもたちの笑顔を見ると『やっぱりやってきてよかった』と確認できるんです。この子たちのために頑張らなければという思いだけでここまでやってきました」

次の目標は、「2年後の2010年春までに中等部を開校すること。」

小学部には7人の5年生がいますので、その子たちの中学入学に間に合わせることが目標だといいます。

「資金的には今でも厳しいですよ。でも立ちゆかなくなったら、また小さな規模に戻ってもいいんです。子どもたちが安心して学ぶ場さえ確保できれば、場所はどこでもできますから」

少数派も尊重されることの大切さ

斉藤校長先生
校長の斉藤道雄先生。かつては、TBSの辣腕ジャーナリストとして活躍していたそう。
ろうの人たちへの視線は「聞こえない人たち」と一括りにしてしまいがちです。でも、1人、1人は実に個性的で、その人たちだけが共有する“文化”があります。

少し考えれば、人間1人、1人が違う個性を持つのは「当たり前」ですが、「ろう」ということだけに目を奪われてしまうと、その当たり前のことを見落としてしまいがちです。手話にしても、日本語とピッタリと対応している「はず」と思うのはちょっと一方的。手の動きや顔の表情でやりとりする言語が音声でやりとりする日本語に対応できるはずはなく、独自の言語体系を持っていて「当たり前」なのですが、正直、そんなことを思ったこともないという人が多いのではないでしょうか。

それは「耳が不自由な人たち」をサポートしてあげようとは思っても、「独自の文化を持っている人たち」として尊重するという視点を持てないことにつながっているのかもしれません。

聞こえない人は1000人に1人くらいの割合で生まれてくるそうです。病気や事故などなんらかの原因で聴覚を失ってしまった人たちを含めても、日本の社会では圧倒的な少数派、マイノリティです。明晴学園の設立は、少数派のどもたちの可能性を伸ばす環境を目指したものでした。私自身も、取材を通して、たとえ少数派であっても、その人たちの価値観が尊重され、多様さが認められることの大切さを改めて教えられました。

明晴学園では多くの人たちの支援を募っています。詳しくは、こちらからです。学園の設立の経緯や、学びの様子も詳しく紹介されています。ぜひ一度ご覧になってみてください。

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