これに反応したのが女性たち。すでに2人の子がいる40代の母親は、
「ほんっとにすごいと思う。お金があるから産めるんでしょとか、そういう問題じゃないという気がしてきました。よほど子育て自体が好きなんでしょうね。子ども5人なんて私には絶対無理。自分ができないことをしようとする人は、無条件で尊敬しちゃいます」
そう笑顔で言った。
3人までは理解できるけど……
「3人の子がいますが、子どもたちが小さいころは大変でしたよ。夫は仕事が忙しい上に転勤族だったから、どこへ行っても私は孤独なワンオペ。一時期はけっこうメンタルをやられました。でも、私自身も3人きょうだいだったから、やはり3人ほしかった。3人目が生まれてしばらくたったとき、腹をくくりました。子育てを完璧に楽しもうと」それでも時々めげましたけどねと、26歳で結婚し28歳、30歳、33歳で出産したマサコさん(46歳)は言った。
「3人目は少し余裕がありましたね。上の2人で慣れているから、体は忙しくても気持ちには余裕があった。今になってみると、あと1人くらいは生んでもよかったかもと思ったりします」
子どものかわいさ、成長の面白さを知って
もともと子どもは好きだった。実際に子どもをもってみたら、そのかわいさ、成長の面白さが身に染みた。一方で、食事を作ったり洗濯をしたりと家事に忙殺される現実も知った。「夫は普通の会社員で、特に高給取りでもなかったけど、転勤先では住宅が確保されていたし、ごく普通の生活はできました。ここ数年は私もパートで仕事をしています。一番上は春から大学生。2番目は専門学校に行きたいと言っています。まだまだ学費がかかるけど、子どもの成長が人生最大の楽しみではありますね」
命を生み出し、無事に育てていくのは動物としての基本なのかもしれない。それが楽しくてたまらない人は一定数いるのだろう。他の母親たちが、子だくさんの母親を「無条件にすごい」というのは、大変な子育てを10数年にもわたって続けていけるその腹の据わり方や根性のようなものに敬意を覚えるからなのかもしれない。
女性は二手に分かれるのかも
「私の妹が5人の子持ちなんですよ。私はバツイチ子なしの1人暮らし。実家もわりと近いんですが、その実家から徒歩3分のところに住む妹は7人家族。たまに実家に行くと、いつもおいっこかめいっこがいます。両親も楽しそうだから、私の分も生んでくれてありがとうと思っています」苦笑しながらそう言うのは、アイコさん(43歳)だ。年子の妹は40歳で第5子を出産した。姉と妹という遠慮のない間柄なので、「よく5人も産んだね」とアイコさんは声をかけたことがある。
「だってお姉ちゃん、子どもほど面白いものはないよと妹は真顔で言っていました。うちは2人姉妹ですが、妹の夫は6人きょうだいなんですって。妹は結婚前に夫の実家に行って、きょうだい全員に会ったらしいんですが、大家族って賑やかですてきと思ったそうです。私だったら大家族というだけで引いてしまいますが、妹は『私も大家族で育ちたかった』と心底思ったと。姉妹でもまったく感覚が違いますよね」
アイコさんは早く自立したい、1人で暮らしたいと思いながら育った。20代後半で「大恋愛して」結婚したものの、恋愛と結婚は違うと気付き、1年足らずで離婚してしまった。自分だけの自由がなくなることがたまらなく嫌だった。
「妹なんて、1人になる時間がまったくない。よくそれでやっていけるなと私は思うけど、妹から見ると『お姉ちゃん、寂しくない?』って。私と妹、同じ親に同じ環境で育てられたのに、家族観がまったく違う。面白いですよね」
毎日時間に追われて、ひたすら子どもの面倒を見る日々を、妹は「もう、いやになっちゃう」と言いながら楽しんでいるようだ。
ホスピタリティの有無
「そんなに忙しいのに、父が入院したとか母が風邪を引いたとか聞くと、すぐに駆けつけて面倒を見ているんですよ、子どもを抱きながら。それを見ていて、ホスピタリティのあるなしは個人差が大きいなと思いましたね」私にはほとんどホスピタリティというものがないとアイコさんは言う。子育ても介護も看病も、ホスピタリティの塊でなければできない。だから多くの人はそこにストレスを感じるのだ。相手が喜ぶ状況を作り上げていくことが自分の幸せと感じられなければ、人の面倒はみられない。
「私自身、対人関係が重要な仕事をしていますが、それはあくまで仕事だからやっていける。仕事だと自分を犠牲にしているとは思わないから。どちらかというと、一方的なおもてなしではなく、Win-Winでいきましょうという感じ。でも子育てや介護はかなり一方的に尽くすことでしょう。それが苦もなくできる人は、やっぱり特殊な才能をもっているんじゃないかと思います」
人には向き不向きがある。子どもをたくさんほしい人もいれば、子どもはいらないと思う人もいる。望んでもできない人もいる。まさに人生、いろいろですよねとアイコさんは少しだけ笑った。