本作の主演、中島健人さんに撮影の裏側から自身のターニングポイントなど、さまざまなお話を伺いました。
『知らないカノジョ』主演、中島健人さんにインタビュー
――『知らないカノジョ』で中島さんが演じたリクは、有名作家から、全く違う世界線に迷い込み、出版社勤めの編集者になります。人生が突然ガラリと変わり戸惑うという難役でしたが、どのように考えて撮影に臨んだのでしょうか?中島健人さん(以下、中島):実は役作りはしていないんです。クランクイン前に三木孝浩監督とお話ししたとき、「これまで理論的に芝居を考えてきたと思うけど、この作品は感覚的に臨んでほしい」という言葉をもらいました。そのときから、台本に対して深く考えず、ナチュラルな状態でセリフと向き合うことを意識しました。結果、リクとして自然な感情を作ることができました。
――中島さんにとって新しいアプローチのお芝居だったようですが、その経験によって見えたお芝居の新しい世界はありましたか?
中島:演技をするというのは虚構の世界を作り出すことで、それはうそでもあるのですが、実は真実と表裏一体でもあり、その絶妙なラインをどれだけ見せられるかということだと思うんです。今回はカメラの前でうそをつかない。できる限りナチュラルに赤裸々に見せていくことができたと思います。
――リクを演じるご自身を見て、自分の知らなかった表情などはありましたか?
中島:自分の見られ方を全く意識せずに演じていたので、泣くシーンも何もかもナチュラルな自分が出過ぎていて、正直、皆さんに見ていただくのが恥ずかしい(笑)。「こんな俺でもいいですか?」って思ったくらいです。でもそんな自分の新たな一面を引き出してくれた三木監督、共演のmiletさん、この映画のチーム全員に感謝しています。
10年以上片思いしていた三木監督作!
――中島さんは三木監督作品への出演を10年以上熱望されていたそうですね。三木監督の映画に惹かれたきっかけは?中島:『アオハライド』(2014)で三木監督の映画に惹かれ、『陽だまりの彼女』(2013)で大好きになって、それ以降、三木監督の恋愛映画に憧れ続けていました。ラブストーリーに出演したくて、三木監督なら自分のいいところを引き出してくれるのではないかと思っていたんです。ただなかなか声が掛からなくて……。『知らないカノジョ』で、やっと三木監督作に出演することができました。一番いいタイミングで出演できたと思います。
――いいタイミングとは?
中島:僕がグループを卒業し、新しい環境に飛び込む時期だったので、三木監督が「健人くんと僕が一緒に作品作りをするのは、今が必然だったと思う。新たなスタートを切るタイミングで、健人くんの俳優としての一面を引き出せるのがすごくうれしい」とおっしゃってくださって。その後いただいたお手紙でも「健人くんのターニングポイントにこの作品を通して一緒に過ごせることは貴重です」と、うれしいお言葉もいただき、感無量です。僕自身も三木組に包まれて新しいスタートが切れて本当に良かったと思っています。
――新しいことを始めるときに、信頼できる人と仕事ができるというのは安心感もありますよね。
中島:個人として走り始めていたけれど、音楽活動はまだスタートしていなかったので、この先どうなるのかなと不安もあったんです。そんな中、三木監督の映画に出演できたのは本当に幸運だったと思います。
――映画を拝見しましたが、リクの揺れる感情、リアルでした。
中島:そうかもしれません。ちょうど僕自身、感受性が強く敏感だった時期で、実際に心が揺れることもたくさんありました。
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