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ノーベル平和賞のムハマド・ユヌス氏とは?(2ページ目)

緊急企画!2006年のノーベル平和賞の受賞が決まったムハマド・ユヌス氏の基礎知識をまとめました。マイクロクレジットという事業で、貧困なき世界を目指す銀行家であり、経済学者でもあるユヌス氏ってどんな人?

筑波 君枝

執筆者:筑波 君枝

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マイクロクレジットとは?

ノーベル文学賞を受賞した詩人、ロビンドロナト・タゴールは、バングラデシュの大地を黄金のベンガルと詠いました。その源が豊かな水。バングラデシュは水の国なのです。
グラミン銀行は、ユヌス氏が編み出したマイクロクレジットと呼ばれる事業を展開しています。このマイクロクレジットが、これまでの銀行業務を一変させ、かつ貧困層が自立するのに大きな力を果たす画期的なものであったことが、ノーベル平和賞受賞の大きな理由です。

マイクロクレジットとは、少額無担保融資の意味を持ちます。工芸や畜産、農産物の加工、小売業などの小さな事業を興すために必要な数ドル、数十ドルという少額の資金を、資産や土地などの担保を持たない人に貸し付けるという事業です。

目指すのは、貧困の悪循環を断ち切ること

既存の銀行は、預貯金という形で募ったお金を必要としている人へ、担保という信用を保証に融資をするのが主たる業務でしょう。担保を持たない人は、信用力がないと見なされ、お金は貸してもらえません。

かつてのバングラデシュは、銀行からお金を借りることができない貧困層は、高利貸しからお金を借りるのが唯一の方法でした。稼いだお金も返済と高い利子にあてると底をつき、またお金を借りるという悪循環に陥り、貧しければ、貧しいほど貧困から抜け出せない構図が出来上がっていたのです。貧しい人は、わずか1ドルの現金すら持てないのは、この構図にはまりこんでしまうからにほかなりません。

富める者ほど大きな担保で多額のお金を借り、それを元にますます富む。融資を受けられない貧しい者は永遠に貧しいままという悪循環は、不平等であり、それを裁ち切りたい。ユヌス氏は、その思いから、担保がない貧困層でも、借り手は同性が5人一組となってグループを編成し、連帯責任を負うことを条件にお金を借り、それを元に自立を目指すシステムを生み出しました。それがグラミン銀行のマイクロクレジット事業です。

貧しい人にだけお金を貸すのが条件

製塩工場で働くこの女性の仕事は、パッケージのラベル貼り。狭い薄暗い部屋で黙々と作業をしています。それでも、手にできる給与はほんのわずかです。
グラミン銀行がお金を貸すのは、土地を全く持っていないか、0.5エーカー(約二反:600坪)未満の耕作地しか持っていないことが条件とされています。バングラデシュでは2~4エーカーの豊かな土地を持っていれば、地主として生活できるといわれることがその理由です。

つまり、お金を貸してくれるのは貧しい人だけ。資産を持っている人にしかお金を貸さない既存の銀行と全く逆の発想です。グラミン銀行が“貧者のための銀行”と呼ばれるゆえんがここにあります。

借り手は銀行に行かない銀行

もう1つグラミン銀行の特徴に、「借り手は銀行に行かずに、銀行員が訪問する」ことが上げられます。

お金を借りる人たちは、小規模な事業を興す前にその収益を踏まえた返済計画を各自で作り、グループ内で話し合います。銀行の各支店は定期的に借り手グループの住む地域を訪ねて集会を開き、事務手続きをし、返済計画の説明もするという仕組みです。

日本のような豊かな国では想像できませんが、農村で暮らす貧しい人や、学校に行く機会がなく文字の読み書きを習得できなかった人にとって、銀行のオフィスに出向くのはとても勇気のいる行動です。
「貧しい自分に本当にお金を貸してくれるだろうか」
「人として対等に扱ってもらえるのだろうか」
等々の不安を持ち、「来てください」と言われても簡単に足を向けることはできません。

その不安を取り払うために銀行が出向くことを原則としているのです。銀行員が村を訪れ、融資によって家族の生活がどう改善するかなどのメリットの説明を受けることで、「じゃ、借りてみよう」という気持ちが生まれます。銀行員が自ら出向くということが、グラミン銀行を成功させた重要な要素なのです。特に重視する女性たちへ融資を広げることにも大きな効果を発揮しました。

次ページでは、グラミン銀行が女性を重視する理由とその効果についてご紹介します。
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