今回は、日本の桜の名所の中から、山梨県にある身延山久遠寺(みのぶさん くおんじ)を紹介します。日蓮宗の総本山として設けられた本堂などの建物の大きさに驚くと同時に、境内にて艶やかに美しく咲くしだれ桜は、参拝に訪れた人たちの心に深く残りますよ。
<目次>
桜の名所、日蓮宗の総本山・身延山久遠寺
身延山久遠寺は、山梨県南部の身延町にあるお寺。歴史の教科書にも登場する日蓮宗の開祖・日蓮聖人が1274年に入山後、1281年に本堂などを建立して久遠寺と命名。日蓮宗の総本山として、現代に至るまで日々あつい信仰を集めています。
春の久遠寺の周辺では桜を見かけることが多く、また久遠寺の境内にも各所に桜の木が植えられていて、参拝した人たちの心を癒してくれます。 中でもしだれ桜は、樹齢の古い木があり、大きな幹からたくさんの枝を出して、その名の通り桜の花が枝にぶら下がるように咲きます。その姿は艶やかで、かつ壮観です。
総門から三門を経て、しだれ桜が咲く境内へ
それでは、しだれ桜が咲く久遠寺の境内へお詣りすることにしましょう。日蓮宗の総本山ということもあり、立派な寺院建築が各所に点在していますので、そちらにも注目です。国道52号線から身延山へ向かう県道を進み、身延山入口の交差点を曲がると立派な門が現れます。この門は久遠寺の総門で、ここから先が久遠寺の寺域。なお、お花見の時期以外は、車でこの総門をくぐって奥にある駐車場へ止めることが可能です。 総門の先に現れるのが、三門。けやきで造られた高さ21メートルの門の迫力に圧倒されます。三門の周囲にも桜の木があり、桜が咲く時期には三門と桜のコラボレーションを楽しむことができます。 三門から先、本堂へは「菩提梯(ぼだいてい)」と呼ばれる287段の石段が待っています。
100メートル強の高度を一気に稼ぐため、石段が目の前にそびえ立つような印象を受けますが、この先に本堂がありますので、足下に気をつけながら、ゆっくりと登っていきましょう。 なお石段を避けたい場合は、石段の横にある男坂や女坂を登って境内へ行くか、三門の左側にある車も通れる道を歩いて、身延山ロープウェイの駅近くにある駐車場(せいしん駐車場)まで行くといいでしょう。駐車場から先は斜行エレベーターに乗ると境内へ登れます。 また、三門から本堂のある境内までは乗合タクシーの運行もあり(日中時間帯のみ)、足腰が心配な方でも安心して参拝できます。 菩提梯を登り終えると、正面に現れるのが本堂。乗合タクシーや斜行エレベーターで境内に上がってきた場合も、少し歩いた左側に本堂があります。
身延山久遠寺の本堂は、明治時代初期に火事で焼失後、昭和後期に再建されたもの。日蓮宗の総本山の本堂という貫禄のある建物です。
艶やかに咲く樹齢約400年のしだれ桜
身延山久遠寺の境内には大きなしだれ桜が2本あります。どちらも樹齢は約400年。長い歳月を過ごしてきた桜の木が、年に1度艶やかな花を咲かせます。 本堂の2つ隣の建物、報恩閣の前のしだれ桜は、四方八方に枝を伸ばしています。空に向けて力強く伸びる枝ぶりが印象に残る桜です。 報恩閣や祖師堂など背景の建物を変えたアングルでしだれ桜を愛でたり、真横や下から見上げるなど見方を変えるだけで、大きく印象が変わるしだれ桜でもあります。 もう1つのしだれ桜は、仏殿の前に咲きます。報恩閣前のしだれ桜と比べるとやや小ぶりな桜ですが、仏殿を右手に見るアングルから見ると花がしだれる様子が丸くまとまっているように見えるのが特徴です。 代表的な2本のしだれ桜以外にも、開基堂の前など境内のあちこちに桜の木があり、久遠寺の春を彩ります。例年だと3月下旬から4月上旬にかけて桜の見頃を迎えますが、その年の気候によって見頃の時期は大幅に変わりますので、最新の開花予想を確認してください。 また複数のしだれ桜を組み合わせると違った風景が見えます。お詣りを済ませた後で、お気に入りのアングルを探してみてください。桜風景を楽しみながら、ロープウェイでの空中散歩も
身延山久遠寺は、標高1153メートルの身延山の中腹にあり、身延山の山頂には奥之院思親閣があります。 本堂のある境内の標高はおよそ400メートルで、奥之院思親閣へお詣りしたい時は久遠寺の境内近くから身延山ロープウェイに乗って山を登ることになります。 この身延山ロープウェイの車窓からは、境内のしだれ桜こそ見えませんが、西谷と呼ばれるエリアで桜が咲く風景を見下ろすことができます。一面に桜の花が咲く様子は春限定のすてきな風景ですね。 またロープウェイの奥之院駅近くの展望台からは南アルプスや八ヶ岳、奥秩父の山々と富士山を望めます。天候に恵まれた時は、時間を確保して身延山ロープウェイに立ち寄ることをおすすめします。西谷の桜も間近で愛でたい
身延山ロープウェイの車窓から見えた西谷の美しい桜。時間が許せば、久遠寺の境内から車も通れる参道で三門に歩いて下って、間近で見るといいでしょう。 宿坊でもある本地院本行坊では、敷地内に咲くしだれ桜を門越しに望めますし、西谷からは久遠寺境内の五重塔と本堂と桜を見上げる構図も楽しめます。桜が咲く季節だけの特別な風景です。荘厳な寺院建築に囲まれる中、艶やかで美しいしだれ桜を見ることができる春爛漫(らんまん)の身延山久遠寺を紹介しました。近隣には武田信玄公の隠し湯と称される下部温泉や富士五湖の1つに数えられる本栖湖もありますので、お花見の行き先の候補として身延山久遠寺をぜひ追加してみてください。
身延山久遠寺へのアクセス
<鉄道> 東海道新幹線「こだま」で三島駅下車。JR東海道線 静岡・浜松方面行きの電車に乗り換え、富士駅へ。JR身延線 特急「ふじかわ」あるいは甲府方面行きの普通電車に乗り換えて身延駅下車。身延駅からは山梨交通バス 身延山行きに乗車し、終点下車。身延山バス停は久遠寺の三門の近くにありますが、三門から先、本堂の近くまでは乗合タクシー(有料)で移動することが可能。
また新宿からJR中央線特急「あずさ」「かいじ」で甲府駅乗り換え、JR身延線の利用でも身延駅に行くことができます。
<高速バス>
バスタ新宿より南アルプス市経由身延山行きの高速バス(山梨交通バス、京王バスの共同運行)あり。1日3往復運行。
<車> 東名 清水ジャンクションまたは新東名 新清水ジャンクションより中部横断道に入り、身延山インターチェンジへ。県道を進み、身延山方面への案内に従います。また中央道からも双葉ジャンクションより中部横断道へ進めます。 なお、桜が見頃を迎える期間の日中は交通規制がかかり、身延山久遠寺へ直接車で入れない場合があります。この場合は身延町総合文化会館の駐車場が臨時駐車場となり、シャトルバス(有料)に乗り換えて久遠寺まで移動する形になります。現地での誘導に従ってください。
<地図>
身延山久遠寺:Googleマップ
【関連サイト】 ◇「桜の名所」に、「名所・旧跡」ガイドで桜が楽しめる名所・旧跡を紹介した記事の一覧をまとめてあります。
◇「甲信越の名所」に、「名所・旧跡」ガイドで甲信越地方の名所・旧跡を紹介した記事の一覧をまとめてあります。