「ハチドリのひとしずく~いま、私にできること~」という話を知っていますか?

南米のアンデス地方に伝わる話を明治学院大学国際学部教授で、環境=文化NGOナマケモノ倶楽部主宰の辻信一さんが訳した短い話です。今、この短い話に世代を超えた多くの人が感銘を受け、ジワジワと共感の輪が広がっています。

それはこんな話です。
森が燃えていました
森の生きものたちは われ先にと 逃げて いきました
でもクリキンディという名の
ハチドリだけは いったりきたり
口ばしで水のしずくを一滴ずつ運んでは
火の上に落としていきます
動物たちがそれを見て
「そんなことをして いったい何になるんだ」
といって笑います
クリキンディはこう答えました

「私は、私にできることをしているだけ」

出典:「ハチドリのひとしずく」 辻 信一監修 光文社刊 2005年

いま、私にできること

単行本もじわじわと人気を呼び、この種の本としては異例の3万部を売り上げています。
これは、南米のアンデス地方に昔から伝えられてきた話です。そこに住む先住民族の友人から聞いた辻信一さんが翻訳し、最初はブックレットとして、2005年11月には光文社から単行本として発売されました。単行本は、カナダ、ハイダ民族のアーティスト、マイケル・ニコル・ヤグラナスさんが描いた印象的な絵と共に綴られています。

また、この話に共感した坂本龍一さん、中島朋子さん、C.W.ニコルさんといった著名人からの「私にできること」のメッセージ、加えて「マイバッグを持つ」や「ペットボトルの使い捨てをやめる」など、地球環境のために誰でもできるプチアイディアも盛り込まれた構成となっています。

共感した人が運ぶひとしずく

共感の輪は静かに広がり、ラジオで辻さんが朗読したり、テレビニュースで紹介されたりする度に、ナマケモノ倶楽部やハチドリ計画事務局(ハチドリのひとしずくを広げるために作られた組織)には「感動した」という感想や問い合わせが増えていきました。

さらには、辻さんからこの話を聞いたケニアの環境副大臣ワンガリ・マータイさんが“ハチドリ”となって、各地でその話を伝え、ひとしずくを広めているのだとか。

ハチドリは中南米と北米に生息する体調10センチ程度の小さな鳥。
ガイドが春先に取材したある国際協力NGOのスタッフもマータイさんからひとしずくを受け取った1人でした。

支援国の状況がなかなか改善されないことにため息をつきながら
「でも、マータイさんからハチドリの話を聞いて、とても勇気付けられた。私たちのしていることはハチドリのひとしずくかもしれないけど、ひとしずくがないと始まらないし、きっといつか変わると信じていきたい」
と話していたのが印象的でした。

そして、その方から、ガイドもひとしずくを受け取ったのです。

共感した人が誰かに伝え、その人がまた他の人に伝えるというように、1人ひとりがハチドリとなり、そのひとしずくを少しずつ落としながら、ハチドリ クリキンディの話は徐々にその輪を広げ、文字通り静かなブームとなっています。

なぜ今この話が静かなブームとなっているのでしょうか。次ページでは、その理由を考えてみましょう。