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2024年12月20日、自由民主党・公明党の両党から令和7年度税制改正大綱が発表され、その後2024年12月27日に閣議決定されました。これにより税制改正の法案の骨組みが決まったことになるのですが、私たちの生活に最も身近なポイントとしてはいわゆる「103万円の壁」が「123万円の壁」に引き上げられたことではないでしょうか。
したがって、ここでは税法上、どのような仕組みで「103万円の壁」が「123万円の壁」に引き上げられたのか、その他、どのような税制改正に影響があるのかを整理していきましょう。
現行の103万円の壁の仕組みとは?
123万円の壁の仕組みを見る前に、現行の103万円の壁の仕組みをおさらいしておきましょう。所得税の仕組みの全体像は……
収入から必要経費を差し引いたものが「所得」
所得から所得控除を差し引いたものに税率が課される「課税所得」
「課税所得」に「税率」が課され税額が算定される
ことになりますから、逆から考えれば、収入から必要経費と所得控除を差し引き、課税所得が0円(あるいはマイナス)になってしまえば、税額も0円となります。 アルバイトやパートを含む全ての会社員に対する所得の区分は給与所得であり、その必要経費にあたるものは給与所得控除といいます。現行、税法でその給与所得控除の最低額は55万円です。 また、所得控除の種類は現行税法で15種類あるのですが、合計所得金額2400万円以下の場合、誰でも適用できる基礎控除の額は48万円とされていて、
給与所得控除額55万円+基礎控除額48万円=103万円
となっているので、所得の区分が給与所得である場合、結果として「年収103万円までは所得税がかからない」ということが成り立ちます。これがメディアなどで、いわゆる「103万円の壁」として扱われている、というのが現状でしょう
「123万円の壁」になると、何がどのように変わるのか?
令和7年度税制改正では、この給与所得控除の最低額は55万円から65万円に引き上げられ、また、同様に基礎控除の額も48万円から58万円に引き上げられます。この改正法案は現在、国会で審議しています。したがって、上記算式も
給与所得控除額65万円+基礎控除額58万円=123万円
に置き換わり、これにより所得の区分が給与所得である場合、結果として「年収123万円までは所得税がかからない」ということが成り立ち、これがメディアなどで、いわゆる「123万円の壁」として流布されている、といえるでしょう。
公的年金の受給者の控除額は20万円ではなく10万円
この税制での注意点は、年金受給者は控除額が20万円引き上がらないという点です。給与所得控除の最低額は55万円から65万円に引き上げられたことになるが、公的年金受給者の場合には、基礎控除の額が48万円から58万円に引き上げられた部分の恩恵しか得ることができないのです。つまり、年金をもらっている人は、10万円しか控除の額が引き上がらないのです。
公的年金受給者における給与所得控除額に該当するものは「公的年金等控除額」になりますが、公的年金等控除額の引き上げは令和7年度の税制改正項目にはない、からです。
アルバイトやパートを含む給与所得者の最低額が、給与所得控除の引き上げと基礎控除額の引き上げで合計20万円である、ということは押さえておいてください。
基礎控除の内容もマイナーチェンジ
さらに、基礎控除の内容もさらに細分化されるので、見ていく必要があるでしょう。現行の基礎控除が納税者本人の合計所得金額に応じてそれぞれ……
- 合計所得金額2400万円以下……48万円
- 合計所得金額2400万円超2450万円以下……32万円
- 合計所得金額2450万円超2500万円以下……16万円
- 合計所得金額2500万円超……0円
- 合計所得金額2350万円以下……58万円
- 合計所得金額2350万円超2400万円以下……48万円
- 合計所得金額2400万円超2450万円以下……32万円
- 合計所得金額2450万円超2500万円以下……16万円
- 合計所得金額2500万円超……0円
給与所得控除の改正も、基礎控除の改正も2026年から適用。2025年の確定申告には影響しない
ここで紹介した給与所得控除の改正も、基礎控除の改正も2026年から適用されるので、2024年分の確定申告(2025年に行う確定申告)には影響はありません。ただし、給与所得控除の最低額は55万円から65万円に引き上げられることに伴い……
- 配偶者控除や扶養控除の所得金額要件を48万円以下から58万円以下に引き上げる
- ひとり親控除の所得金額要件を48万円以下から58万円以下に引き上げる
- 勤労学生控除の所得金額要件を75万円以下から85万円以下に引き上げる
- 特定扶養控除を特定親族特別控除とあらため細分化する