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中高一貫教育加速でどうなる私立VS公立 中高一貫校徹底比較(2ページ目)

名門都立高校も中間一貫校にシフトする昨今。私立にはできないことが公立一貫校には可能なのか?公立のメリットとは?一方で私立のメリットとは?

高橋 公英

執筆者:高橋 公英

学習・受験ガイド

4.公立中高一貫校の選抜方法


既存の公立中高一貫校はエリート校作りではないかという批判に配慮して、入学試験を行っているところはない

とは言え、公立中高一貫校への期待は大きく定員以上の志願者が集まるため、なんらかの選抜を行わざるを得ない。既に開校している学校の例を見てみよう。

香川県立高松北中学校・高等学校(H13年度開校、併設型)の場合
作文および面接で入学候補者を絞り、公開抽選を実施し入学予定者を決定する。

岡山市立後楽館中学校・高等学校(H11年度開校、併設型)の場合
作文、面接、調査書。定員を超えれば、公開抽選実施。
* 調査書には、成績の記載はなく、特別活動と欠席日数のみの記載。

秋田市立御所野学院中学校・高等学校(H12年度開校、併設型)
*秋田市立御所野小学校卒業見込みの者は書類と(入学願書・自己申告書・報告書)および面接。入学者人数の上限なし。
*秋田市立小学校卒業見込みの者は同様に書類と面接の後体験活動を資料とした面接による。募集人員を超えた場合は公開抽選とする。

宮崎県立五ヶ瀬中等教育学校(H11年度開校、中等教育学校)
調査書、適性検査(個別学習およびグループ活動審査)、面接で一次合格者を決定。最終合格者は抽選で決定。
この学校は中等教育学校になる以前H6年に開校しており、現在卒業生が出ている唯一の公立中高一貫校である。H12年度40名中、国公立大学合格者20名を数える実績がある。

都立白鴎高校(H17年度開校予定、併設型)の場合
一般募集
報告書(調査書)点、面接点、思考力や判断力、表現力等をみる適性検査点を総合した成績
応募者が多数の場合は、書類審査実施。ここでいう適性検査は一種のペーパーテスト。

特別枠募集
<区分A・10名程度>
 国語、算数、英語で卓越した能力をもつことを証明する資格等のある児童が対象
<区分B・6名程度>
 囲碁・将棋、邦楽(三味線、箏、囃子)、邦舞・演劇(日本舞踊、歌舞伎、能・狂言)のいずれかの分野に継続して取り組み、上級の資格や卓越した能力のある児童が対象

 今後都市部で開校する公立中高一貫校は都立白鴎高校に準じた入学候補者選抜方法になると思われる。

5.中高一貫校を選ぶなら公立と私立、どっち?


公立中高一貫校について理解したところで、私立の一貫校との比較をしよう。
 公立中高一貫校私立中高一貫校
学費安い高い
施設自治体・学校によりまちまち大多数の学校が充実
カリキュラム学習指導要領の大枠は守るが学力養成にも力を入れる比較的自由に編成
教員一定期間で転任する入れ替わりは少ない
教育方針教育委員会や自治体の意向に縛られる学校のポリシーが確立
進学実績未知数(先行する学校ではUPしている)多くが高い実績を上げている
情操教育期待薄多くの学校で力を入れている
生徒選抜方法の工夫で多様性に富むカラーの近い生徒が集まる
通学区域通学範囲が定められている通学可能ならどこでも


では公立と私立の中高一貫校の特色を知った上で、私たちはどのような選択をしたらよいのだろうか。

○公立が向いているのはこんな生徒
・経済的に余裕がない
 これまで経済的理由で私立中学入学を諦めていた生徒は公立中高一貫校にチャレンジしよう。他にも高校で進学重点指導を行っている学校やスーパーハイスクール(英語と科学それぞれに力を入れている学校がある)という選択肢もある。

・温室育ちはいやだ
様々な家庭の生徒と触れ合うことで、成長していきたい場合は、選抜方法も学力オンリーでない公立がお薦め。

・地元に愛着がある
地元に近い学校で、同様の生徒が多く通う学校を選びたいなら、住居に近い公立中高一貫校がいいだろう。私立では同じ地域の生徒はあまり多くないが、公立では受験生に地域的な偏りが出やすいと思われる。ただし東京都のように都内全域から通学可能となると、地域密着とは行かないだろう。

○私立向きはこんな生徒
・憧れの学校がある
独自の校風を持つ学校に入りたいという希望があるならば、迷わず私立を受験しよう。相性の良い学校に通えれば楽しい学園生活が送れる。

・進学実績重視
公立中高一貫校の進学実績は未知数である。大学進学実績を重視するなら私立の進学校を選ぶべきだ。

・いろいろな体験がしたい
私立は芸術鑑賞や海外語学研修などに力を入れているところが多い。修学旅行に海外へ行きたいのなら、そのような学校を選ぶことができる。また施設や設備が充実し、行事にも工夫があり、学校での体験の幅が広い。

6.中高一貫校の将来


公立中高一貫校は当面全国で500校を目標に開設されるそうだ。全国各都道府県に開校されるようになれば、それぞれの公立中高一貫校にも特色が出てくるだろう。平均すれば各都道府県に10校もできるわけだ。

すると公立VS私立という図式はなくなり、中高一貫校の中からどこを選ぶかという選択肢の一つに公立中高一貫校がなって行くはずだ。実績の残せない学校は応募が減るので工夫をして生徒を集めなくてはならない。

少子化が進むので私立も同様の淘汰の波にさらされる。今まで「大学進学実績」という尺度が唯一と言っても良い評価だったが、大学も全入の時代を迎える。そうなれば一部の難関大学を目指す学校と、それ以外の特色を打ち出す学校というように分かれてくるはずだ。

中学入試は終わりではなく社会へ歩み出す道につながる一歩だという意識を持って、志望校を選択しなければ後悔する時代がやってきたと言えよう。
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