今回は、公益財団法人生命保険文化センターが行ったアンケートをもとに、高齢者が感じる経済的不安について探り、その背景としての医療保障の準備状況をみてみましょう。さらに、70歳以上で増加する医療費の実態に触れ、病気やケガに備えるための具体的な2つの方法についてご紹介します。
高齢者が感じる自分が病気・ケガになった場合の経済的不安とは?
公益財団法人生命保険文化センターが行った「2023年度ライフマネジメントに関する高年齢層の意識調査」において、高齢者自身が病気・ケガになった場合の経済的不安について尋ねています。その結果は、以下のとおりです。●自分の病気・ケガに係る経済的不安
画像より、「不安感がある」と答えた人が59.6%、「不安感がない」と答えた人が39.7%となっています。
男女別では、特に差はみられません。しかし、年齢別でみると「不安感あり」は、65~69歳の年代で高くなっています。一方、「不安ではない」と答えた人は、85~89歳が14.9%。さらに、90歳以上になると24.1%と約10ポイント高くなっています。
●医療保障の準備状況はどうなっているの?
同調査では、高齢者が病気・ケガをした際に払うお金(医療費)を、個人的にどのような形で準備しているかも尋ねています。その結果は、次のとおりです。 高齢者が、医療保障の私的準備している項目の上位を以下に挙げます。(複数回答)
・1位:預貯金「65.3%」
・2位:生命保険「63.9%」
・3位:損害保険「23.3%」
・4位:共済「15.5%」
病気・ケガに対しては、預貯金や生命保険でというのが多くの人の考える備えとなっていることがわかります。しかし、生命保険については、60~69歳では約7~8割が加入していますが、70~79歳では約6割に減り、80歳以上は約3~5割まで低くなります。
医療費は70歳以上が生涯医療費の約半分を占めている
厚生労働省の資料である「令和3年度 生涯医療費(男女計)」によれば、日本人が一生のうちに使う医療費の総額となる「生涯医療費」は、「2800万円」。そのうち、70歳以上が約半分を占めます。つまり70歳以上にかかる医療費は1400万円です。ただし、実際は公的医療保険に加入しているため、自己で負担するのはこのうち1~3割(個々の所得などによる)です。70歳以上でかかる医療費は140万~420万円が目安となります。現役時代から高齢になったときの病気・ケガに備えるには?
これらのことを踏まえ、現役時代から高齢になったときの病気・ケガに備えるために必要なことをまとめます。●備え1:保険料が上がらない「終身型」の医療保険の検討
年齢が高くなるにつれて、生命保険の加入率が低下しています。もし現在加入している生命保険(医療タイプ)が10年ごと、または70歳や80歳などの一定年齢で更新となるタイプの場合、保険料が大幅に上がり、継続が難しくなる可能性があります。
特に、医療費の負担が増える70歳以上からの期間を見据え、40~50代で医療保険を見直す際には、保険料が変わらない「終身型」の保険への加入を検討することが大切です。これにより、老後に安定した医療保障を維持しやすくなります。
●備え2:70歳以上にかかる医療費目安+αの預貯金を準備
調査によると、高齢期にかかる医療費の準備として預貯金が最も多く利用されています。十分な預貯金を確保し、急な医療費に対応できるよう準備することが重要です。
70歳以上でかかる医療費の目安は140万~420万円です。ただしこれは病院の窓口で負担する治療費のみ。健康増進のためにサプリメントを買ったり、ジムに通ったりすることがあるかもしれません。先述した医療費の目安に+αの予備費もあわせて準備しておくようにしましょう。