高齢になれば、身体機能が低下します。安全に暮らすには手すりがあったり、段差がなかったりする住まいが理想と考えますが、それだけでよいのでしょうか。
今回は、高齢者の住まいに関するアンケート結果をもとに、高齢者の住まいの状況と、住宅に対して感じている問題をみてみましょう。
そこから、高齢者が安心して暮らすための対策として何があるのか考えましょう。
高齢者の住居形態の結果は「約8割が一戸建て」
内閣府による「令和5年高齢社会対策総合調査(高齢者の住宅と生活環境に関する調査)」では、65歳以上のシニアに対して「現在の住居形態」を聞きました。 最も割合が高いのは、「持家(一戸建て)」(76.2%)です。次いで、「持家(分譲マンション等の集合住宅)」(8.3%)、「賃貸住宅(民営のアパート、マンション)」(5.9%)と続きます。これより、高齢者の約8割が一戸建てに暮らしていることがわかります。次は、同調査での「現在の住まいに感じる問題点」についての結果をみてみましょう。
●高齢者が現在の住居で問題に感じることは? 何も問題を感じていないとする回答が3割近くありますが、それを除き高齢者の方が問題と感じている項目の上位5つを以下に挙げます(複数回答)。
・1位:住まいが古くなり、いたんでいる「29.5%」
・2位:地震・風水害・火災などの防災面や防犯面で不安がある「24.4%」
・3位:断熱性や省エネ機能不十分「16.9%」
・4位:家賃、税金、住居維持費など住宅に関する経済的負担が重い「15.5%」
・5位:段差や階段等があり使いにくい「12.7%」
建物の老朽化による傷みが気になる方、地震、台風などの災害に対する不安を感じる方、暑さ・寒さに対する装備不足、住宅維持に関する経費の負担が重く感じるなど、さまざまな面で問題を感じていることがわかります。
一般的に考える高齢者の住まいの問題として挙げられる「段差や階段等があり使いにくい」「台所、便所、浴室の設備が使いにくい」などへの回答もありますが、それよりも住まいの老朽化や経済的な負担に関する回答率が上回っている点は注目に値するかもしれません。
高齢者が安心して暮らすための対策
高齢者が安心して暮らすためには、以下の3つの対策を検討しましょう。●対策1:住居の改修・リフォーム
築年数がある程度経っている戸建てにお住まいの方は、住宅をリフォームすることが必要です。リフォームには、身体機能が低下した際に快適に暮らせるバリアフリー化だけでなく、耐震補強、屋根や雨どい、サッシまわりの風水害対策、暑さ・寒さを防ぐ断熱性能の向上などがあります。
これらの住宅リフォームに取り組むためには、若いうちから計画的に準備しておく必要があるでしょう。また、リフォームを行う際には、事前に国による住宅リフォーム支援制度を調べ活用することも大事です。そうすることで、経済的な負担を少しでも軽減することができるでしょう。
●対策2:防災・防犯対策の強化
最近は、震度4~5といった比較的大きな地震が発生していたり、台風による風水害が発生したりしています。対策1をしても防災、防犯の対策が不安であれば改修・リフォーム以外でできる対策も加えましょう。
具体的には、地震保険への加入、防災グッズの備蓄、ホームセキュリティーシステムの導入などがあります。また、近隣との連携しておけば、いざ避難というときも落ち着いて行動できるでしょう。
人生100年時代といわれ、現在の住まいに長く住むことになれば、住まいを安全で快適な場所にすることが必要です。その際、住居のリフォーム、適切な防災・防犯対策を行いましょう。これらの対策により、高齢者が抱える不安や問題に対応することができるでしょう。
●対策3:住宅に関する費用を明確化
高齢者にとって、安心して住める住処は重要です。そのため、老後も働いて収入を得ることや、自治体や国が提供する補助金や助成制度を積極的に利用することが有効です。
また、現役時代から将来の生活に備えて、住宅関連の支出を見越した計画的な貯金も重要です。具体的には、家賃や固定資産税、修繕費など、老後にかかる費用を事前にシミュレーションし、毎月の収入から一定額を積み立てておくと良いでしょう。特に年金だけでは十分でない場合も多いため、リタイア後の家計を安定させるための貯蓄目標を早めに設定し、資産を確保することが安心な老後生活に繋がります。