まず映画の脚本についてお話を聞きました。
『愛に乱暴』主演、江口のりこさんにインタビュー
――公式のインタビューで「吉田修一さんの原作小説が面白かった」と語っていますが、脚本は原作の内容をかなり削ぎ落として桃子にフォーカスしていますよね。最初に脚本を読んだとき、どう思いましたか?江口のりこさん(以下、江口):そうですね。原作にあった描写がかなり削られて、脚本はかなりシンプルになっておりまして……「シンブル過ぎない?」と思うほどだったんです。なので桃子を演じるにあたって、私は原作の面白さをシンプルな脚本の中で見つけて、演じられるだろうかと思いました。
――江口さんの中で、原作を読んで作っていた桃子像は、脚本を読んだあと変わりましたか?
江口:変わることはなかったのですが、演じるキャラクターというのは他者との関わりで見えてくる部分が大きいんです。例えば学生時代の友人とのやりとりなどから見えてくる桃子の姿があります。
でもこの映画の脚本は、そういう他者との関係よりも“桃子の悶々とした思い”という抽象的なものがドンと中心に置かれていたので、芝居をするにも相手がいない状態で演じなければならず、これは難しいと思いました。
結婚生活に不満があっても逃げることはできない
――桃子は夫の真守に無関心な態度を取られたり、姑とも微妙な関係だったり、頑張っても居場所がない様子はとてもつらいだろうと感じたのですが、江口さんは桃子をどのような人物だと考えましたか?江口:毎日、手の込んだ料理を作ったり、シャツにアイロンをしっかりかけたり、丁寧な毎日を送ることで自分を保っていると感じていました。
私は自分の暮らしに不満があっても、その不満も含めて日常だと思うんです。日常だから「もうやめた!」と簡単にはいかない、逃れられない。それが桃子の心境に近いのかもしれません。日常はすさまじい力を持っていると思いました。 ――桃子に冷たい真守を演じた小泉孝太郎さんとのお芝居はいかがでしたか? 桃子と真守の間には距離がありますが、撮影現場での江口さんと小泉さんはどうだったのでしょうか?
江口:小泉さんとは撮影合間によく話していました。小泉さんは無邪気な方なんです。ゴルフが好きで好きで仕方がなく、どんどん日焼けしていくんです。これ以上日焼けしたら画がつながらなくなってしまう……と言ってもやっぱりゴルフへ行っちゃう。そういう方でした(笑)。
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