酷暑の夏、熱中症対策に日傘は欠かせない
日傘は、少し前までは主に女性が、ちょっとした外出時やスポーツ観戦などの時に、日焼け対策も兼ねて使用することが多かったと思います。しかし最近では、通勤・通学時に、学生さんや男性も日傘をさしている姿をよく見かけます。今回は、日傘の熱中症予防・対策の効果について、わかりやすく解説します。
日傘の熱中症予防効果……大きな違いが出る頭髪の温度とWBGTの数値
日傘を使った場合、まず大きく変えることができるのは、頭部に当たる直射日光の量です。真夏の昼下がりを想定した実験で、頭髪の温度を計測すると、55度前後まで上昇がみられました。これに対して、日傘を使えば40度前後まで下がるという試算があります(※1)。この他にも日傘の傘下20cmの地点を、WBGT(暑さ指数)計を用いて測定した結果、日傘なしの場合に比べて、日傘がある方が2度近くWBGTの数値を抑えられたという研究報告もあります(※2)。
頭部の温度上昇を抑えるために、帽子を使っている人も多いと思いますが、頭に大量の汗をかくと蒸れやすくなるというデメリットもあります。日傘のほうが風を通しやすく、厳しい暑さの日には、より快適に過ごせる効果が期待できます。日射しが強い日中は、なるべく日陰を選んで歩く人が多いと思いますが、特に日陰の少ない場所において、日傘は熱中症予防に大いに役立つといえるでしょう。
水分・塩分補給は必須! あわせて日傘の活用が有効
暑さの厳しい日に、どうしても屋外で活動しなくてはならないときは、こまめな水分・塩分補給を心がけ、上手に汗をかいて体を冷やすことが大切です。汗は血液に含まれる水分からつくられるため、水分不足などで体内を循環する血液量が減ってしまうと、うまく汗をかくことができず、体の中に熱がこもって熱中症のような症状を呈することがあります。
環境省が行った日傘の効果検証実験によると、日傘を使って強い日射しから体を保護すると、汗の量を約17%減らせることがわかりました(※3、4)。日傘を活用しつつ、尿の色(レモン色)が濃くならないよう(茶褐色など)にこまめに水分・塩分補給を行うことが熱中症予防には大切です。
熱中症対策に有効な日傘の選び方
熱中症対策として日傘を選ぶときは 「遮光・遮熱」の表示があるものを選びましょう。「UVカット」加工のものは太陽光の中でも紫外線のカット率を表記したものです。日焼け対策としての機能は十分ですが、熱中症対策としては「遮光」表示のものを選ぶことが大切です。
日傘の色は、外側が白、もしくはシルバー系のもの、内側は黒のものが適しています。以前は黒い日傘が多く見られましたが、黒は日光の熱を集めやすくなってしまうため、傘全体が熱くなってしまうというデメリットがあります。
最近の日傘は、外側には太陽光を反射・拡散させやすい白、シルバー系の色を用い、日傘の内側については道路などの照り返し(輻射熱)を反射しない黒、紺などの暗めの色が用いられています。
これから日傘を選びたいと考えている方は、こうした色使いにもぜひ着目してください。遮光・遮熱日傘の多くは「晴雨兼用」のものが多いです。夏は特に天気の急変による雷雨などに見舞われることも多いので、お気に入りの日傘を一本カバンに常備しておくと良さそうですね。
■参考
※1 熱中症対策におすすめの日傘の効果とは(ウェザーニュース)
※2「日傘の紫外線遮蔽およびWBGT抑制効果」(謝雅竹、平田耕造:日本生気象学会雑誌. 2012;49(3):S49)
※3 環境省が行った日傘の効果検証実験
※4 「夏の熱ストレスに気をつけて!」(環境省)