定年・退職のお金

【労働局に聞いた!】高年齢者雇用安定法ってどんな法律で、企業の取り組みの実態はどのくらいなの?

高齢化が進んで労働人口が減少しているという社会背景を受け、高年齢者雇用安定法により、働く意欲のある高齢者が、能力を発揮して活躍できるよう環境整備されています。今回は、富山労働局職業安定部職業対策課の南部高齢者対策担当官に高年齢者雇用安定法と企業の取り組みの実態について詳しいお話をお伺いしました。

舟本 美子

執筆者:舟本 美子

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最近は、60歳で定年しても引き続き働く方が増えています。というのは、高齢化が進んで労働人口が減少しているという社会背景を受け、高年齢者雇用安定法により、働く意欲のある高齢者が、能力を発揮して活躍できるよう環境整備されているためです。

今回は、富山労働局職業安定部職業対策課の南部高齢者対策担当官に高年齢者雇用安定法と企業の取り組みの実態について詳しいお話をお伺いしました。
富山労働局職業安定部職業対策課 南部高齢者対策担当官

富山労働局職業安定部職業対策課 南部高齢者対策担当官

高年齢者雇用安定法とはどんな法律なの?

――2020(令和2)年3月31日に改正された高年齢者雇用安定法が2021(令和3)年4月1日に施行されました。改正前は、どのような内容だったのでしょうか。

南部高齢者対策担当官:高年齢者雇用安定法とは、少子高齢化が進み労働力人口が減少している中、働く意欲のある高齢者が、年齢に関わらず、意欲と能力に応じた雇用・就業機会を確保するための法律です。

2021(令和3)年4月1日に施行されるまでは「65歳までの雇用確保措置」が企業に義務付けられていました。

企業には、定年年齢が65歳未満の場合「65歳までの定年引き上げ」「定年制の廃止」「65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入」のうち、いずれかの措置を講じることが義務化されていました。つまり、企業側は、定年を60歳に定めても社員が65歳になるまでは雇用契約を結び、引き続き会社で働くことができるよう求められていました。

――改正後はどのような点が変わったのでしょうか。

南部高齢者対策担当官:改正前の「65歳までの雇用確保措置」の義務に加えて、「70歳までの就業確保措置」が努力義務として追加されました。

努力義務の中身を具体的に挙げると、以下の5つがあり、このうちいずれかの措置を講じることが定められています。

①70歳までの定年引き上げ

②定年制の廃止

③70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入

④70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入

⑤70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度の導入
a. 事業主が自ら実施する社会貢献事業
b. 事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業

つまり、定年が70歳までに引き上がるのが望ましいですが、現状はそううまくは進みません。65~70歳は雇用契約で働くのが難しければ「業務委託」「社会貢献事業」などでもよいので、なるべく長く働ける環境づくりを後押ししています。

参照:高年齢者雇用安定法 改正の概要001245647.pdf
 

高年齢者の雇用状況はどのくらい活発に行われているの?

――実際の企業の取り組みはどのくらい進んでいるのでしょうか。

南部高齢者対策担当官:厚生労働省が行った「令和5年 高年齢者雇用状況等報告」によれば、高年齢者雇用確保措置を実施済みの企業は、報告のあった企業全体の99.9%。従業員が21人から300人までの中小企業でも99.9%、従業員301人以上の大企業においても99.9%でした。中でも割合の多いのが「継続雇用制度の導入」です。全企業の約7割を占めています。
出所:厚生労働省「令和5年 高年齢者雇用状況等報告」

出所:厚生労働省「令和5年 高年齢者雇用状況等報告」

一方、70歳までの高年齢者就業確保措置の実施状況については、調査を報告した企業のうち実施済みの企業は、29.7%でした。そのうち、従業員が21人から300人までの中小企業では30.3%、従業員301人以上の大企業では22.8%でした。
出所:厚生労働省「令和5年 高年齢者雇用状況等報告」

出所:厚生労働省「令和5年 高年齢者雇用状況等報告」

最近は、一昔前と違って70代の方々は体力も気力もあります。そんな中、長く働きたい方、お孫さんのお世話の合間に少しだけ働きたい方など就業ニーズはさまざまあります。ハローワークでは、働きたいという意欲のある方の気持ちを後押しできるよう、企業に対して高齢者雇用の推進を引き続き行っていきたいと思います。

取材をおえてのまとめ

老後資金は、年金だけでは不足することもあります。年金とプラスアルファの収入を得るためにも、高年齢者雇用安定法をしっかり理解したうえで、定年後(老後)の働き方を検討しましょう。
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