Q. 紫外線吸収剤入りの日焼け止めは危険ですか? 体に悪いのではと心配です
日焼け止めは「ノンケミカル」のものを選ぶべき?
Q. 「紫外線吸収剤が入った日焼け止めは、危険なのでしょうか? 皮膚のかぶれや、ホルモンバランスの乱れが起きると聞いたことがあります。成分については気にせずに、いつもたっぷりと日焼け止めを塗るようにしていたので、体に悪いものを塗り続けてしまったのではなかと心配です。今からでもノンケミカルの日焼け止めにすれば、大丈夫でしょうか?」
A. 有害というデータはないので、神経質に心配する必要はありません
まず、日焼け止めのしくみと成分について、簡単にご説明したいと思います。紫外線をブロックするために日焼け止めに含まれている有効成分は、大きく2つの種類に分けられます。「紫外線吸収剤」と「紫外線散乱剤」です。ご心配されている「紫外線吸収剤」は、化学合成された物質が使われています。合成された成分が紫外線を吸収することで、皮膚が日焼けするのを防いでくれます。UVAとUVBの両方を効果的にブロックすることができます。もう一方の「紫外線散乱剤」は、体に吸収されにくい成分が使われており、「酸化チタン」と「酸化亜鉛」の2つが代表的です。かぶれを起こしにくいと言われていますが、製品によって含まれる成分は異なります。
ほとんどの日焼け止めは、吸収剤と散乱剤の両方を含んでおり、散乱剤のみの日焼け止めには「ノンケミカル」と書かれていることが多いです。
「ノンケミカル」の製品があると、そうではない製品は化学物質が入っていて何となく危険そうだと感じてしまうかもしれません。しかし実は、「紫外線吸収剤が皮膚に害を与える」という決定的な証拠はありません。吸収剤は散乱剤よりもかぶれやすいとされているものの、実際にかぶれが起こる可能性は低いです。筆者は10年以上、皮膚科で日々の診療にあたっていますが、日焼け止めが原因でかぶれたという患者さんを診療したことはありません。
また、「紫外線吸収剤は皮膚から吸収され、ホルモンバランスを乱す」といった説があるようですが、これに関しても現時点でエビデンスとなるデータはありませんので、心配する必要はないでしょう。
湿疹ができやすい体質の方やお子さんには、私も、少しでも皮膚への負担を減らせるように、散乱剤のみを含んだ「ノンケミカル」の日焼け止めをすすめることがありますが、気に入った製品があり、特にそれで問題を感じていないならば、神経質に紫外線吸収剤を避ける必要はないと考えています。また、吸収剤と散乱剤を組み合わせた製品の方が、日焼け止めとしての効果は高く、紫外線からしっかりと皮膚を守ることができるというメリットもあります。
実際の効果と、わかっている安全性を正しく理解して、皮膚を紫外線から守っていきましょう。
さらに詳しく知りたい方は、「超基本から新情報まで!皮膚科医が教える日焼け対策法」をあわせてご覧ください。