医療情報・ニュース

Q. 「ゴキブリはいろんな病気を運んでくる」って本当ですか?

【大学教授が解説】ゴキブリは多くの人に毛嫌いされていますが、本当に深刻なのは見た目の不快さではありません。ゴキブリは不衛生な場所から、細菌やウイルスを私たちの生活空間に運んできます。衛生害虫としての有害な側面について、わかりやすく解説します。

阿部 和穂

執筆者:阿部 和穂

脳科学・医薬ガイド

Q. 「ゴキブリはいろんな病気を運んでくる」って本当ですか?

ゴキブリに驚く男性のイメージ

突如現れる、黒いアノ虫……見た目の気持ち悪さ以上に深刻な、駆除すべき理由とは?


Q. 「ゴキブリは、見た目や動きの気持ち悪さで嫌われていると思っていましたが、『感染症を運んでくるのが問題なんだ』と聞きました。蚊やヘビのように人を刺したり噛んだりすることもなさそうですが、ゴキブリがいるだけで病気になることはあるのでしょうか?」
 

A. ゴキブリは「衛生害虫」です。様々な菌・ウイルスを運んできます

ゴキブリは「害虫」と言われますが、一言で「害」といってもいろいろな側面があります。一般的には、見た目から気持ち悪さを感じさせる、「不快害虫」の印象が強いでしょう。

筆者の家でも、家族みんなが毛嫌いしているため、出現したときの退治役は筆者と決まっています。見た目だけであまりに厄介者扱いされているので、少しかわいそうに思うこともありますが、そうも言ってはいられません。見た目の問題だけではない、有害な側面があるからです。

まず、意外かもしれませんが「経済的な害」もあります。ゴキブリは雑食性で、台所や倉庫に保管してある食材を食い荒らすことがありますし、石鹸や紙類を食べることもあります。フンによって、いろいろなものが汚されることもあります。それらは廃棄することになるでしょう。また、どんなに狭い隙間でも入り込み、特に冬場などは通電して熱を発する家電製品の周辺に集まるため、電気系統の故障や漏電、火事の原因にもなるリスクもあります。

そして何よりもゴキブリが有害である深刻な理由が、「衛生害虫」であるということです。ゴキブリ自体は、ヘビやハチのように毒を持っているわけではありませんし、噛みついたり刺したりして人間を傷つけることもめったにありません。

しかし、ゴキブリは、下水、排水口、トイレなどの不衛生な場所を含む屋外から家の中に侵入してきます。様々な細菌やウイルスを体に付けた状態で、生活空間に入り込んでくるのです。

ゴキブリから検出される危険な細菌には、サルモネラ菌、チフス菌、赤痢菌、大腸菌など、食中毒を引き起こす危険なものも少なくありません。ゴキブリに直接触れなくても、食材にこれらの細菌が付着し、間接的に感染することもあります。まれなケースですが、ゴキブリに噛まれた傷口から細菌やウイルスが入り込んだ例もあります。

ゴキブリ自身は、体表が油膜で覆われているため、有害な細菌やウイルスがついていても影響を受けることなく、生き延びて繁殖し続けます。一方で、私たちの生活環境を不衛生にし、人々を感染症の危険にさらします。そのためゴキブリは、ハエと同じ「細菌付着性昆虫」に分類されています。

私たちにできる対策は、とにかく家の中をこまめに掃除するなどして、ゴキブリが繁殖しにくい状態を保つことに尽きます。どうしても自分自身で対応できないほど被害が深刻な場合には、害虫駆除の専門業者や保健所に相談してもよいでしょう。生活空間からゴキブリを駆除することは、私たちの健康を守るためにも大切なことなのです。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※当サイトにおける医師・医療従事者等による情報の提供は、診断・治療行為ではありません。診断・治療を必要とする方は、適切な医療機関での受診をおすすめいたします。記事内容は執筆者個人の見解によるものであり、全ての方への有効性を保証するものではありません。当サイトで提供する情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、各ガイド、その他当社と契約した情報提供者は一切の責任を負いかねます。
免責事項

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます