マネジメント

「プールの水出しっぱなし」は先生が弁償するべき? ヒューマンエラーによる賠償責任のあり方を考える(2ページ目)

学校のプールの水を止め忘れて損害を発生させたとして、教諭らが賠償を申し出るケース。個人的に弁償させるのが妥当か否か、毎度議論になってもいます。公共と民間の立場の違いも踏まえつつ、この手の問題のあるべき対処について考えます。

大関 暁夫

執筆者:大関 暁夫

組織マネジメントガイド

原則的には組織が賠償責任を負う

まず民間企業の場合には、業務遂行上で発生した事故損失については、それが「意図的であった」と判断されない限りにおいては原則、当事者本人や部門管理者が損害に関して個人的な穴埋め負担を求められることはないでしょう。基本は組織会計における損金処理という形で、組織がその負担を負うという形になります。
 
なお、“原則”と申し上げたのは、中小企業などのオーナー系企業で経営者=大株主であるケースでは、経営者の意向によって「事故損失は当事者個人に負わせるべき」という判断が下されることがあるからです。

この場合、業務上の単純過失による損害を社員個人が負担させられることには納得がいかない、と思うかもしれません。しかしオーナー企業のトップにおいて、経営者としてではなく企業の所有者である株主の立場から、損失は当事者が補填(ほてん)すべしと判断したとなれば、それには抗弁しにくいということになるのです。
 
民間企業においては、仮に事故の損害補填が当事者や管理者に求められなかったとしても、その過失の度合いに応じてなんらかの罰則は課されるのが一般的です。もっともオーソドックスなやり方としては賞与の評価に組み入れて、賞与金額の減額などで反省を促すというものです。

上場企業などにおいて大きな過失事故が起きた場合など、経営者や担当役員の賞与カットや返上という対応が発表されることがありますが、まさしくこのような考え方に基づいた対応であるといえます。
 
賞与評価の対応が“一般的”と申し上げたのは、その事故が特定の期間、損益に影響を与えた一過性の過失事故であり、そのマイナス査定自体も一過性のものとして扱われるべきとの考え方に立つからです。

ただし、仮に過失そのものが軽度のもので損失もわずかなものであったとしても、犯した当事者が同じ類の過失をこれまでにも犯している場合には、別途人事考課のマイナス査定材料となって降格、減給等の対応もあり得るでしょう。

>次ページ:ヒューマンエラーによる賠償のあり方とは
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