“計画人”大谷翔平選手の言動から読み解くメッセージ
大谷選手の計画性の高さに関しては、2010年高校1年生のときに彼自身が作ったという、「3年後にプロ野球8球団からドラフト1位指名を受けるために何をするべきか」をまとめた8×8のロジックツリーがその原点です。先生か親か、誰かの指導のもとにこれが作られたのか、あるいは独学でロジカルシンキングのフレームワークを勉強して作ったものなのか、そこは定かではありませんが、このロジックツリーこそが彼を現在の成功に導いたすべての出発点であるように思うのです。
このロジックツリーは、高校卒業時にプロ8球団からドラフト1位指名を受けるような選手になるために、「体づくり」「コントロール」「キレ」「スピード160km」「変化球」「運」「人間性」「メンタル」をしっかり充実させる必要があるとし、それぞれの項目にさらに8つずつの具体的対応策を落とし込んだものなのです。
そしてこのロジックツリーの記載事項に励み続けることで、3年後、現実に大半のプロ球団がドラフト1位で欲しいと思う選手になったのです(実際には、ドラフト前に大谷選手がメジャーリーグへの挑戦を公言したため、指名したのは北海道日本ハムファイターズ1球団のみ)。
日本ハム球団での大谷選手は、米メジャーリーガ-になるための次なる中期計画を、球団の指導のもとでスタートさせます。その実現に向けて新たに指導者となった栗山英樹元日本ハム監督との2人3脚で、周囲には反対の声も多かった「チームを勝たせるための二刀流を完成させる」との新たな大目標を立てて突き進んだのです。
そして、プロ入り4年目に見事にチームの日本一を実現し、自身はMVPを獲得するという、国内での二刀流開花に至るのです。こうして5年間という、恐らく当初の計画通りの国内プロ野球での準備期間を経て、2018年に満を持してポスティング制度を使って米国に渡ったのでした。
日本での活躍ぶりから前評判の高かった彼は、ポスティングの段階で強豪を含む多くの球団からのオファーがありながら、むしろ弱小チームであるエンゼルスを選んだのも、ある程度わがままが通るチームでメジャーでの二刀流完成計画遂行を優先したからに他なりません。
渡米6年後のFA権取得を視野に、憧れのドジャースへの移籍を実現させることは、「6年後のFAでドジャースに移籍」と最初の渡米の段階から彼のロジックツリーには盛り込まれていた計画だったのではないか、とすら思えてくるのです。
プロのアスリートにとって日々の生活の安定はフィジカル、メンタルの両面から、非常に重要な位置を占めている問題でもあり、彼ほど計画的思考で物事を進める人間が、結婚を思いつきや一時の気持ちの高揚で突っ走ったとは到底思えません。
当初渡米時の6年後のFA権行使に向けたロジックツリーに、結婚はどのような位置づけで見える化され計画の中に落とし込まれていたのか、大変気になるところではあります。
結婚発表翌日の囲みインタビューで、子どもについての希望を問われた彼はこう答えています。
「自分以外のことを言うとかなわないような気がするので、あまり言いたくないです」
この発言は裏を返せば、自分のことは明言して行動を続ければ必ずかなってきた、という意味ではないかと思うのです。すなわち、どんな目標も見える化してそれを計画的に進めることが自己実現への近道である、と世界の頂点に上り詰めた“計画人”大谷翔平が、図らずも結婚を機に、我々凡人に宛て力強くメッセージしてくれたと感じた次第です。