住宅購入のお金

【正直不動産2 第9話のあらすじをFPが考察】サブリース契約は危ない?

ブラックなイメージが拭えない不動産業界。ドラマ「正直不動産」で描かれるような悪徳営業は本当にあるの?――。3月5日の第9話の放送内容を踏まえ、不動産投資をする際に住宅業界のここだけは気をつけたいポイントを確認していきましょう。

執筆者:All About 編集部

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契約トラブル

サブリース契約の不動産投資は危ない?

ブラックなイメージが拭えない不動産業界。ドラマ「正直不動産」で描かれるような悪徳営業は本当にあるの?――。

山下智久さんが演じる、嘘のつけない不動産営業マン・永瀬財地が活躍する不動産業界のお仕事コメディーシリーズ第2弾「正直不動産2」(NHK総合)。

3月5日の第9話の放送内容を踏まえ、不動産投資をする際に住宅業界のここだけは気をつけたいポイントを確認していきましょう。

第9話の放送内容のおさらい、ネタバレ

営業成績ナンバーワンに異常なまでに執着するミネルヴァ不動産の神木(ディーン・フジオカ)。ミネルヴァ不動産として採算が合わなくなったサブリース契約を結んでいるオーナー達へ家賃の減額を申し入れ、これに応じず解約しようとするオーナー達から不当な違約金を巻き上げようと違法スレスレのやり方で利益を得ようとする。

その頃、登坂不動産の永瀬と月下(福原遥)は社長の登坂(草刈正雄)から、神木がナンバーワンにこだわるきっかけとなった過去の出来事について聞かされる。

かつて登坂不動産の社員だった神木は、口下手で営業に全く向いていなかったものの、幼稚園に通う息子と妻と共に幸せな日々を送っていた。ある日、息子が幼稚園の徒競走の練習でビリになって落ち込んでいるのを見て、神木は息子を励ますためにある約束を交わす。その約束とは、息子が運動会の徒競走で1等賞を目指し、神木も登坂不動産で営業成績ナンバーワンを取るというものだった。

だがその翌日、息子と妻は交通事故に巻き込まれ死亡してしまう。それでも神木は亡き息子との約束を果たすため、その月に営業成績ナンバーワンを達成し、以後9年間、後輩の永瀬に抜かれるまでナンバーワンの座を守り続けたのだった。

一方、永瀬はミネルヴァ不動産とサブリース契約を結んでいるオーナー達からの相談を受け、ミネルヴァ不動産に対して集団訴訟を起こすことを提案するのだが……。

サブリース契約のメリット

ドラマの本筋としては以上のような流れだったのですが、今回は、ドラマの中で登場したサブリース契約に注目したいと思います。サブリース契約のメリットやデメリットなどを踏まえ、注意点を確認していきましょう。

サブリース契約とは、不動産オーナーが所有する物件をサブリース会社(不動産屋さん)が借り受け、サブリース会社が入居者に転貸(又貸し)する仕組みの賃貸経営方法のことをいいます。

サブリース契約では、多くの場合、満室保証などの家賃保証が約束されているため、不動産オーナーは賃貸経営の手間をかけず、安定した収入が得られます。

つまり、空室時にも一定の賃料保証のあるプランを契約条件とすることで、入居者の有無にかかわらず安定した収入を確保できるというメリットがあるのです。

また、一切の賃貸管理に関する業務を不動産屋さんに任せることもできます。自分で賃貸管理業務をする場合には、家賃の集金やら設備故障の対応、契約更新の手続きといったさまざまな業務を自分で行わなければなりませんが、このような煩わしい業務を任せられるため、手間と時間を省けるといったメリットもあるのです。

サブリース契約のデメリット

一方、サブリース契約にはデメリットもあります。まず、手数料の相場は賃料の10~20%になっています。一般的な管理委託契約の手数料は賃料の5~10%ほどとなっているため、サブリース契約の手数料のほうが割高というデメリットがあります。

また、家賃保証について、免責期間が設定されている場合もあります。この免責期間とは、例えば、サブリース契約を締結した後、最初の入居者を募集し決定するまでの期間や、入居者が退去した後の数カ月間などを指します。この期間中は、サブリース会社が空室時の賃料を支払わなくてよいとしているケースがあるため注意しなければなりません。

さらに、家賃を保証してくれるといっても、そもそもサブリース会社が倒産してしまえば元も子もないでしょう。

そしてなにより、ドラマの中でも再三強調されていたように、サブリース契約にも借地借家法が適用され、借主つまりサブリース会社の権利が強く保護されます。本来は弱者救済のための法律であるにもかかわらず、サブリース契約の場合には、一般的には弱い立場であると考えられる不動産オーナーではなく、強い立場にあるサブリース会社を守ってしまう結果となり、予期せぬトラブルを引き起こすことがあります。

具体的には、サブリース会社が不動産オーナーに賃料の減額を求めたり、一方的に解約を通告したりすることがあります。また、不動産オーナー側が契約を解約しようとした場合、高額な違約金の支払いを求められる可能性もあるのです。

このような背景のもと、「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(令和2年6月公布)」(サブリース新法)のうち、サブリース業者とオーナーとの間の賃貸借契約の適正化に関する措置(令和2年12月15日施行)について、具体的な規制の対象を事例等で明示した「サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン」が国土交通省によって策定されました。

このガイドラインのポイントは、契約の締結前に、オーナーに対し、契約条件にかかわらず借地借家法に基づき家賃が減額され得ること等を書面に記載して説明しなければならないことを明確化したことにあります。

住宅業界ここは気をつけたい! サブリース新法は万能薬ではない

確かに、サブリース新法によって、サブリース会社の広告や勧誘の場面では、デメリットは隠してメリットのみを強調するような悪質な営業行為は減少することでしょう。また、不動産オーナーがサブリース契約のリスクを把握する機会自体が増えたことは、喜ばしいことといえるかもしれません。

しかし、サブリース賃料の減額が禁止されたり減額幅が制限されたりするわけでもなければ、サブリース会社側からの解約を禁止されたわけでもありません。不動産オーナーは、サブリース賃料の減額や契約書に記載された解約条件がどのようなものかなどという解約リスクを想定しながら、不動産投資家として収支計画を練っていかなければならないでしょう。

そして、賃料保証、一括管理といった、特に、不動産投資初心者が飛びつきやすいサブリース契約においても、不動産投資家としての視点と資質を持たなければならないことは、サブリース新法が施行される前からなんら変わることはないのです。

参考資料:国土交通省「『サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン』のポイント」
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001368271.pdf

文:みちば まなぶ(ファイナンシャルプランナー)
大学卒業後、大手ハウスメーカーや不動産業者などを経て、住宅ローンを切り口に、住宅購入をはじめとしたライフプランニングを提案する1級FP技能士。

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