大学生の就職活動

なぜ?「自信のない“有名大”学生」「自信たっぷりな“無名大”学生」の不思議。新卒で採用するなら…

就活の場面において一般的には知名度のある有名大卒の学生の方が自信があるように見え、知名度の低い無名大卒の学生はどこか自信がないように見えるかもしれない。今回は学生の「学歴」と「自信」の関係性と就活での影響を解説する。

小寺 良二

執筆者:小寺 良二

ライフキャリアガイド

就活

「就活」と「学歴」「自信」の相関


就活では良くも悪くも「出身大学」が自分の能力や印象を決めてしまう情報の1つとなる。当然「有名大学」出身であることがプラスに働くこともあるし、「無名大学」出身という点がコンプレックスであるという学生も多い。

実際に多くの就活生と接してきて、学生の「学歴」と「自信」には一種の相関関係があると言っても良いだろう。有名大の学生はどこか堂々としているし、無名大の学生は自信なさげに見えることはよくある。それは大学受験という1つの競争を勝ち抜いた人材とそうでない人材の差と言えば当然なのかもしれない。

高偏差値の有名大に入れたという事実は、「学力」という能力や「地道な努力ができる」という行動特性を表す要素にはなりえるし、それによって学生自身が高い「自己肯定感」を持つことは何も悪いことではない。それらの要素は社会に出て働く上でも大切であり、それを企業が評価するという点も理に適っている。

しかし中には「有名大出身にもかかわらず自信がない学生」や「無名大出身なのに自信たっぷりな学生」が一定数存在する

なぜその学生たちは学歴があるのに自信がないのか? 逆に学歴はないのに自信はあるのか? そして企業はそれぞれの学生たちをどのように評価していけば良いのだろうか?
 

一見地味だが安定した実力を持っている「自信のない有名大卒人材」

東京の企業説明会や就活生向けのセミナーの質疑応答などで全体の前で手を挙げて発言する場面があるが、それらの学生はMARCH以上の学生であることが多い。学生数が多いという側面もあるが、どこか場慣れしていて、そういった場面でも失敗を恐れずに行動できる側面がある。

一方で、早慶上智などの偏差値上位校にもかかわらず、そういった場面でも一切手を挙げることもなく、どこか自信なさげに見える学生もいる。なぜ高学歴にもかかわらず高い自己肯定感を持てずにいるのだろうか?

さまざまなケースがあるが1つはその大学に「第二志望」で入学しているパターンである。元々目指していた大学はもう1つ上のランクで、残念ながらそこには届かずに1つ下の今の大学に入ったという学生は高偏差値の大学にも必ずいる。そういった学生は、その大学に第一志望で入ってきた学生と同じ、世の中に誇れる有名大学の学生という事実は変わらないのにもかかわらず、自己肯定感が見合っていない場合が多い。

もう1つは地方の高校から都会の有名大に入ってきた学生で、「田舎コンプレックス」があるのか、都会の高校出身者と比べると少し大人しい印象を受ける。

このような学生は、一見地味な印象で、就活の場面でも目立つような行動をすることは少ないが、地道な受験勉強を経験してきただけあって、その実力が垣間見える場面はよくある。

授業やセミナーなどでは自ら手を挙げて発言することは少ないが、当てられたり自身に発言する場面が回ってきたりすると、しっかりと中身のある内容を論理的に話すことができ、課題を与えられたときの取り組み姿勢やアウトプットの質が高い。もちろんそういった機会を自ら掴む積極性は欲しいところだが、もし自分の部下だったら確実に安定した良い仕事をしてくれそうな可能性を感じさせる。

就活でイケイケな自信満々の高学歴学生たちの前では一歩引いてしまう側面もあるが、元々持っている実力は確かなもの。それを見逃さずに評価をしてくれる企業も多いため、自分が入れるとも思っていなかった有名企業から内定が出ることもある。就活を通じて自分自身が持っている能力をしっかりと評価されることで自己肯定できるようになる学生もいる。
 

多様な経験を通じて磨かれた力を持つ「自信たっぷりな無名大卒人材」

逆に大学の偏差値や知名度はそこまで高くないにもかかわらず、堂々としていて自信たっぷりな学生たちもいる。その学生たちに共通しているのは「勉強以外の多様な経験を密度濃くしている」という点である。

例えば高校時代に部活などを通じて競技スポーツを徹底的にやってきた学生は、大学生の時点で既にある程度「社会人的な仕上がり感」がある。挨拶もしっかりとでき、上下関係の振る舞いも理解している。主将経験者の多くはリーダーシップがあり、大学の授業でもグループワークやプロジェクトを任せると他の学生たちをうまくまとめて推進してくれる教員にとっては大変有り難い存在である。

またスポーツ以外でもアルバイトなどで濃密な経験をしている学生たちも“仕上がり感”を見せる。以前、某大手ハンバーガーチェーンで大学生ながらマネージャーの立場を経験した学生数名にインタビューする機会があった。その学生たちは、本部から与えられたミッションに対していかに店舗のメンバーの目的意識やモチベーションを維持し、人材を育てながら、目標を達成していくのかという点において、経験に基づいた持論を展開していた。ここでインタビューした多くの学生は無名大出身者であった。学費や生活費を自分で稼いでいる学生もいて、明らかに一般的な大学生よりも自立していた。

大学受験でそこまで偏差値の高い大学を目指さなかった学生は、良くも悪くもブランド志向が弱い。そのため就活において大手企業や有名企業を受けようとしない場合が多い(自信のある有名大卒生はプライドがあるのでブランド志向になりやすい)が、自身の経験や能力の価値に気付き、将来の選択肢を広げてほしい。
 

社会での仕事を通じて「本当の自信と能力」を培ってほしい

どちらの人材もそれぞれ独自の特徴と強みを持っているが、では「採用」においてはどのように判断するとよいだろうか。

短期的に見れば、学生の頃から「自信のある人材」の方が仕事においても積極的にチャレンジするし、成果を出すことが多いだろう(そのため採用もされやすい)。比較的早い段階で即戦力となることを求めている企業や、転職が当たり前の業界で、新卒も数年で転職していくことが見えている企業などにおいては、こちらの人材を採るのも適しているかもしれない。

しかし、“日本の新卒採用”は多くの場合、総合職として採用し、企業が長い時間をかけて育てていく採用形態である。この点を踏まえて長期的な視点に立てば、「自信のない有名大卒人材」の採用も適してくる。

学生の持っている「自信」はあくまでもこれまでの学生時代の経験とその環境でたまたま発揮された能力がベースになっている。そのため、「自信のない有名大卒人材」の「自信のなさ」が、第一志望大学に入れなかった悔しさや、「学力」以外の能力を発揮する場面が少なかったことが原因だとすれば、それは社会に出てから覆すことでき、自信を培うことにつながるからだ。

例え学生時代までの経験で自信を得られなかったとしても、社会に出てから仕事を通じて得られる経験の中で試行錯誤し、少しずつ本当の自信と能力を得ていけば良いのだ。

自信があろうがなかろうが、厳しい大学受験を乗り越えた人材の持っている能力は確かなものだ。それが発揮されるまで時間をかけて育ててくれるのが、新卒採用の良さなのだから。
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