年金

令和6年度からの年金額はいくら?どのように決まる?

厚生労働省が令和6年度の年金額の改定を発表しました。それによると年金額は前年度から2.7%の引き上げですが、賃金や物価の上昇には届かず実質的には目減りです。今回はなぜ実質的に目減りとなる年金改定となるのか、年金が改定される仕組みを踏まえて解説します。

川手 康義

執筆者:川手 康義

ファイナンシャルプランナー / サラリーマン家庭を守るお金術ガイド

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<目次>

令和6年度の年金額は2.7%引き上げられます

令和6年度つまり令和6年4月以降の年金額は、前年度に比べて2.7%引き上げられます。

具体的には国民年金(老齢基礎年金1人分)を満額もらっている方で月額+1750円の6万8000円(*1)、厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)(*2)で月額+6001円の23万483円とされています。
令和6年度,年金,厚生労働省

令和6年度の年金は2.7%の上昇です(出典:厚生労働省)

*1:昭和31年4月1日以前生まれの方(68歳以上の方)は月額+1758円の6万7808円
*2:平均的収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43万9000円)で40年間就業した際の水準

年金額は実質的には目減りです

令和6年度の年金額は2.7%の上昇ですが、実はあまり満足できる率ではありません。なぜならば賃金変動率(*3)は3.1%、物価変動率が3.2%であることを考えると令和6年度の年金額は実質的には目減りだからです。

*3:正しくは「名目賃金変動率」であり、2年度前から4年度前までの3年度平均の「実質賃金変動率」から算出される

令和6年度の改定には賃金変動率が用いられています

昨今の物価の上昇を考えると、年金も物価変動率程度は上昇してほしいものですが、そうならないのには理由があります。

年金額は「物価」や「賃金」の変動率に応じて、毎年度改定を行う仕組みとなっていますが、物価変動率が賃金変動率を上回る場合は、年金制度の支え手である現役世代の負担能力に応じた給付とする観点から、賃金変動率を用いて改定することが定められているのです。

○令和6年度年金改定に用いる改定率
物価変動率(3.2%)>賃金変動率(3.1%)⇒賃金変動率(3.1%)を用いる

つまり令和6年度は賃金変動である3.1%を用いた改定が行われるはずです。しかしながら実際の改訂率はそれより低い2.7%となるのはなぜでしょうか。

年金改定には「マクロ経済スライド」が加味されます

実は年金額の改定には「賃金」「物価」の変動率に加え、「マクロ経済スライド」による調整率が加味されます。「マクロ経済スライド」とは社会情勢(現役人口の減少や平均余命の伸び)に合わせて年金の給付水準を引き下げる仕組みのことであり、「賃金」と「物価」の変動率がプラスの場合に一定の率が差し引かれます。「マクロ経済スライド」による調整を行うことは、将来世代の年金の給付水準を確保することにつながります。

今回の改定に用いられた「マクロ経済スライド」による調整率(-0.4%)は、令和2年度から4年度の公的年金被保険者総数の平均変動率(-0.1%)と平均余命の伸び率(-0.3%)を合わせたものです。この「マクロ経済スライド」による調整率が、賃金変動率から差し引かれます。

そのため令和6年度の改定は、賃金変動率である3.1%に、「マクロ経済スライド」による調整率(-0.4%)を差し引いた2.7%となりました。

○令和6年度の年金改定率
賃金変動率3.1%-0.4%(マクロ経済スライドによる調整率)=2.7%

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は令和6年度の年金改定について解説してみました。厚生労働省の発表によると、年金額は前年度比2.7%の引き上げとなりますが、賃金や物価の上昇率には及ばず、実質的には目減りです。また、少子高齢化の中で将来世代の年金給付水準確保のための「マクロ経済スライド」が導入されており、これから先も年金が抑制されることは避けられません。現在年金をもらっている世代だけでなく、今後老後を迎える世代も、老後資金確保のための自助努力が必要かと思います。

〈参考〉
厚生労働省 Press Release
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