投資信託の再投資効果とは?
Q. 投資信託は複利効果が大きいと聞きましたが、投資信託の複利はいつ発生するのでしょうか?
「新NISAで投資信託の運用を考えています。投資信託は複利の効果が大きいと聞きましたが、どの時点で複利が発生するのかがイマイチ分かりません。積立を始めて1年経ったときの利率で決まるのか、それとも投資信託会社の決算日の時点の利率で決まるのでしょうか?」(43歳・専業主婦)A. 再投資のタイミングは年1~2回、ただし投資信託の再投資効果は眉唾物と思ってください
投資信託の場合、「複利」という概念は正しくありません。正確には「再投資効果」というべきでしょう。複利はあくまでも預貯金や債券のように、確定利付きで元本が保証された金融商品に当てはまる概念です。
これに対して投資信託の場合、そもそも「利子」が生じる金融商品ではないので、「複利」という言葉自体が間違っていますし、だからこそ「再投資」という言葉が用いられているのです。
したがって、「どの時点で再投資が発生するのか」という質問であると解釈して、説明していきましょう。
再投資は投資信託ごとに決められている「決算日」に行われる
再投資が発生する時期は、投資信託ごとに決められている「決算日」になります。決算日とは、年1回、あるいは年2回くらいの頻度で行われるもので、前回の決算日の翌営業日から今回の決算日までの損益や資産状況の計算、そして分配金の支払いなどが行われる日のことです。かつては「毎月分配型」といって、毎月決まった日に決算日を設け、その度に分配金を支払うタイプの投資信託が人気を集めていましたが、新NISAの対象には含まれていませんので、ここでは「年1回、あるいは年2回くらいの頻度」と申し上げておきます。
再投資は、決算日に支払われた分配金から税金が差し引かれたうえで、残った金額で同一の投資信託を買い付けます。これも複利とは大きく違う点で、複利の場合は、発生した利子・利息に課税せず、最終的に満期になった時点で課税されますが、再投資は課税後の分配金でもって投資信託が買い付けられます。
「複利効果で元本が大きく増える」は間違い
「投資信託は長期保有すると複利効果によって元本が大きく増えます」と説明されることもありますが、これも残念ながら間違いです。もし、投資信託が価格変動商品でなく、基準価額がずっと1万円で固定されるなら、複利の概念は当てはまります。
しかし、投資信託は基準価額が変動します。値上がりする時だけでなく、値下がりする時もあります。
前出の「投資信託は長期保有すると複利効果によって元本が大きく増えます」ということを説明するにあたり、事例として「年平均リターンが7%で20年間運用すると、100万円が386万9600円になります」ということを、もっともらしくグラフで表示していたりするのですが、これは基準価額が下落しなかったことを想定したうえでのシミュレーションに過ぎません。
運用環境が非常に悪く、したがって分配金が支払われないような事態になったら、当然のことですが、その決算日には再投資が行われませんから、その分だけ再投資の効果は下がります。
また再投資は、支払われた分配金で同一の投資信託を買っていきますから、再投資が行われた後で基準価額が急落すると、本来なら受け取れたはずの分配金以上の損失を被る恐れもあります。
これらの点から、あたかも預貯金などの複利運用と同じように資産が増えるような表現方法は、誤解を招くと言わざるを得ません。投資信託の再投資効果は眉唾物と思っておくくらいでちょうどよいでしょう。