SNSの言葉に圧を感じる
――佳道と夏月のパートナー関係は磯村さんから見てどうでしょう? 理想のパートナー像などあったら教えてください。磯村:パートナーとの出会いなどは、年齢と共に変化していくと思うのですが、この映画の2人の出会い方は、僕としては新しいと感じました。今の時代の新たな形なのかもしれません。
パートナーとの関係は、本人次第だと思うんです。他者が口を挟むことではないんじゃないでしょうか。結婚は本人だけじゃなく、双方の家族が関わってきて、話が進まなくなるという場合もあると思いますが、僕は結局、本人同士の気持ちが重要だと思います。2人が幸せだと思うのなら、それが一番です。
――先ほどのお話で佳道はマジョリティーの圧を受けていたとおっしゃっていましたが、磯村さんご自身がマジョリティーの圧を感じたことはありますか?
磯村:俳優という仕事はマイノリティー側で、一般的に理解されにくい仕事ではないかと思っています。マジョリティーというのは、俳優にとっては、この仕事以外の方々のことです。
最近SNSで発信される言葉に圧を感じることがあります。それは俳優や作品に対する言葉だけではなく、誰かが言った言葉に対して、「そう思う」「私も」とどんどん広がっていくじゃないですか。果たして本当に意味を理解して広めているのかなと。みんなが言っているから賛同しておこうという、まさに同調圧力ですよね。それが怖いなと感じています。
新垣結衣さんは幻のようだった?
――『正欲』では稲垣吾郎さん、新垣結衣さんと共演されていますが、初共演の感想を教えてください。磯村:新垣さんは、僕がデビューする前からさまざまな作品に出演されていましたから、僕は新垣さんをテレビで見ていたガッキー世代(笑)。だから最初は目の前にいる新垣さんを「幻かな」と(笑)。そんな不思議な気持ちもありました。
新垣さんはまとっている雰囲気が柔らかいんです。誰にでも優しいですし、感受性が豊かで、改めて素晴らしい俳優さんだと思いました。 稲垣さんとのシーンは1日だけで、稲垣さんが演じる寺井啓喜と対峙するシリアスな場面でした。ごあいさつするくらいで、撮影合間もお互い何も話さず、すごく緊迫した空気が流れていました。
でも『正欲』の取材や舞台挨拶で再会したときは、撮影時の印象とは正反対。とてもフランクに話をしてくださって、趣味の話などもできてうれしかったです。また共演する機会があったら、今度はもっと話ができると思うし、楽しい時間が過ごせそうです。
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