人との交流が少ないと「脳委縮」が進む?
「人と話さない刺激のない生活で、認知症になってしまうかも」と心配している人もいるのではないでしょうか。その回答のヒントとして研究2つをご紹介します。まず、国立長寿医療研究センターの研究です。要介護者でない65歳以上の1万3984名を対象に、8つの社会関係と認知症発症リスクの関係を10年間追跡調査したものです。結果は、次の5つのつながり――「配偶者がいる」「同居家族と支援のやりとりがある」「友人との交流がある」「地域のグループ活動に参加している」「何らかの就労をしている」――がある人は、認知症発症リスクが低下し、さらに、これら5のつながりがある人は、ひとつもないかひとつだけの人と比べて認知症発症リスクが46%低いことがわかりました
次に、65 歳以上の認知症を有しない8,896 名を対象とした全国8地域からなる大規模認知症コホート研究(九州大学、弘前大学、岩手医科大学、金沢大学ほか」)です。この研究では、脳萎縮や認知症発症を予防する上で、他者との交流頻度を増やし、社会的孤⽴を防ぐことが重要である」ということ⽰唆されました。認知症・介護予防に「他人と交流する」「社会参加する」があることに合点がいきます。
出典:
- 「社会との多様なつながり方がある人は認知症発症リスクが半減」(国立長寿医療研究センター報道発表 No:127-17-20.2017)
- 全国8地域からなる大規模認知症コホート研究で社会的孤⽴と脳萎縮および⽩質病変との関連を報告
そうだ、仲間を作ろう!
仕事以外の人間関係が薄い人がリタイアすると、「きょういく(=今日行く場所)」や「きょうよう(=今日の用事)」がなく、毎日が日曜日になりがちです。最悪は「濡れ落ち葉」と揶揄される、そんな人こそ仲間が必要です。友人・知人・仲間の違いは、私見ですが、友人は「対等に交流できる親しい人」、知人は「知っている人」、仲間は「ある物事を一緒に実行する人」。学びや趣味、スポーツ、ボランティアなど同じ目的や関心を持つ人が集まり活動する会合であれば、最初からスムーズに話に参加できますし、参加者の話も興味を持って聞くことができるでしょう。仲間となる人と出会う確率も高くなります。
仲間作りは「安近短」で気軽にスタートしよう
仲間作りの第一歩は、気軽に参加・挑戦できる「安近短(=費用が安く安心、近場、短時間)」がお勧めです。地方自治体や社会福祉協議会、公民館、老人クラブなどが開催しているものは安近短の最たるものです。例えば、市民大学や生涯学習、ワークショップ、ボランティア、防犯パトロール、茶話会、いきいき体操会、歩こう会、野鳥の会、カラオケや手芸などの趣味の会、など多種多様です。他にも、地元の大学や病院が開催する連続講座や早朝開催の私的なラジオ体操や太極拳の会など、仲間作りに活用できる会合は数多くあります。心地よく楽しく参加できて、さほど疲れを感じない会合があればシメタものです。
活動にはできれば毎回参加しよう
活動にはできれば毎回参加して、参加者の会話に耳を傾けたり行動に注意を払っていたりすると、一人一人の価値観や考え方などが朧気ではありますが見えてきます。早ければ半年過ぎる頃には、相性があいそうな人が見つかるでしょう。そこから仲間作りが始まります。ポイントは「間口は浅く広く、時間をかけて」です。そうすれば、メンバーの中から、楽しく充実した時間と場所を共有し適切な距離感を保つことができる人、互いに存在を尊重しあえる人を見つけ、仲間という関係を失敗なく構築することができるでしょう。
老後の不安も軽減する?
近場に仲間を作り、居場所(通いの場)を持つと、生活に適度なメリハリができます。気の置けない会話や笑い、行動は、ストレス発散を促し、孤独感を癒やし、心身の健康維持に役立ちます。また、介護や医療を含め生活をする上で困ったことに直面したとき、「市役所で相談できるよ」「あの人が詳しいよ」「こんな制度や支援があるよ」など仲間から得られる情報は貴重です。つまり仲間作りは、老後の3つの不安「健康・お金・孤独」への最良最善の処方箋の一つです。仲間がいるって本当に素敵なことです。しかし、高齢者の交流では、ある日突然の別れが待っています。その喪失感は深いでしょうが、それも仲間が癒やしてくれるでしょう。シニアは、孤独力(=孤独を楽しむ力・孤独への耐性)を身に付けて「君子の交わりは淡きこと水のごとし」的な交流を目指すとよろしいのでは?
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