そもそもベーシックインカムとは何ぞや?
ベーシックインカムとは、国が全国民に対し、生活に必要となる現金を支給する制度です。特徴として、性別、年齢、収入等に関係なく一律に支給されること。そして支給についても、一回限りということではなく、毎月○万円といったように定期的に支給が行われることが挙げられます。ベーシックインカムとは何?
ベーシックインカムを導入するメリットについては、貧困の解消、少子化の解消、労働環境の改善等が言われています。一方、デメリットとして労働意欲の低下が挙げられています。働かなくてもお金がもらえるので、働く意欲が減るのでは?ということなのでしょう。また、そもそも国の財政が厳しいのにどこから財源をねん出するのか?と疑問視される向きもあります。仮に全国民に毎月7万円支給すると、必要な財源は年間100兆円にも及ぶと言われています。100兆円とはすごいですね。
基礎的な所得保障と言えば、思い浮かぶ老齢基礎年金
国民の基礎的な所得保障と言うと、公的年金で国民年金から支給される老齢基礎年金を思い起こします。老齢基礎年金は、日本国内に住所があり、国民年金に加入して保険料を納めた20歳以上60歳未満の人に、原則65歳から支給されます。老齢基礎年金の満額が6万6250円(令和5年度67歳以下)で、老後の生活の基礎部分を保障する役割を担っていますので、ベーシックインカムと役割が被っていますね。そのため、ベーシックインカムの導入の財源確保の意味合いもあり代わりに老齢基礎年金を廃止するという案もあるようです。そうすると、今まで納付したものはどうなるのか? 国民年金については、保険料の未納や免除等で年金額に差があるため、今までの納付実績をどうするのかという問題も出てきそうですね。
仮に、老齢基礎年金が廃止されたとして、厚生年金から支給される老齢厚生年金はどうなるでしょうか?
月7万円程度を支給するベーシックインカムの仕組みであれば、厚生年金から支給される老齢厚生年金については、引き続き維持されることになると思われます。
ベーシックインカムと年金、どう違うの?
ベーシックインカムと老齢基礎年金の違いを見てみましょう。ベーシックインカムに対し、年金(老齢基礎年金)ではどうか?という視点で考えます。【1】支給対象者に年齢の制限がある
ベーシックインカムは年齢に関係なく全国民に対し支給するのに対し、年金(老齢基礎年金)は、原則65歳以上に限定されます。
【2】保険料納付義務がある
ベーシックインカムは、それを受け取るために必要な保険料等はありません。一方、老齢基礎年金は保険料の納付が必要となります。
【3】支給額が一律ではない
ベーシックインカムは、原則として一律に同じ額を支給する制度です(一部、子どもは半額等の案もあり)が、老齢基礎年金については、保険料の納付実績により支給額が変わります。さらに、最低でも保険料を納付した期間と、免除された期間が10年以上ないと、支給されないことになります。
月7万円のベーシックインカムと老齢基礎年金を比較すると、ベーシックインカムの方が万能だと言えるでしょう。ただし、当然ベーシックインカムの方が多くの財源を必要とするのは言うまでもありません。
ベーシックインカムは万能だが……
ベーシックインカムを導入する代わりに、公的年金をどうするのか? これは、現在さまざまな案があります。「公的年金をすべて廃止してベーシックインカムに置き換える案」「公的年金は残し、ベーシックインカムを上乗せする案」「公的年金を一部残し、一部置き換える案」などです。現在、日本の年金制度は、現役世代の保険料でリタイア世代の年金を賄う「世代間扶養」という仕組みで成り立っています。少子高齢化が進む日本で、この「世代間扶養」の仕組みを維持していくのは簡単ではなくなっています。これが年金不安、ひいては老後の不安の元になっている側面もあります。
その意味で老齢基礎年金を廃止し、ベーシックインカムに置き換えるという考え方は合理的なように思えます。
ただ、まだ議論は始まったばかり。今後の議論の推移を見守りたいと思います。