<目次>
遺族厚生年金は会社員・元会社員(公務員・元公務員も含む)が死亡したときに、遺族が受け取れる年金
遺族年金には遺族基礎年金と遺族厚生年金があり、現役世代にとっては保険のような役割も果たしています。遺族厚生年金は、保険料の納付要件を満たした在職中の会社員、合計25年以上の年金の受給資格期間がある元会社員、障害等級1級、2級の障害厚生年金の受給者が亡くなった場合等、生計を維持されていた遺族が受給できます。
遺族厚生年金を受け取れる遺族の優先順は、配偶者、子、父母、孫、祖父母です。
遺族厚生年金は、妻が30歳未満で、子どもがいない場合は5年のみ受け取ることができます。子どものいない夫、父母、祖父母は死亡当時55歳以上なら受給権を得られますが、遺族厚生年金の受給は60歳以上となります。
一方の遺族基礎年金は、18歳になる年度末まで(子どもが障害等級1級、2級なら20歳になるまで)の子どもがいる場合にもらうことができます。子どもがいない配偶者は遺族基礎年金を受給できません。
遺族厚生年金に上乗せされる中高齢寡婦加算とは?
遺族厚生年金を受給する妻は、中高齢寡婦加算(令和5年度・約59万円)というものが加算されます。中高齢寡婦加算とは遺族厚生年金の加算給付の1つで、夫が死亡したときに40歳以上で子どもがいない妻(夫の死亡後40歳に達した当時、子どもがいた妻も含む)が40~65歳になるまで受け取ることができます。妻が65歳になると自分の老齢基礎年金が受けられるため、中高齢の寡婦加算はなくなります。
遺族厚生年金を受給する妻は、子どもが18歳で高校卒業(子どもが障害等級1級、2級なら20歳になるまで)すると、遺族基礎年金の受給が終了してしまいますが、その後に中高齢寡婦加算を受給できることになります。ただ「40歳以上の妻限定」の加算であるため不公平だという意見もありました。
今後、中高齢寡婦加算の縮小、廃止が検討されている?
以上のように、中高齢寡婦加算について解説してきましたが、最近になって、中高齢寡婦加算の制度が見直しをされる可能性がでてきました。令和5年7月28日に社会保障審議会(年金部会)で遺族厚生年金について話し合いが行われました。「遺族年金制度」(厚生労働省 年金局)という資料に内容がまとまっています。
資料によると、国は今後の社会は共働きが一般的になると想定される中で、遺族年金について社会の変化に合わせて制度を見直すことを考えているようです。中高齢寡婦加算については以下のように記載されています。
「現在20代後半の女性の約6割が正規雇用者であり、その比率を保ったまま30代、40代を迎えると考えられる。……例えば、今の20代、30代が40歳以上になったとき、中高齢寡婦加算を残す必要性があるのか、議論が必要」(P20)
つまり、今は20代、30代が妻も働いて収入を得ているため、40歳になったときの中高齢寡婦加算の縮小・廃止案を検討しているということと読み取れるかと思います。
しかし総務省の2022年労働力調査では、20代から30代の女性は4割が非正規労働者で、不安定な働き方をしていますし、高齢になるほど非正規労働者が増えています。若い女性も15歳から24歳の女性就労者について正規労働者は128万人、非正規労働者は142万人と非正規が多いです。子がいないとしても収入が不安定になりがちな非正規労働者の女性はいます。その上、男女の賃金格差もあります。男女の賃金格差も今の20代が40歳になる20年後に縮まっているかは定かではありません。
現実的には、配偶者の死亡は遺された家族にダメージを与えるものです。配偶者が死亡したときに上乗せされる中高齢寡婦加算の約59万円は、子育て世帯にとって遺族基礎年金の約102万円(子ども1人の時)がなくなった後の大きな助けになる加算です。妻が働いて収入を得ていたとしても、大黒柱を失えば生活は厳しくなります。
そもそも男性も配偶者に扶養されている人はいますので、遺族厚生年金は男女ともに男性にも中高齢寡夫加算を支給する方向で考えた方が、公平ではないでしょうか。実際は、中高齢寡婦加算を縮小してしまうと厳しい家庭が多いと思います。
中高齢寡婦加算の見直しについてどう感じるか、20代、30代の意見を聞いてみたいですね。
【参考】
厚生労働省 社会保障審議会年金部会資料 遺族年金制度について
厚生労働省 国民の皆様の声
【関連記事】
遺族年金の中高齢寡婦加算とは