Q. 20年後、日本の認知症患者数は何人に一人くらいになりますか?
増加する日本の認知症人口。自分が高齢者になる頃を考えると、不安になるという人も
今、働き盛りの世代が高齢者になる頃、日本の認知症患者数はさらに増えていることが予測されています。試算されている認知症患者数と、介護問題などに備えて今から考えておくべきことを解説します。
Q. 「今47歳です。自分も高齢者になっているであろう20年後、日本の認知症患者数は何人に一人くらいになっているのでしょうか? 少子高齢化社会の中で、もしものときに介護してくれる人がいるのか心配です。今のうちから備えられることはありますか?」
A. 試算上は65歳以上の4~5人に1人。個々の意識変革と国の施策が必要です
わが国における認知症患者数の将来動向に関する研究は数多くありますが、たとえば平成26年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業『日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究』のデータによると、2020年における65歳以上の高齢者の認知症患者数は約600万人(当時の推定値)とされており、2023年現在にほぼ合致しています。このデータから今後の推定値を拾い上げてみると、2040年で約800万人、2060年で約850万人となっています。ですので、20年後には、65歳以上の高齢者のうち4~5人に1人は認知症であるという時代がくるということです。ただし、この数値は、各年齢における認知症患者の割合がそのまま将来も同じと仮定して算出されたものです。つまり、認知症の発症率は年齢と関係があり、各年齢人口の分布と平均寿命をあてはめただけのものとも言えます。実際のところ、認知症の発症には、他の病気などとの関係も考える必要があります。認知症の発症と関連する糖尿病や高血圧などの基礎疾患患者数は特に増えているため、これらの病気による認知症発症率は増えていく可能性もあります。その点を考慮した場合、認知症患者数は2040年で約950万人、2060年で1150万人に達するかもしれないというショッキングな予想もあります。
それでは私たちは、いったいどうすればいいのでしょうか。なかなか決定的な解決法は見つかりませんが、今すぐにでも始められることはいくつかあります。
まずは、私たち一人一人が、認知症にならないような健康管理に努めることです。アルツハイマー病のような原因がはっきりとわかっていない病気を予防するのは難しいように思えますが、近年の研究から、基本的な生活習慣の見直しによって発病リスクを減らせることが分かってきました。欧米では、徹底した禁煙や減塩政策などを推進することで、認知症患者数が減ってきています。また、医師による予防的な指導も医療行為として認める(つまり診療報酬の対象とする)制度が導入されたことも大きいと思います。わが国も見習うべきではないでしょうか。
また、年齢別人口の動向を考えると、高齢者を支える若年層は今よりも確実に減ると予想され、少子化の影響は計り知れません。「介護する人がいない」というように、介護問題を人任せに考えているのではだめです。国民全員が自分のこととして考え、社会全体で認知症の方を支えていくように意識を高めていかなくてはなりません。
2023年6月14日、『認知症基本法』(正式な法律名は『共生社会の実現を推進するための認知症基本法、令和五年法律第六十五号』)が成立しました。この法律は、わが国で進行する少子高齢化社会において、認知症の諸問題に対して国全体で取り組もうという趣旨でつくられました。その理念には強く賛同しますが、実効性には疑問があり、もっと強力な施策を期待します。