そこで今回は、東京都産業労働局「2022(令和4)年版中小企業の賃金・退職金事情」の資料を元に、中小企業における業種別のモデル退職金を紹介します。この調査は、東京都内の中小企業1012社が対象になっており、対象企業の常用労働者数は、10人以上300人未満です。
業種ごとの退職金の相場はどれくらい?
業種ごとのモデル退職金を紹介する前に、全業種におけるモデル退職金をみてみましょう。・高校卒:994万円
・大学卒:1091万8000円
中小企業の場合、高校卒と大学卒では、100万円ほどの差となります。
続いて、高校卒の定年退職した人が受け取る業種別モデル退職金を紹介します。
●【高校卒】東京都の中小企業(1012社)の業種別モデル退職金
高校卒の定年退職者に支払われる退職金で最も高いのは「運輸業、郵便業:1142万8000円」。次は「建設業:1133万4000円」です。先述した、高校卒の全業種モデル退職金「994万円」と比べても約140万~150万円上回っています。
それ以外でも、全業種のモデル退職金を超えて支給される業種には「製造業」「卸売業、小売業」「金融業、保険業」「学術研究、専門・技術サービス業」があります。
一方、退職金の支払いが少ないのは「医療、福祉:332万3000円」「生活関連サービス業、娯楽業:716万9000円」。高校卒の全業種モデル退職金とは270万~660万円もの差があります。
続いて大学卒の定年退職した人が受け取る、業種別モデル退職金を紹介します。
●【大学卒】東京都の中小企業(1012社)の業種別モデル退職金
大学卒の場合、業種別の退職金の支給額には、大きな差があることがわかります。
最も退職金の支給が多いのは「金融業、保険業:1442万2000円」「運輸業、郵便業:1332万3000円」「教育、学習支援業(学校教育を除く):1244万9000円」です。大学卒の全業種のモデル退職金である「1091万8000円」と比べても約150万~350万円上回っています。
それ以外でも、モデル退職金を超えて支給される業種には「建設業」「情報通信業」「卸売業、小売業」があります。
一方、退職金の支払いが少ないのは「医療、福祉:342万4000円」「生活関連サービス・娯楽業:846万9000円」。大学卒の全業種モデル退職金とは240万~750万円という大きな開きがあることがわかります。
定年退職で支払われる退職金の相場には、業種ごとで大きな違いがあることがわかりました。さらに、社員数で違いがあるのかみてみましょう。
●東京都の中小企業(1012社)の社員数別モデル退職金
社員数(100~299人)と社員数(10~49人)の差は、高校卒の社員数別モデル退職金で約320万円、大学卒では340万円ほどになります。
社員数50人以上の規模であれば、高校卒(全業種のモデル退職金「994万円」)、大学卒(全業種のモデル退職金「1091万8000円」)ともに、全業種の退職金相場より多く支払われていることがわかります。
このように中小企業の退職金の相場は、業種別で大きく異なります。ご自身が思い描いている退職金と比べ「少ない……」と思うのであれば、今から家計の見直しをしたり、定年後も積極的に働いたりなど、できる対策を考えていきましょう。
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