なぜ、MBA留学なのか
留学は価値観、宗教、倫理、哲学を考える良いチャンスになる。 |
ハードウェア的な知識なら日本でも習得できるが、知識を肉体化するために、留学という手段はとても有効であると冨山氏はおっしゃいます。冨山氏自身、今でもMBA留学で学んだ自己主張の仕方が体に染み込んでいるそうです。グローバリゼーション化の中での学歴は、ドアがたくさん開くこと、チャンスが多くやってくるということを意味するともおっしゃいます。
冨山氏のキャリアに戻ると、1986年立ち上げ当初、10人だった社員は4年後には80人になっていました。自分で作った留学制度で1990年(バブル絶頂期の頃)、スタンフォード大学へ2年間留学し、日本へ戻ってきた時に、バブルは弾けていました。CDIの売上も半分になっていて、資金繰りに苦労する毎日が始まりました。
CDIの厳しい状況の中で、冨山氏を含む当時の経営陣はクライアントに出資金を募り、80人から40人へのリストラも実施し、とても辛い、大変な苦労をされました。
そこで学んだことは、「経営とは社員の人生を背負っているということ」。
今流行のヒルズ族経営者の悲劇は、これに気づいていないところだとも指摘されました。株主よりも何よりも、社員ひとりひとりと、その家族の人生を大事にすべき。そして、自分が関わった社員の人生をより豊かに出来たり、社員の自己実現に貢献できたと実感できた時が、経営者として最大の喜びになるとおっしゃいます。
また、冨山氏は、経営者というものは「壮絶な人生になることを覚悟しなければならない。」ともおっしゃっていました。特に若いときの苦労は買ってでもしろという昔ながらの教えは理にかなっていて、「苦労を知り、人の痛みがわかる人間になって初めて、本当の経営者の器が出来る。こういうことも、実はビジネススクールでは教えている重要な要素です。その結果として、あなたには不遇の時に助けてくれる人、応援してくれる人がどれだけいますか?これが、その人のしてきた事の結果であり、その人の人生の豊かさの指標だ。」と冨山氏は熱く語っていらっしゃいました。
「組織、人間が人工的に作ったものには絶対に裏切られる。」確かにそれは、終身雇用を約束していた企業がバブル崩壊後、一転してリストラに走ったことが証明しています。「組織、法人はきれい事の塊。最後の最後は自分です。」つまり、組織は自分の足で立っている人だけの集まりであることが望ましいともおっしゃっていました。
最後の最後は、人間は自分へのInsentiveの奴隷です。そこのところを理解していないと経営者としては失格。価値観、宗教、倫理、哲学、これらの背骨がぶれると脆い。留学することは、このようなことを考える良い機会になると冨山氏。
最後に、冨山氏は敷かれたレールから外れ、脱藩することで見えてくるものがあると、「脱藩の薦め」で幕を閉じられました。
参加者全員が、ぐっと聞き入り、MBA留学の意義と価値を深く考えさせられました。冨山氏の深く、感銘を受ける基調講演にこの場を借りてお礼申し上げます。
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