そう思っていたところに、うれしいニュースが飛び込んできた。各地に温泉リゾート施設を展開している「大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツ」(以下、大江戸温泉)が、「ゆったりと、たおやかに。」をコンセプトとした、新しいブランド「TAOYA」を冠した施設を、2023年4月10日に日光の霧降高原にオープンさせたのだ。 「TAOYA」ブランドでのオープンは、約4年前に「TAOYA志摩」(三重県鳥羽市)をオープンさせて以来の2店目であり、関東では初出店だという。早速、出かけてみることにした。
日光の高原で「たおやか」な時間を
霧降高原というのは、よほど旅慣れた人でもなければ、馴染みのない地名かもしれない。栃木県日光市の赤薙山(あかなぎさん)の斜面に広がる標高約1200メートルの高原地帯である。交通の便が悪い場所と思うかもしれないが、「TAOYA日光霧降」までは、東武日光駅から無料送迎バスでわずか15分ほど。日光東照宮などの観光名所へも、わりと楽にアクセスすることができる立地だ。ちなみに、「TAOYA日光霧降」は、新規に建てられた施設ではない。元々、「大江戸温泉物語」ブランドのホテルとして営業していたものを、今回「TAOYA」ブランドとしてリブランドオープンしたのだ。 「TAOYA」は、従来のにぎやかな雰囲気の「大江戸温泉物語」とはまったく異なるアプローチの宿だ。ロビーやラウンジなどをはじめ館内全体に、ゆったりとした空間が確保されており、どちらかと言えば、上質な高原リゾートといった雰囲気である。
だからといって、外資系の富裕層向けリゾートのような豪華な雰囲気かと言えば、それとも違う。「TAOYA日光霧降」のサービスを簡単にまとめるならば、「そこそこリーズナブルなお値段で、とても快適に滞在することができる、非常にコスパのいい温泉リゾートホテル」ということになると思う。以下、具体的な施設やサービスを見ていくことにしよう。
フォレストビューのインフィニティ温泉
温泉ソムリエでもある筆者としては、なにはともあれ、まずはお風呂に行きたい。取材ということで特別に許可を得て、営業時間外に男女両方の大浴場を見学させていただいた。大浴場、とくに屋外露天風呂のリニューアルは、今回のリブランドオープンの目玉の1つであり、コンセプトは「フォレストビュー・インフィニティ温泉」だという。 一般的に、インフィニティ・プールや、インフィニティ風呂といえば、海を一望できる場所にあって、水平線にそのまま溶け込むようになっているものがイメージされる。有名なものとして、ドバイの地上77階のインフィニティ・プールなどがある。
では、「TAOYA日光霧降」の「フォレストビュー・インフィニティ温泉」とは何なのかといえば、「周囲の高原の大自然、さらに空に溶け込むインフィニティという意味」(「TAOYA日光霧降」支配人の熊谷秀昭さん)とのこと。リニューアル前は浴槽の周囲に壁があったため、「湯に浸かりながら景色を楽しむことができなくて残念」という、お客さんの声が多かった。そこで、インフィニティにしたのだ。
このインフィニティ温泉は、入る時間によって、まったく異なる楽しみ方ができるのが魅力になっている。昼間は、そよ風や小鳥のさえずりに耳を傾けながら、大自然と一体になったような感覚が楽しめる。夜になるとブルーにライトアップされ、都心のホテルのプールのような、ちょっとおしゃれな雰囲気に変化する。そして圧巻なのが、早朝だ。東側の景色が開放されているので、雄大な日の出を楽しむことができる。
ちなみに、今回のリニューアルで、全98室の客室のうちの7部屋に、部屋付き露天風呂が用意されたとのことだが、私個人の感想としては、このフォレストビュー・インフィニティ温泉には何度も入りたいので、部屋のお風呂は必須ではないと思う。
イクラまで! 超ぜいたくな「のっけ丼」
レストランも、今回のリニューアルで大きく変化したという。目を引くのが、長さ約35メートルという、大型のライブキッチン(演出厨房)である。ライブキッチンというのは、調理しているところをお客さんにパフォーマンスとして見せて、そのままアツアツの料理を提供するというコンセプトのキッチンである。 大江戸温泉といえばバイキングが有名だが、今までのバイキングとは別物という感じがする。緩い曲線を描くライブキッチンに沿って料理が並べられており、その先にどのような料理があるのかが見えず、とてもワクワクする。これも演出の1つなのだろう。 では、肝心な料理の内容はどうだろうか。世界的に有名なシンガポールのラグジュアリーホテル「マリーナベイ・サンズ」のエグゼクティブシェフなどを務めた山口伸雄エグゼクティブシェフが監修しているという料理は、たしかにおいしく、品数も多い。アツアツのメインディッシュはもちろん、グラスに取り分けられた清潔感のあるサラダや、かわいらしい飾り付けがなされたデザートなどにも好感が持てる。ただ、「これは!」という、目玉料理がないのが残念である。旅先に出かけたならば、ご当地でしか食べられない“映える”料理をSNSにアップして、友だちに自慢したいと多くの人が思うだろう。その意味での「これは!」というものが少ないのである。
また、せっかくのライブキッチンも、パフォーマンスがやや地味という印象だ。都内のホテルなどでは、炎を駆使したド派手な料理パフォーマンスが行われていたりするが、やはり、ああいった客の目を引くような演出が欲しいところである。このあたりが、今後の伸び代だろう。
むしろ、筆者がすごいなと思ったのが、朝食の「のっけ丼」である(朝食もバイキング形式の提供で、そのメニューの1つ)。複数の海鮮具材をご飯の上に乗っけ放題という大江戸定番の朝食メニューだが、「TAOYA日光霧降」のすごいところは、乗っけ放題の具材の中に、カニやマグロの中トロ、サーモン・イクラまでが用意されているところだ。これはもう、朝からテンションが上がること間違いない。
オールインクルーシブでコスパよし!
冒頭で、「TAOYA日光霧降」は、非常にコスパのいい温泉リゾートホテルだとお伝えした。その大きな理由が、「オールインクルーシブ」というシステムを採用していることによる。宿泊料金さえ支払えば、その都度、お金を払わずとも、館内のさまざまなサービスを無料で利用できるのだ。具体的には、次のようなサービスが提供されている。まず、一般的なホテルで夕食時に飲み物を頼めば別料金だが、「TAOYA日光霧降」では、地酒やワイン、ビールなどのアルコールを含め、飲み物がすべて無料で飲み放題になっている。財布の中身を気にせず、安心して食事を楽しめるのは、リラックスの観点で大きい。
食事時だけでなく、湯上りラウンジや暖炉ラウンジ(1階のメインラウンジ)などに設置されているドリンクやソフトクリームなども無料で提供されているし、夜食や、マッサージ機の利用も無料だ。館内で財布を持ち歩く煩わしさから解放され、いつでもどこでもくつろぐことができる。 さらに、星空ツアーや自然観察ツアーといったアクティビティも無料で提供されている(一部のコースは有料)。無料アクティビティといっても、星空ツアーは夜8時から約1時間、自然観察ツアーは朝食後に約45分、それぞれガイドが付いて、しっかりと案内してくれる。満足間違いなしの内容だ。
気になる宿泊料金は?
さて、気になる宿泊料金(1泊朝夕バイキング付)はいくらかをお伝えすると、平日なら1万9200円~(2名1室利用時で1名あたり)である。都内のビジネスホテルが軒並み値上がりし、2万円超えも珍しくなくなっている昨今の状況からすれば、オールインクルーシブサービスでこの値段というのは、かなりお得なのではないだろうか。支配人の熊谷さんは、「記念日やプチぜいたくな旅行でご利用いただければ」と言うが、普段使いにも、おすすめな宿だと思う。「TAOYA」ブランドの施設は、今後、宮城県の秋保、栃木県の那須塩原、長崎県の西海橋などにも展開し、今年8月までに全5施設になるという。
最後にお得な情報をお伝えしよう。全国にある大江戸温泉物語の温泉宿ではスタンダードプランから20%以上割引した、いいふろ会員(入会費・年会費無料)限定のお得なプラン【大江戸旅行応援割】を2023年4月24日から提供開始している。詳細は下記リンク先を確認してほしい。
大江戸旅行応援割
●「TAOYA日光霧降」基本情報
所在地:栃木県日光市所野1535-1
宿泊料金:1万9200円~(1泊朝夕バイキング付・2名1室利用時で1名あたり)
アクセス:浅草から東武日光線の特急「けごん」で約1時間50分の東武日光駅から無料送迎バスで約15分。