マネジメント

中小企業の厳しい台所事情も浮き彫りに…物価高が続く中、企業が「インフレ手当」に込める狙いとは(2ページ目)

物価高が続く中、各社のインフレ対応の問題が注目を集めています。給与の引き上げに関しては、「基本給をアップする」企業や「インフレ手当」として一時金を支給する企業など、対応方法はさまざまです。これらの違いは、どのような経営の考え方によるものなのでしょうか。

大関 暁夫

執筆者:大関 暁夫

組織マネジメントガイド

透けて見える「中小企業の厳しい台所事情」

東京商工リサーチが2023年2月に公開した「給与引き上げに関する調査」(※2)では、そのあたりを反映した面白い事実が浮き彫りになっています。

この調査によると、今春賃上げを予定している企業は、大企業で85.5%、中小企業は80.0%となっているのですが、その内訳として給与そのものの引き上げではなく一時金で対応する企業の割合は、大企業の12.6%に対して中小企業が17.1%で上回るという逆の傾向が出ているのです。

要するに、中小企業にとって毎月のコスト負担増は耐え難いが、人材確保はしないわけにもいかず、とりあえず一時金方式の「インフレ手当」で対応せざるを得ない台所事情がうかがわれます。

一方で、大企業でも定例給与の引き上げを一定水準に抑えて、別途「インフレ手当」を支給して給与のかさ上げを実施している先も少なからず存在し、「インフレ手当」自体は勤務先の規模の大小を問わず世の会社員の認識として広まりつつあるのも事実です。多くの場合、先に申し上げた節税対策にもなるという観点から、年度末に特別賞与や特別一時金として支給されているようです。
 

インフレ手当が期末賞与として定着する可能性もあるが……

我が国の「インフレ手当」を歴史的に紐解いてみると、戦後復興で経済が拡大基調にあり物価が上昇を続けた高度成長期にその根源をみることができます。

物価上昇の中で半期ごとに業績を反映して支払われた一時金の「インフレ手当」が、世界的にみて特異な夏冬定例での日本の賞与制度に落ち着いたといわれています。

そんな過去の流れを知ると、今回の「インフレ手当」が新たな期末賞与として定着する可能性もまんざらゼロではないようにも思えてきます。

ただしそのためには単に物価上昇が続くという状況だけではなく、国としての順調な経済成長が不可欠であるということが、過去の賞与制度定着の経緯から推察されるところです。

>次ページ:賃上げを実施予定の企業は何%?

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