映画を見ると悔しくて仕方がなくなる!
――All Aboutでは、映画の思い出や好きな映画スターなどについてもお話を聞いているのですが、玉城さんはいかがでしょうか?玉城:私はエル・ファニングが好きなんです。私より1つ年下なのですが、同世代ということもあって気になる存在です。彼女のファッションセンスや、出演作、周囲に媚びないで自分をしっかり持って生きている感じがとても好きです。
作品では『20センチュリー・ウーマン』(2017)のエルが好きですね。すごくカジュアルで内容も良くて、エルがとても魅力的でした。『ネオン・デーモン』(2017)のような作り込まれた世界の中で演じている彼女も素敵なんですが、一番好きなのは『20センチュリー・ウーマン』ですね。 あと映画作品だと、ガス・ヴァン・サント監督の『エレファント』(2004)が好きです。
実際に起こったコロンバイン高校銃乱射事件をテーマにしているのですが、ショッキングな事件だったのに、すごく淡々と描いていることに驚きました。起こっていることは残酷だけれど、色彩とか映像が美しかったのも印象に残っています。 ――玉城さんは沖縄県出身ですが、沖縄にいた頃から映画をよくご覧になっていたのですか?
玉城:沖縄でも映画を見に行ったりはしていましたが、東京に比べると映画館の数が少ないし、そもそも自分がどういう映画を好きなのかも良くわかっていなかったです。だから、15、16歳で芸能界のお仕事をするようになってから、仕事のためによく観るようになりました。
でも当時は何を観ても悔しくて。「なぜ私はこの作品の中にいないのだろう」とか思っちゃって。
『零落』で主人公の深澤が、売れている漫画に対して「あんな漫画」と言ったりしますが、あの気持ちに近いかもしれない(笑)。あまりいい映画の鑑賞の仕方ではないかもしれないですね(笑)。
10代特有の尖った感情が私の中にあったんだと思います。
大人が“もがき続ける姿”に幻滅してもいいと思う
――でも向上心がすごく強かったんじゃないですか。それって大事だと思います。では最後に、この映画でのご自身の見どころを教えていただけますか?玉城:「猫顔の少女」は本当に印象的な役で、多くは語らないんですけど、彼女が発する言葉っていうものが、なんというか、呪いのように(笑)主人公の心に降り注いでいくので、独特な存在感を楽しんでもらえたらなと思います。
純粋に「楽しい!」というタイプの映画ではないのですが、大人の方は自分にも起こりうることとして感じる方もいると思いますし、学生の方は「大人ってこうなんだ」と、正直、幻滅していただいてもいいと思っています。
大切なのは「自分がどう感じるか」なので、しんどい体験を描いていますが、登場人物はみんなもがき続けながらも、諦めてはいません。そして、苦しむ姿の中にも輝きがあるので、ぜひ劇場で『零落』を体験していただきたいです。
玉城ティナ(たましろ・てぃな)さんのプロフィール
1997年、沖縄県生まれ。講談社主催のオーディションでグランプリになり、雑誌ViViの専属モデルとしてデビュー。2014年俳優デビュー。以降、数々の映画、ドラマに出演。2018年、雑誌ViViの専属モデルを卒業。2019年『Diner ダイナー』『惡の華』の演技で第44回報知映画賞新人賞を受賞。2021年WOWOWの企画「アクターズ・ショート・フィルム」で監督デビューも果たした。近作に『ホリックxxxHOLiC』『グッバイ・クルエル・ワールド』『窓辺にて』(いずれも2022)『恋のいばら』(2023)。ドラマ『社畜OLちえ丸日記』(2023/日本テレビ)『君と世界が終わる日に』Season4(2023年3月配信予定/Hulu)『零落』(2023年3月17日公開)
2023年3月17日全国ロードショー漫画家の深澤薫(斎藤工)は長期連載が終了し、次の漫画のアイデアが浮かばず、編集者にも見放され、終わった作家だと自嘲していました。妻・のぞみ(MEGUMI)は漫画雑誌の編集者。売れっ子漫画家の担当として多忙を極め、夫婦はすれ違いばかり。そんな時、薫は風俗嬢のちふゆ(趣里)と出会います。猫のような目をした彼女を観て、深澤は新人漫画家時代に交際していた猫顔の少女(玉城ティナ)を思い出し……。
撮影・取材・文:斎藤 香
ヘアメイク:渡嘉敷愛子
スタイリスト:丸山佑香