俳優の仕事は地味で体力勝負
――その後は俳優としても順調にキャリアを重ねていますが、ターニングポイントになった作品はありますか?玉城:蜷川実花監督の『Diner ダイナー』と井口昇監督の『惡の華』(いずれも2019)です。 モデルを卒業して俳優として頑張っていきたいというのを皆さんにアピールできた作品だし、評価していただいたので。
モデルを務めていた雑誌の最後の取材の後に『惡の華』の撮影があったりして、すごくタイミングよく自分のキャリアの移行ができたので、そういう意味でも思い出深い作品です。
――先ほどの「演じることは苦しい」というのは、やはり自分じゃない他者になることや役を作り上げていくことへの苦しみなのでしょうか?
玉城:どっちもですね。役になりきっている時の方が楽なこともあるのですが、役によってではなく、その時の自分の気持ち次第かなと感じます。演じていると「今、本当の自分はどういう状態なんだろう」とわからなくなることもあるんです。
それと俳優のお仕事って、結構地味で大変な仕事だと思うんです。取材や舞台挨拶などの時は、こうしてきれいなワンピースを着て、ヘアメイクもしていただいているので華やかに見えると思いますが、撮影現場は体力勝負ですし、寒かったり暑かったり環境もさまざま。そんな中でも役を信じてやり切るしかない。とても不思議な仕事だなと思います(笑)。
30代で長編映画を監督したい!
――いろいろ葛藤されているんですね。でも活躍の場は広がって、2021年はWOWOW「アクターズ・ショート・フィルム」の企画で、短編映画の監督デビューもされました。 玉城:初めて監督に挑戦してわかったのは「監督は神様じゃない」ということです。監督はすごく悩みながら決断しているし、もしかしたら現場で一番苦しくて悩んでいるのは監督かもしれない。今まで俳優として撮影に臨んでいた時にはわからなかったことが、映画を制作する側に回ったらたくさん見えてきました。だから私も監督にお任せしたり、頼ったりしてばかりではなく、俳優として監督の思いに寄り添って行こうと思いました。
――監督業も俳優と同じく苦しかったですか?
玉城:脚本も自分で書いたので、本当に好きに作らせていただけて、やりたいことが自分の中で明確にあったのでとても楽しい体験でした。
――また監督をやりたいと思いました?
玉城:はい。今度は長編映画を監督してみたいです。やはり25歳を過ぎると「これからの人生をどう歩んでいこうかな」と考えることも多くなるのですが、監督を経験したことで、20代後半から30代で長編作品を監督したいと思いました。その年代の私が持っている視点や感覚を作品として残したいと思うので、ぜひやってみたいです。
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