大学生の就職活動

「偏差値」の壁を乗り越え“就活強者”に! 脱・学歴フィルターの切り札『PROGテスト』とは

就職活動では面接やエントリーシートで大学生活での経験や培った力を企業にアピールする機会は多いが、それらの能力や成長度合いを数値化して伝えるのは難しい。今回は自身の大学生活で培った力を可視化して企業に伝える手段として開発された『PROGテスト』について紹介する。

小寺 良二

執筆者:小寺 良二

ライフキャリアガイド

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『SPI』の代替として期待される『PROG』を紹介

面接やエントリーシートで定番なのが「ガクチカ」と呼ばれる「学生時代に力を入れたことは?」という質問。大学生活での経験や、それらから得た学びや成長を評価するという目的においては的を射た質問ではあるが、企業としてはそれらを適切に評価していくというのは大変難しい。

学生はなんとか自分を評価してもらおうと自己評価を高めて話を盛りがちだし、1人1人時間をかけて話を聞くには面接できる人数は限られる。するとWebテストのような手段を使って人数を絞り込む必要が出てくるが、Webテストのスコアのみで評価されることに不満を持つ就活生や大学関係者も多い。
 

なぜ「Webテストでの足切り」はイマイチか

数あるWebテストの中でも最も有名なものに『SPI』があるが、このテストは能力検査(言語能力、非言語能力)と性格検査で構成されている。応募数の多い企業ではよく、このSPIの能力検査のスコアを足切りに使うことが多い。

能力検査の言語能力と非言語能力は、分かりやすく言ってしまえば「国語」と「算数」だ。SPIに関して言えば、能力テストは「学力テスト」と言ってもいい。その学力テストで高い点数を取った学生が、企業の採用選考で評価を得るということに違和感を持つ人もいるだろう。

偏差値の高い大学の学生ほど能力検査では高スコアを出す傾向にあるので、そういう意味で、もし学力の高い学生、偏差値の高い大学に入学した学生を抽出したいのならば、良い方法といえるのかもしれない。

しかし、企業が「採用する人材に求める能力」として「学力」をトップにあげる場合はない。多くは「コミュニケーション力」や「主体性」である。本来はそれらの能力を評価対象にすべきなのに、結果的に学力が足切りの評価基準になっている点に矛盾がある。

そのようにならざるを得ない理由は簡単で、「コミュニケーション力」や「主体性」は実際に会って話して評価できるものであって、Webテストのように数値化して評価する手段が今までなかったからだ。それで企業も仕方なく現状あるWebテストで評価できる能力のみを使って足切りを行い、その後絞り込んだ母集団に対して面接などでじっくりと大学生活での経験やそこで培った能力を評価しようとしているのである。
 

大学生活で培った能力を可視化する『PROGテスト』とは

最近、全国にある多くの大学で入学時に学生たちに受験させている『PROG(プログ)』というテストがある。大学入学後に受けているが「学力」を測るテストではない。実はPROGで測定するのは、社会に出てから仕事をする際に共通して求められる汎用的能力(基礎力・ジェネリックスキル)なのだ。

2012年に河合塾とリアセックが共同開発したこのアセスメントツールは、コミュニケーションやストレスマネジメントといった「行動特性」を数値化して測定することができ、受験者数は累計172万人、530大学で導入されている。

多くの大学では1~2年次に1回目、2回目を3~4年次に受験してもらい、その結果を学生たちにフィードバックする。学生たちは自分たちの大学生活を通じて培った基礎力やその成長度合いを在学中に知ることができる。基礎力が高い、もしくは成長した学生は社会で活躍できる可能性が高いということで、それらのスコアや経験を就職活動時にアピールすることもできるだろう。

まさに大学生活で培った自身の能力を可視化し、客観的な数値として企業にアピールできるとても有効な手段ではあるが、まだまだ採用活動で導入している企業は少ない。
 

「脱」学歴フィルターの切り札になるために必要なこと

大学名や学力のみで足切りされてしまう学生たちがチャンスを得るためには、PROGのような新しい能力診断ツールが採用活動でももっと活用されていくべきであり、それが「脱」学歴フィルターの一歩にもつながるであろう。

そのためには、その新しい手段が社会的な「認知度」と「評価」を得る必要がある

既にこれら2つを得ている能力診断ツールを挙げるとすれば「TOEIC」だろう。TOEICは英語力を測るテストではあるが、圧倒的な社会的認知度と評価を得ている。TOEICを知らない企業や学生はほぼいないし、700以上のTOEICスコアを持っている学生はそれだけで英語力において高い評価を得る。通訳や翻訳業務など英語を使う仕事の選考であれば、TOEICのスコアが足切りで設定されても理にかなっているだろう。

たとえ英語を業務で使わない企業であっても、大学生活を通じて継続的に英語の勉強を続け、スコアをアップさせたという経験や実績は評価に値する。それは英語力だけが評価されているのではなく、その能力を向上させるために発揮された計画力や継続力といった基礎力がその経験から培われたと判断できるからだ。その結果をTOEICという社会的認知度と評価を得たツールのスコアとして客観的な数値で示すことができれば、たとえ大学が有名大学でなくても企業はしっかりと評価してくれる。

PROGのような、社会で求められている能力を客観的に可視化できる診断ツールが早く社会に浸透し、どの学生も自分の大学生活で得た経験や能力を客観的な裏付けと共に自信を持ってアピールできる就職活動・採用活動になることを期待している。


<参考>
ジェネリックスキル成長支援プログラム PROG


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