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認知症などに備えるため「成年後見制度」を知っておきたい、制度と注意点とは

認知症などは、親が高齢になれば起こりうることです。その場合、早めに兆候をつかみ、対応策を考えることが大切です。成年後見制度について知っておくとよいでしょう。今回は、成年後見制度の概要や注意点をお伝えします。

舟本 美子

執筆者:舟本 美子

おひとりさまのお金・ペットのお金ガイド

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<目次>
親と離れて暮らしている人で、久しぶりに帰省をした際に親の行動に「様子がいつもと違う?」という違和感を持ったことはありませんか。考えたくないですが「もしかして認知症かも……」と思ったら、早めに専門家の診察を受けましょう。あわせて、成年後見制度について知っておくようにしましょう。

厚生労働省によると、2025年には認知症にかかる人が約700万人と推計されており、今後、成年後見制度を利用する方が増えると予想されます。今回は、成年後見が必要になる場合を考えながら、制度の概要もお伝えします。

出典:認知症の人の将来推計について(厚生労働省)

成年後見制度が必要になる場合とは?

成年後見制度は、認知症などで判断能力が衰えた方の財産管理や日常生活を円滑にするための契約関係のサポートをする制度です。成年後見制度には、次の画像のような4つのタイプがあります。
出典:裁判手続 家事事件Q&A | 裁判所

出典:裁判手続 家事事件Q&A | 裁判所

子どもと離れて暮らす親が認知症になると、日々の生活を細やかに手伝うことができません。そんなとき、近くでサポートしてくれる成年後見人がいれば安心です。成年後見人がどんなサポートをするのか紹介します。

●成年後見人が行うこと1:財産管理
親が高齢で、一人暮らしでも、元気なうちは、生活費や医療費などの支払いを親一人で行えます。しかし親が認知症で判断能力がなくなれば、金融機関は親名義の口座を保護するため大幅な制限をかけ、お金を払い出すことができなくなります。そんな場合、親に成年後見人を立てれば、預貯金の入出金や振込作業を通常通り行えます。

●成年後見人が行うこと2:身上保護
親が介護・福祉サービスを利用したり入所したりするときや、病院に入院したりするときなど、本人意思を確認し契約書にサインが必要になります。しかし認知症になってしまっていたら、契約内容が理解できないため手続きができません。子どもが遠距離に暮らす場合、場合によってはスムーズに対応できないケースもあるかもしれません。そんなとき、成年後見人を立てておけば、速やかに手続きができます。

●成年後見人が行うこと3:詐欺対策・浪費、無駄な契約の防止
認知症で正しい判断能力がなくなっている親に、例えばモノやサービスをすすめる人がいて、不利益な契約であることがよくわからないままに契約を結んでしまうことがあるかもしれません。そんなとき、成年後見人がついていれば、容易に契約をキャンセルすることができます。

成年後見制度を利用するための手順

成年後見制度を利用したいと思ったら、地域包括支援センター、社会福祉協議会、市区町村の相談窓口など地域にある相談窓口にいきましょう。その後、成年後見制度を利用する場合の流れは以下のとおりです。

【申立て】
住所を管轄する家庭相談所に「申立て」します。その際、必要になる書類には次のようなものがあります。
・申立書
・診断書
・申立手数料
・登記手数料
・郵便切手
・本人の戸籍謄本

など。詳しくは、家庭裁判所に用意されている一覧表などでご確認ください。

【審問・調査・鑑定等】
裁判所の職員が、後見人には、誰が適正か「調査」します。また、必要に応じ、裁判官より、事情をたずねられること「審問」もあったり、本人の判断能力について「鑑定」を行ったりします。

【審判(後見等の開始、成年後見人等の選任)】
最も適任と思われる人が成年後見人等に選任されます。選任されるのは、弁護士、司法書士、社会福祉士等の第三者が選ばれることもあります。その場合の報酬は、仕事の内容などを考慮して、家庭裁判所が定めます。

●成年後見制度を申立てするときに必要な費用

画像は、成年後見制度を申立てするときに必要な費用です。
出典:法定後見制度とは(手続の流れ、費用) | 成年後見はやわかり

出典:法定後見制度とは(手続の流れ、費用) | 成年後見はやわかり(厚生労働省)

成年後見制度を利用するときの注意点

成年後見制度を利用するときには、次の2つの注意点があります。

(1)成年後見人はおもに、お金の出し入れのお手伝いや、法的な書類の確認などのお手伝いを行います。細かな日常の世話(食事をつくる、掃除をする、代わりに買い物に行く、話し相手になる)などをお願いすることはできません。

(2)一度、成年後見人制度を利用すると、途中でやめることはできません。利用をする前に、慎重に検討しましょう。

参考:パンフレット0203(厚生労働省)

まとめ

認知症などは、突然発症することもありますが、緩やかに進行することもあります。親が高齢になれば起こりうることなので、兆候を早めにつかむようにしましょう。そうすれば、いろいろな対応策を考えることができます。
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