カラーコーディネート

アンミカの「黒は300色ある」発言は正しい? カラーコーディネーターが解説

タレント・モデルのアンミカさんが、テレビのバラエティ番組で「黒は300色ある」と発言したことが、SNSで話題になっています。黒は本当に300色もあるのでしょうか? 色彩学の観点から解説します!

松本 英恵

執筆者:松本 英恵

カラーコーディネートガイド

2022年夏、タレント・モデルのアンミカさんが発言した「白って200色あんねん」というフレーズがSNSで話題になりました。

その後、2023年1月に放送されたバラエティ番組内で「黒はさすがに1色ですよね?」と問われたアンミカさんは、「黒はすべての色を煮詰めると黒になるので、黒は300色あると言われています」と回答。彼女のコメントはとてもキャッチーで、視聴者を惹きつける魅力にあふれていますよね。

ところで、「白は200色」「黒は300色」というコメントは正しいのでしょうか?

結論から申し上げると、白も黒も300種類を超えるバリエーションがあります。ではなぜ、白よりも黒の方が種類が多いと感じるのでしょうか? 今回はその理由を解説します。

「すべての色を煮詰めると黒になる」の意味は?

絵の具の赤・青・黄色を混ぜるとどんな色ができる?

絵の具の赤・青・黄色を混ぜるとどんな色ができる?

子どもの頃に、絵の具を混ぜ合わせて、新しい色を作ったことはありませんか?

まずは、赤・青・黄色を混ぜるとどんな色ができるのかを見ていきましょう。
  • 赤+黄色=オレンジ
  • 赤+青=紫
  • 青+黄色=緑
  • 赤+青+黄色=茶色
2色を混ぜたときに比べると、3色混ぜたときの方が、暗く濁った色になります。4色、5色、6色と混ぜる色を増やせば増やすほど、その度合いは増します。

絵の具やインキ、フィルターなどは、光を吸収する性質を持っています。そのため、色を混ぜれば混ぜるほど透過率が下がり暗い色になるのです。このような現象を減法混色と呼びます。

補色を混ぜると黒になるって本当?

補色を混ぜると黒になる?

補色を混ぜると黒になる?

補色とは、色相環(色相を環状に配置したもの)の向かい合う2色の組み合わせのこと。この補色同士を50:50で混ぜ合わせると、理論上は黒になりますが、絵の具やインキ、フィルターなどは不純物が混じっているので、真っ黒にはなりません。混ぜ合わせる補色の割合を、45:55、40:60というように調整すると、さまざまな黒を作ることができます。

減法混色の三原色とプロセスインキのCMYK

減法混色の三原色とプロセスインキのCMYK

減法混色の三原色とプロセスインキのCMYK

印刷物は一般的に白い紙から作業を開始するので、減法混色が用いられます。減法混色は、シアン(Cyan)・マゼンタ(Magenta)・イエロー(Yellow)の三原色の混合比によって表されています。

シアン・マゼンタ・イエローを同じ割合で組み合わせると、次の色ができます。
  • マゼンタ+イエロー=赤
  • イエロー+シアン=緑
  • シアン+マゼンタ=青
  • シアン+マゼンタ+イエロー=黒
印刷用のプロセスインキのシアン・マゼンタ・イエロー(CMY)にも不純物が混ざっているため、完全な黒を作ることはできません。そのため、黒(K)を加えた4色が用いられます。CMYKのKは、像の輪郭や細密な暗部を刷るのに用いる黒インキ用の版(Key Plate)の頭文字です。黒インキ用の版を用いることで、より深みのある表現が可能になります。

白よりも黒の方が種類が多いと感じるのはなぜ?

市場の需要やトレンドを考慮した色見本を提供しているパントンが、ファッションやインテリアなどの業界向けに提供している色見本帳(FHI Cotton TCX:綿の布地に染色したもの)には、全2625色が収録されています。そのうち黒は116色(4.4%)、白は32色(1.2%)です。

色見本帳は白い綿の布地を染めて作られています。綿花栽培が普及するにつれて、色むらのない白い綿花を求めて品種改良が進められた結果、白には生成り色、エクリュといった、漂白しない自然のままの色が生まれました。そのため、白は着色しない色=無色という印象があるのでしょう。

また印刷で白を表現したいときも、用紙の地色の白を利用します。絵の具を使うときも、白を使わずに用紙の白を生かすことが多いのではないでしょうか。用紙の白にもさまざまな色があるものの、黒に比べるとその違いが意識されにくいのかもしれません。パントン色見本帳(FHI Cotton TCX)の黒の例

パントン色見本帳(FHI Cotton TCX)の黒の例

一方、色の掛け合わせによってできる黒は、白よりも表現の幅が広いイメージがあります。

黒の色名を見ていくと、アスファルト、メテオリット(隕石)、マグネット(磁石)、グラファイト(黒鉛)、カーボン(炭素)など、鉱物や木材に由来する色名には硬質さや重厚さを、ムーンレスナイト(闇夜)、ナイトスカイ(夜空)、ポーラーナイト(極夜)など、空や夜に由来する色名のものには静けさや広がりを感じます。

またキャビア、ブラックオリーブ、エスプレッソ、ナイトシェード(ナス科の植物)など、食品に由来する色は茶系の黒が多く、苦味がイメージされるでしょう。

その他にも、紫みのある黒、緑みのある黒、青みのある黒など、黒には幅広い色味があります。具体的なものに由来する色名も多く、色や質感などを連想しやすいのも特徴です。

商品の黒は質感が豊か

身近な商品では、アイライナーの黒、クルマの黒などは、定番色として人気があります。競合する商品が多いので、それぞれ色みや質感で独自性を打ち出しています。

例えば、アイライナーの黒は、ブラックという色名が一般的ですが、ノワールとフランス語で表記されている場合もあります。マット、パーリー、サテンなどの質感のバリエーションもあり、同じような黒でも印象の違いを楽しむことができます。

クルマのテクスチャーで多いのはパール、マイカ、メタリックなど。クルマの美しいフォルムが引き立つように、各社が光を反射させる材料を配合し、光と影の対比で差別化しています。色名はブラックマイカ、ブルーイッシュブラックパールといったシンプルなものから、パンサーブラッククリスタルエフェクト、バーニングブラッククリスタルシャインガラスフレークなど、長い色名もあります。

アンミカさんの「白は200色」「黒は300色」というコメントは、「そんなにたくさんあるの?」と意外性はあるものの、「よくよく考えてみると、それくらいあるかもしれない」と思わせる絶妙な数字なのではないでしょうか。皆さんも、身の回りの白や黒に目を向けて、色や質感の違いを楽しんでみませんか?

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