飲酒・アルコール

酔いの自覚がなくても…飲酒後の運転で事故が多発する理由

【脳科学者が解説】飲酒運転による事故は、フラフラになるほど泥酔した人が起こすものだと思っていませんか? それは大きな誤解です。「一杯だけだから大丈夫」「全く酔っていない」「もう酔いが醒めた」……。そういった判断でハンドルを握るのは非常に危険なのです。なぜ一滴でも飲んだら、酔いの自覚がなくても運転してはいけないのか、わかりやすく解説します。

阿部 和穂

執筆者:阿部 和穂

脳科学・医薬ガイド

「全く酔っていないから大丈夫!」 それでも飲酒運転が危険なのはなぜか

飲酒運転はなぜ危険なのか

「ちょっとだけなら、一杯だけなら平気」は通用しない!

「ちょっと一杯飲んだくらいなら平気さ」
「少し飲んでおいたくらいの方がいい」

こんな言葉を口走り、飲酒運転をする人がいます。本人は全く酔っていないと思っているのかもしれませんが、これはとんでもない勘違いです。こういう無知で身勝手な人がいるために、飲酒運転による死亡事故が今なお絶えないのです。

もし泥酔するほど飲んだ場合、感覚や運動に障害が起きます。この状態の運転が危険なのは当然ですが、泥酔時は車を動かすこと自体が、まず難しいことだと思います。一方で、そこまでの深酒ではなく「ほんのちょっと飲んだだけ」、あるいは「そろそろ酔いが醒めてきたから」と車を運転するのは、もっと危険であり、悪質なのです。その理由をわかりやすく解説しましょう。
 

「お酒を飲むと頭が冴える」は危険な錯覚……メタ認知力を失い、判断も異常に

お酒を少し飲むと、心と体の緊張がとれるため、頭が冴えてくるような感じがします。「一杯ひっかけておくと仕事がはかどる」などと言う人がいますが、それは当人の錯覚に過ぎません。「ちょっと飲んだ方がうまく運転できる」というのも同じで、単なる錯覚です。

お酒を飲み始めると、脳の中で最初に前頭前野が麻痺され、感情や行動のコントロールができなくなります。「抑止力が働かない」というのは、非常に危険なことです。「少しくらいスピードを出しても平気」「どうせ夜道なんて誰も歩いていない」「信号無視しても平気」などと考えるようになり、自ずと無謀な運転になります。おまけに、前頭前野が麻痺して判断力が低下すると、本人は「自分はしっかりしている」と思い違いをしてしまうため、自分の異常にまったく気づかなくなってしまうのです。

酔っぱらいに「そんなに飲んで大丈夫?」とたずねると、たいてい「ぜんぜん平気だよ!」と答えますが、明らかに平気じゃないですよね。酔うと自分の異常を認めることができなくなる、つまり「メタ認知力」(参考:「メタ認知とは何か…認知症の本質とも言える「メタ認知の障害」」)が失われてしまうということを忘れてはなりません。
 

「一滴でも飲んだら、ハンドルは握るな」

今あなたがお酒を飲んでいない状態なら、心と体が暴走しやすい状態であることを自覚できずに車を運転したら、何が起きうるか想像がつくでしょう。万が一、「ちょっと一杯飲んだくらいなら平気」という考えがどこかにあるならば、今すぐに考えを改めてください。また、周りにそういう人がいたら、とくと言い聞かせてください。運転をしても大丈夫かどうかは、飲酒の量ではありません。「一滴でも口にしたら、絶対にハンドルを握るな」ということを徹底して伝えてください。
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