中学受験

「父親監修」の大量の課題や叱責で“答えを写す”ように…「中学受験」の勉強以前に親子関係が問題です

中学受験の場合、その当事者はまだまだ親の介入が必要な小学生。親が時間も労力もかけているのに、子どもの成績は伸びていかないどころか、親子間でバトルが勃発して険悪ムードになりがちです。子どもが安心して中学受験にチャレンジできるようにするためには?

宮本 毅

執筆者:宮本 毅

学習・受験ガイド

中学受験の場合、その当事者はまだまだ親の介入が必要な小学生。自分を律して遊びを我慢したり、計画を立てて勉強をやり進めたりするのが難しいため、どうしても親が学習管理をしなければならず、結果、親子バトルも勃発しがちです。

今回はAll About編集部で募集した中学受験エピソードの中から、「父親監修」のプレッシャーによりお子さんが答えを写すようになってしまったご家庭のケースと、中学受験経験者の母親が「親塾」をしながら受験に挑もうとされたご家庭の2つの事例をご紹介しながら、親の適切な介入、親子の距離感について考えていきたいと思います。
 

事例1:父親からの大量の宿題、叱責…… 息子は“答えを写す”ように

難しい算数、父親からの大量の課題、叱責などが重なり答えを写すように……

父親の過干渉により、答えを写すように……

●相談者プロフィール
相談者:母48歳(東京都)
家族構成:夫53歳、長男11歳

●エピソード
中学受験を始めたきっかけは、小4のときにクラスになじめず「学校に行きたくない」と訴えるようになったから。引っ込み思案で内弁慶、思いを言葉にするのが苦手な息子は、友だちと打ち解けるまでに時間がかかり、いじられやすいタイプでした。似たような子がいる穏やかな校風に進学させたいと思い、中学受験を始めました。

4教科の中でも算数に一番時間をかけているのですが、時間の割に成績が伸びません。そして難しい算数に加え、父親からの大量の課題、叱責、削られる睡眠などが重なり、ついに息子は、問題の答えを写すようになってしまったのです。すぐばれては怒られる、反省文を父親に書かされる、というようなことが暫く続き、「これでもう最後」というときにやはり答えを写してしまい、ばれて父親は大激怒。息子も反抗してしばし口論になったのですが勝てるわけもなく、よっぽど溜めこんでいたのか、ついに父親に暴力を振るったのです。

「父親監修」の中学受験、集団塾の雰囲気など、色々と重なって子どもが振り回されているように感じ、主人にこのよくない状況を相談したのですが、聞く耳をもちません。そのため私が何度か塾長との面談で状況を相談。この塾は集団と個別の両方開講していたため、個別指導の方の塾長にもお話ししてそちらに移り、子どもの進度に応じて学習を進めてもらうことにしました。
 

親子の距離が近すぎるのは危険、上手に「塾との共同管理」を

親が時間も労力もかけているのに、どうしても子どもの成績が伸びていかない、中学受験をされているご家庭の多くがこのお悩みをお持ちかと思います。時間や労力をかければかけるほど、成果が出ないと余計にイライラが募ったり強い不満を感じたりして、子どもに強く当たってしまうものです。親御さんの心情をお察しするに余りあるものがあります。

この事例の場合はお父さんと子どもの関係でしたが、同様のケースはお母さんと子どもの関係でも充分起こりえます。このような問題の解決には、親子の間に一定の「距離感」を保つことがとても重要です。

この事例においても、お父さんとお子さんをいったん引き離すために、上手く塾に間に入ってもらうように働きかけ、また集団指導から個別指導に切り替えられたようです。学習管理も親が全面的に責任を負うのではなく、塾との共同管理がしやすくなるようにしました。結果、親子間にも適度な距離感が生まれ、受験勉強においても好影響を与えていくのではないかと思います。
 

事例2:中学受験“経験者”の母親が自宅で教えていたが、お互い苦痛に……

「中学受験経験者」の母親が家で教えることになったが、お互いに苦痛に……

中学受験経験者の母親が自宅で教えていたが、お互いに苦痛に……

●相談者プロフィール
相談者:母43歳(東京都)  
夫47歳、長女10歳

●エピソード
中学受験を始めた理由は、公立中の内申回避のためです。小3の2月頃から四谷大塚の教材「予習シリーズ」を使って、中学受験経験者の私が家で教えることになりました。

しかし次第に、お互いに苦痛に……。特に算数の学習では明らかにやる気を失っている状態で、勉強以前に態度が悪くて険悪ムードになることが増えました。「親塾」の限界を感じ「通塾」に切り替えねばと思ったタイミングが、ちょうど4年生の夏期講習の時期だったので、2学期から入塾。親が勉強を教えられる内容でも、塾の先生など第三者から教わった方が素直に聞く時期になったのだなと痛感しました。

ときどき「塾なし中学受験成功ストーリー」の本などを見かけることがありますが、我が家の場合は上手くいきませんでした。
 

「親塾」自体は悪でないが、「塾なし中学受験成功ストーリー」は特殊例

子どもが塾の宿題などをやるとき、どうしても自分一人では解決できないことがあります。そんなときに家族の誰かが指導できると受験生自身にとっても、塾の先生にとっても、とても助かるものです。ですから「親塾」自体が悪いわけではありません。

では一体、何が問題なのでしょう。本来「親に反抗する」というのは、子どもの精神的自立には不可欠といわれます。ですから親塾の際に子どもが反発してくるのはむしろ「喜ばしいこと」として捉える必要があります。指導中、もし反抗的な態度をとってきても、親は一段高みに立って事態を俯瞰し、イライラしたりしない心がけが大切です。そのためには子どもと同じ土俵で「何なのその態度は!」と怒りをぶつけるのではなく、「おっ、じゃあここから先は任せた!」と言って自分で考えさせてみてはいかがでしょう。その方が一から十まで教えてしまうよりも、成績は伸びていくかもしれません。

また、ときどき「塾なしで中学受験に合格した」という成功ストーリーを見聞きすることがありますが、皆さん気をつけてください。世の中の全員が「100%成功する秘術」というものは存在しません。どんな方法論であっても、それで成功する人もいれば上手くいかない人もいる。ダイエット法だってそうですよね。ですから、一つの方法論を妄信するのは危険です。こういった成功ストーリーは参考になりそうな部分だけを参考にして、あとは「こういう特殊例もあるのね」という程度にとどめておくのがよいでしょう。

こちらのお母さんご自身が中学受験経験者ということで、暫く「塾なし」で勉強を教えられていたとのこと。しかし通塾に切り替えて、塾という第三者の大切さを痛感されています。結果、親子関係だけでなく、その後の成績にも好影響を与えていくのではないかと思います。
 

子どもが安心して中学受験にチャレンジするには

中学受験でもなんでもそうなのですが、子どもが安心して何かにチャレンジしたり努力したりするときに必要なことは、良好な親子関係でしょう。親子関係が健全であるご家庭ほど、中学受験は成功しやすいものです。

健全で良好な親子関係をつくる上で大切なのは、親が過保護や過干渉にならず、適度な距離感を保つことだと思います。そのためにも、1つ目の事例のように塾を上手に使って共同管理できるように働きかけたり、2つ目の事例でアドバイスしたように、親子関係を一歩高みから俯瞰して見て、ときには思い切って子どもに任せてみることをおすすめしたいです。

そうすることでイライラを軽減でき、ご家庭内が明るくなれば、子どもも安心して中学受験にチャレンジできる環境が整うのではないでしょうか。
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