昨年一戸建てを注文住宅で建て、総額7350万円のローンを組みました
皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回のご相談者は、3人目の子どもを持つことが、家計的に可能かを聞きたいという42歳の会社員女性です。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。子ども3人でもお金は足りる?
■相談者
ばーみさん
女性/会社員/42歳
東京都/持ち家(一戸建て)
■家族構成
夫(41歳)、子ども2人(2歳・0歳)、義父(69歳、半年後に別居予定)
■相談内容
お聞きしたいのは、年齢・家計的に3人目の子どもを持つことは可能かどうかということです。
夫婦ともに比較的給与は高いのですが、これだけ給与をいただけるようになったのはここ5~6年のことです。特に私は海外での学位取得や1人暮らしが長かったため、結婚前の家計は火の車でした。そのため子どもを授かったのも高齢です。
住宅費は、昨年一戸建てを注文住宅で建て、総額7350万円のローンを組みました。5000万円くらいに抑えるつもりだったのですが、場所へのこだわりや、夫婦ともに書斎が必要、子ども部屋、義父の部屋など、いろいろと積み重なり高額になりました。ただ、夫婦ともに家で仕事をすることが多く、家の居心地は大変重要なので、後悔はしていません。今後、夫のボーナスはすべて繰り上げ返済に充てていき、第1子が15歳になる時点で完済を目指しています。
義父は半年後に別居予定です。
被服代や化粧品代などはあまりかからない家族ですが、旅行と食が楽しみなので、そこにお金がかかります。
不妊治療でできた受精卵が数個残っていて、年齢的にもあと数年の間に移植するか破棄するか考えなくてはなりません。子ども2人は、私たちが定年を迎えるぎりぎりの時点までで大学を卒業させてやれると思うのですが、もしも3人目となると上2人と同じだけのことをしてやれるのか、悩みます。
教育費を惜しむことは考えたくありません。住宅ローンの返済も頑張らなくてはならないですし、2人を大事に育てるのがよいのかな、とも思います。しかし残っている受精卵を破棄するのは本当に苦しいです。もちろん、移植しても授かれない可能性もあるのですが、授かった場合の見通しを知りたいと思っております。
■家計収支データ
■家計収支データ補足
(1)ボーナスの使い道
ボーナスの使い道は、ローンの繰り上げ返済300万円、レジャー費20万円、普通預金補てん30万円、共済積立貯金10万円、家計補てんで15万円等。今後、基本的に夫のボーナスは繰り上げ返済へ、私のボーナスは貯蓄や家計の補てんに使う予定です。
(2)貯蓄について
毎月の貯蓄額は25万5000円ほど。収支がマイナスになっても、ボーナス時に補てんすることで普通預金の残高を維持する形でやってきました。
(3)家計収支について
義父からの10万円を家賃として入れてもらい、そのまま食費に消えているという感じです。ですが、ちょっと油断すると雑費や外食などでマイナスになる月があります。別居後には10万円はなくなります。
(4)住居費について
・購入年/2021年
・購入価格/土地3900万円(うち、2000万円が義父より援助あり。住宅などの特例により免税)+住宅5800万円
・ローン借入額/7350万円
・借入金利/0.45%(変動金利)
・返済期間/35年
・毎月返済額/18万3667円
・団体信用生命保険加入
※返済は毎月返済のみ。最近300万円繰り上げ返済をし、今後も毎年ボーナスから300万円は繰り上げ返済、残高が2000万円程度になる頃には、一括での残高繰り上げ返済をしたいと思っております。固定資産税は、再来年までは27万2400円、その後はそれプラス6万8900円。火災保険は10年ごと契約で50万円程度を昨年払いました。今後10年ごとに同程度の金額が必要になってくると思います。
(5)自動車について
所有台数は1台です。1万5000円は保険料とガソリン代です。現在の車は購入して3年目で、子ども2人だけであれば10年は乗ろうと思っています。第1子が小学校3年生~4年生の時、または3人目の可能性が出てくれば買い換えという感じで、予算は300万円程度です。
(6)教育費、子どもの進路について
教育費は、保育料(認可保育園ですが2人で10万円かかります)+第1子の習い事1万円+ベビーシッター代6万円です。ベビーシッターは贅沢なのかもしれませんが、休みの日にスキルアップのための勉強時間を確保する必要があり、必要な出費だと思っております。保育料は来年から第1子分7万円ほどが無償化の対象となり減る予定、もしも3人目を授かれば3人目は0円です。
小学校は私立は考えておらず、公立もしくは国立。可能であれば中学まで国立で、高校で留学コースのある私立(国立が無理な場合は、小学校まで公立、中学からは私立という可能性も)。大学については、国内であれば国立私立どちらでもいいのですが、国外に出たいと言い出した場合は、授業料に関しては自力で奨学金を取ってこれるようなレベルであれば生活費などは援助するという方針です。また、留学については、本人がしたいと言い出した時にお金の心配なく行かせてあげたいと思っております。
(7)加入保険について
夫/
・共済(病気死亡100万円、入院6000円)=毎月の保険料2000円
相談者/
・生命保険(死亡保障2000万円、入院、医療特約付)=毎月の保険料1万円
*住宅ローンは夫のみの名義です。現在の家計は夫婦2人が元気に働いていることが前提ですので、私に万が一のことがあった場合に備えて私に生命保険をかけました。
・共済(夫と同様)=毎月の保険料2000円
(8)働き方について
定年は夫65歳、相談者63歳です。定年後も何らかの形で仕事を続けていきたいと思っています。
(9)公的年金について
私は成人してから10年近く国民年金保険料の免除の手続きをしています。30代半ばで常勤の職についてから、厚生年金の保険料が給与から天引きされています。夫も同様で30代後半で常勤の職につきました。
■FP深野康彦の3つのアドバイス
アドバイス1 3人目が生まれても、教育費はぎりぎり捻出可能
アドバイス2 ボーナスは繰り上げ返済ではなく貯蓄が優先
アドバイス3 60歳以降も働いて、公的年金をカバーしていく
アドバイス1 3人目が生まれても、教育費はぎりぎり捻出可能
今後、大きな出費となるのは、お子さんの教育費と住宅ローンの返済です。3人目を迷っておられるとのことなので、まずはお子さんが3人になった場合の教育費について、考えていきましょう。義父からの10万円がなくなると、そのほかの支出が変わらなければ毎月の貯蓄額は16万円ほどになります。年間で192万円です。60歳になるまでの18年間で継続して貯蓄できれば3456万円になります。これに現在の金融資産1710万円を加えると、5166万円です。ここから3人の教育費をまかなうことになります。高校から私立の可能性を考えると、1人1500万円、3人で4500万円です。金融資産の残りは666万円となります。
ただし、3人目の出産の育休などで貯蓄ができない時期があります。毎月の貯蓄で貯めた金融資産は、教育資金でギリギリという可能性はあるでしょう。でも、教育費は奨学金などを借りることなく、貯蓄から捻出できますので、ひとつの判断材料にしてください。
アドバイス2 ボーナスは繰り上げ返済ではなく貯蓄が優先
先の試算では、ボーナスからの貯蓄を入れていません。ご主人のボーナスは住宅ローンの繰り上げ返済に回すとのことですが、教育費の確保が優先と考えると、住宅ローンの繰り上げ返済を第1子が15歳になるまでに完済することの意味がわかりません。2人で440万円のボーナスが見込まれるなら、90万円はもろもろの用途に使い、残り350万円は貯蓄するように考えてはいかがですか? 60歳までの18年間で6300万円になります。毎月の貯蓄が教育費のためであるとしたら、この6300万円は住宅ローンの一括繰り上げ返済の原資であり、夫婦の老後資金となります。もちろん、教育費が予想外にかかることも考えられます。そうした時のために、ボーナスからもしっかりと貯蓄をしていってほしいと思います。
仮に、教育費は毎月の貯蓄でまかなうことができたら、60歳で住宅ローンの一括返済を考えます。おそらくその頃の残債は4500万円ほどになっていると思われます。残りは1800万円となり、これが2人の老後資金となります。
第1子の教育費7万円が削減され、3人目はゼロということであれば、現在、家計に計上している教育費7万円は貯蓄に回すことができます。年間で84万円。18年間で約1000万円です。もしも留学することになった場合のバッファーと考えておかれるといいでしょう。
毎月の貯蓄とボーナスからの貯蓄を分けて説明しましたが、現状の家計であれば、年間540万円の貯蓄ができる世帯収入があるのです。18年間で9720万円。これをどう使うかは夫婦の考え方ひとつです。
ただ、優先すべきは、3人の子どもの教育費であることは忘れないでいただきたいと思います。
アドバイス3 60歳以降も働いて、公的年金をカバーしていく
60歳時点の金融資産がどのくらい残っているかは、教育費次第となります。60歳以降も働け、住宅ローンの返済がなくなれば、生活コストはかなり下げることができますから、生活していく分には困ることはないでしょう。ただ、公的年金については、未納期間などがあるため、年金を増額させる必要があります。65歳以降もなんらかの形で収入を得ることができれば、公的年金の不足分をカバーすることができるでしょう。また、生活コストについても、もう一段の引き締めが必要になることも覚えておいてください。
最後に保険についてです。ご主人は住宅ローンの団信があるからとのことですが、団信は住宅ローンの残債が保障されているだけで、万一の場合の生活費については不足してしまいます。死亡保障2000万円、保険期間20年で新規加入してください。ご相談者が加入している保険と同様なタイプです。保険料は6000円ほどで済むはずです。ご相談者が死亡保障を確保できているのは安心しましたが、医療特約をつけているのは、共済と重複しています。特約は不要です。これで保険料はもう少し抑えられるはずです。
現時点での試算では、悠々自適な老後は難しいとしても、生活に困ることはなく、車の買い換えなどの出費があっても対応できると思われます。どうか、お子さんの教育費を優先して貯蓄プランをご夫婦で相談してみてください。
相談者「ばーみ」さんから寄せられた感想
このたびは、深野先生からのアドバイスをいただき、大変うれしく思います。ありがとうござました。丁寧で的確なお言葉に、感謝の気持ちでいっぱいです。3人目を授かっても、なんとか大丈夫という試算が出たことで、3人目に向けて前向きに動いていってもよいのだと、ほっといたしました。ローンの繰り上げ返済よりも、教育費の貯蓄が最優先ということを、改めて夫婦の共通認識として家計を考えていこうと思います。家族の保険もいただいたアドバイスの通り見直しいたします。※マネープランクリニックに相談したい方はコチラのリンクからご応募ください。(相談はすべて無料になります)
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教えてくれたのは……
深野 康彦さん
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金まわり全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。著作に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など
取材・文/伊藤加奈子