演じることが大好き。楽しくて仕方がない!
――広瀬さんの俳優キャリアについてお伺いしたいのですが、まず、演じることの喜びはどういうところにありますか?広瀬:私は演じることが好きで、楽しくて仕方がないんです。ひとつの役にどっぷり浸かって、一緒に生きるのが喜びです。自分と違う性格であるほど、やりやすくて、新しい世界を発見できます。
少し前までお休みをいただいていたのですが、やはり演じていないと、空っぽになっている感じがありました。それまでは「次はこの役、その次は……」と役と共に生きてきたので、お休みしたことで、改めて俳優の仕事の楽しさ、役をいただくことのありがたさ、役と生きる喜びを実感しています。
――先ほど、自分と離れたタイプの役の方がやりやすいとおっしゃっていましたが、それはなぜでしょうか?
広瀬:振り切って演じられるからです。演技のやり方は俳優によって違って、役を自分に引き寄せる人もいれば、その役に入っていく人もいると思います。正解はないのですが、私は自分を捨てて、役に入っていく方が好きです。だから自分と似た感じの役だと、演じ分けに苦労します。
でも、自分とは違うぶっ飛んだ役で、見た目からガラリと変えてしまうのも楽しいと思いつつ、等身大の役を試行錯誤しながら作り上げていくのもやりがいはあります。私はお芝居が大好きなので、もうひとりの自分だと思って、どんな役でも楽しみながら演じていきたいです。
『わろてんか』と『銀の匙 Silver Spoon』が教えてくれたこと
――広瀬さんにとってターニングポイントになった作品、役はありますか?広瀬:連続テレビ小説『わろてんか』(2017~2018/NHK)で演じたリリコです。長期にわたって付き合った役ですし、すごく濃い時間でした。芸能界を描いたドラマなので、リリコは芸事に挑戦することが多く、お稽古もたくさんしました。
演じた役にはすごく愛着があるので、チャンスがあればもう1回演じたいと思ったりするのですが、リリコに関しては「やり切った!」という思いが強いので、もう1回はないです。私にとって、そう思える役は唯一リリコだけです。
あの役は、私自身、女優生命を懸けて演じたところもありました。リリコが成功しなかったら、女優を辞めてもいいくらいの気持ちだったので。だから全力で「絶対に楽をしようと思うな、自分!」と、自分自身を鼓舞しながら演じていました。 ――確かに『わろてんか』のリリコは、広瀬さんの演技力を世に知らしめた役ですね! では、映画でターニングポイントになった作品はありますか?
広瀬:どの作品も今の私を作ってくれたのですが、演技をする大変さを実感させてくれたのは『銀の匙 Silver Spoon』(2014)です。
あの映画は、2カ月半、北海道で撮影していたのですが、夏にみんながプールや海へ遊びに行っているときに、私の隣には放牧された牛がいて「私はここで何をやっているんだろう」と思っていました(笑)。でも「役を生きる」ことはどういうことかを教えてくれましたし、俳優としての土台を作ってくれたのは『銀の匙 Silver Spoon』です。 ――俳優としての将来について、目標にしていることはありますか?
広瀬:私、先のことは決めないタイプなんです。子どもの頃から「将来の夢は分からない」と言っていたので、学校の先生は変わった子だと思っていたかも(笑)。
目標を決めてしまうと、その途中で絶対に壁にぶつかったり、挫けそうになったりするじゃないですか。目標と実力のギャップに苦しんだりして。そうすると、俳優の仕事が嫌になってしまうかもしれない。
演技することが大好きなので、先のことは決めず、自由でいたい。今できること、やりたいことを大切にしながら、俳優のお仕事に全力で取り組んでいきたいです。
女性がカッコよく活躍する映画が好き!
――All Aboutは映画に関するテーマも扱っているので、観た映画で好きな作品、影響を受けた作品を教えていただきたいです。広瀬:シェールとクリスティーナ・アギレラが共演した映画『バーレスク』(2010)です。この映画は俳優の松方弘樹さんと共演したときに「女性が輝いていくプロセスを観てほしい。きっと、今後の参考になると思うよ」とオススメしていただき、観たらすごくハマリました。とにかく女性が美しく、カッコいいんです。 当時、まだレンタルビデオで見る時代だったので『バーレスク』を借りて、1週間後、一度返却して、また『バーレスク』を借りて……と繰り返し観ていたら、母が見かねて買ってくれました(笑)。サントラも持っていますし、今でもよく観ています。
――成功への道と才能の輝きが描かれ、クリスティーナ・アギレラが素敵でしたね。
広瀬:私は女性がカッコよく活躍する映画が好きなんです。『七人の秘書』も女性たちがカッコよくて、大活躍する作品なので、すごく私好み! だから出演できて光栄ですし、たくさんの方に観ていただきたいです。
撮影・取材・文/斎藤 香
ヘアメイク:宮本愛(yosine.)
スタイリスト:梶原浩敬(Stie-Lo)
広瀬アリス(ひろせ・ありす)さんのプロフィール
1994年、静岡県生まれ。数多くのドラマ、映画に出演。ドラマでは『釣りバカ日誌~新入社員 浜崎伝助~』(2015/テレビ東京)、連続テレビ小説『わろてんか』(2017~2018/NHK)、『ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート』(2019/フジテレビ)、『七人の秘書』(2020/テレビ朝日)、『知ってるワイフ』(2021/フジテレビ)、『恋なんて、本気でやってどうするの?』(2022/フジテレビ)。映画では『銀の匙 Silver Spoon』(2014)、『氷菓』(2017)、『巫女っちゃけん。』(2018)、『地獄の花園』(2021)など。最新情報として、2023年スタートのNHK大河ドラマ『どうする家康』への出演が決まっている。『七人の秘書 THE MOVIE』
2022年10月7日(金)より公開監督:田村直己
脚本:中園ミホ
出演:木村文乃、広瀬アリス、菜々緒、シム・ウンギョン、大島優子、室井滋、江口洋介、玉木 宏、濱田岳、吉瀬美智子、笑福亭鶴瓶
主題歌:「Final Call」milet Sony Music Labels
(C)2022「七人の秘書 THE MOVIE」製作委員会