お金の悩みを解決!マネープランクリニック/早期リタイア・セミリタイアしたい人のお金の悩み相談

48歳貯金4400万円。外国籍の夫が体調を崩しました。母国に帰り早期リタイアを希望

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回のご相談者は、48歳の会社員の方。外国籍のご主人が体調を崩してしまい、早期リタイアを検討中。できれば、ご主人の母国に夫婦で戻りたいと考えていますが、資金の面で不安も……。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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夫の母国での老後生活、資金的に大丈夫でしょうか?

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回のご相談者は、48歳の会社員の方。外国籍のご主人が体調を崩してしまい、早期リタイアを検討中。できれば、ご主人の母国に夫婦で戻りたいと考えていますが、資金の面で不安も……。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。
夫が体調を崩し母国に帰ることを考えています

夫が体調を崩し母国に帰ることを考えています


■相談者
マカロンさん(仮名)
女性/会社員/48歳
神奈川県/賃貸住宅

■家族構成
夫(会社員/51歳)

■相談内容
子どもはおらず夫婦二人で若い時から貯蓄をしていたので(というより忙しすぎてお金を使う時間も体力もなかったと言った方が近いですが……)、ある程度資金はあり、あまり不安は感じていなかったのですが、このコロナ禍で主人が体調を崩したことから早期リタイアを検討しています。

主人は外国籍で日本が大好きですが、このコロナの影響もあり母国に帰ることが何年もできていません。そのせいもあると思うのですが、大好きな職業でもあるにもかかわらず仕事自体が嫌いになってきています。私としてはできればもうリタイアをさせてあげて、今まで長く私のために日本に住んでくれていたので、残りは母国に帰らせてあげて家族との時間を持たせてあげたいと思っています。

ただ、それが現実的に可能なのか、今すぐが無理であればあとどれくらい頑張ったら可能になるのか知りたくて応募しています。

独自にネットのシミュレーションツールなどを使い計算をしてみたところ、来年二人とも退職をし90歳くらいまでの人生としたら、贅沢をしなくても老後資金が足りないのでは……と不安になっております。

年間にかかる必要経費(家賃や光熱費、通信費、食費など最低限必要な費用)、私と主人がそれぞれ個人的に使える費用、突発的に必要な費用(医療費含む)等を、手持ち資金+年金から引いてみると7500万円以上足りません。

コロナ前は、2~3年に一度、夫の母国へ帰郷していました。フルリタイアができた場合、本人の希望もありますが、しばらく日本在住、1~2年に一度帰郷したい。人生の最期を迎えるのは日本か主人の母国かはまだ決めていません。そのため家の購入はあまり考えていないのですが、いっそ購入した方がよいのでしょうか。

年金は、今から半年以内に退職をした場合、主人は60万円ほど、私は80万円ほどのようです。主人には来日当初に年金未加入の期間があります。早期退職をした場合、国民年金を払い続ければ少し金額も増えるのでしょうか……。また海外からも国民年金を払い続けることができるのでしょうか。

ご面倒おかけいたしますがよろしくお願いいたします。

■家計収支データ
相談者「マカロン」さんの家計収支データ

相談者「マカロン」さんの家計収支データ


■家計収支データ補足
(1)ボーナスの使い道について
とくに何に使うとは決めておらず、余れば貯蓄に回る。コロナ以前、夫の母国へ帰っていた時は渡航費用他で1回30万~50万円、相談者の帰省には5万円(ともに2人分)。

(2)小遣いについて
相談者の使い道は被服代、コンサート、友人との交際費など。家電などの大きなものは夫と折半。とくに必ず使うわけではなく、あくまで予算として、基本生活費とは別にしているという認識。現状は余ることが多く、自然に貯蓄口座に貯まる。夫の使い道は不明。

(3)収支について
少なくとも10万円以上は貯蓄すると決めているが、多い時は20万円ほどになる。とくにコロナ禍で支出が減ったとのこと。

(4)夫のフルリタイアについて
●希望時期
時期としては、気持ちは「今すぐにでも」だが、現実としては1年後(2023年の年内いっぱい働いて)に退職。その後、可能ならフルリタイアの予定。

●フルリタイア希望の理由
相談者コメント「主人は過去に一度休職していますが、体調が回復し復帰したら、結局前の状態に戻ってしまいました。これは主人ではなく、私の考えですが、少なくとも日本ではもう仕事は無理だと思います。働かなくても、贅沢をしなければ生きていけるのではという思いです。アルバイトや負担のかからない仕事をという考えもありますが、日本語がさほど話せるわけではないので、簡単には仕事は見つからないと考えています」

(5)ご主人の健康状態について
精神的な疾患のため、仕事(激務)からは離れることが健康につながるとのこと。現在、診察と投薬で月3000円ほど。

(6)相談者の働き方
可能であれば、夫と同じ時期に合わせてフルリタイアを希望。

(7)退職金について
夫はなし。相談者は、多少は出るようだが、正社員になって間もないため、ないものと考えている。

(8)帰国について
現状(夫が仕事に就いている場合)は2~3週間。退職後(フルリタイア)は、3~6カ月の長期滞在。基本、帰国は相談者も同行し、ゆくゆくは移住を想定。

(9)移住となった場合
賃貸か購入かは未定ながら、現在の日本での生活費程度で、住居も含めて生活費全体をカバーできると漠然と考えている。ただし、しばらくは夫の親と同居となる。都市部ではないので物価は高くないと考えています。相談者は若い頃から海外生活の経験があり、移住には不安はない。
 
■FP深野康彦の3つのアドバイス
アドバイス1 国内にいる間は妻の収入だけでやりくり
アドバイス2 「用意できる老後資金で過ごす」という発想を
アドバイス3 事前に年金事務所で確認、相談をしておく
 

アドバイス1 国内にいる間は妻の収入だけでやりくり

ご相談、拝見しました。

まずはご主人の健康が最優先となります。もっとも近くにいるマカロンさんが「もうリタイアさせてあげたい」という状態ならば、一刻も早く退職されるべきです。そして、マカロンさんが希望されているとおり、退職後は国内では働かず、フルリタイアし、健康回復に専念する。あわせて、ご夫婦で母国に戻る準備を進めていかれればいいと思います。

ご心配の資金面ですが、設定として、母国に移られる時期は早くて1年後、長ければ数年後でしょうか。ともあれ、その間の収入はマカロンさんだけとなります。データにある生活費が今後変わらなければ、月6万円程度の赤字ですが、小遣いとして計上されている10万円は、コロナ禍もあり、使い切ることはないとのことですから、ボーナスも加えれば、年間の収支は赤字とはならないでしょう。あるいは多少貯蓄ができるかもしれません。

逆に言えば、ご主人がリタイア後、できるだけ家計で赤字を出さないことが重要です。もしも、マカロンさんも同時にフルリタイアされると、その間の生活費は丸々、貯蓄を取り崩すことになります。仮に月25万円でも年間300万円。3年間なら900万円。これは資金的に大きな痛手となります。

現在、まとまった貯蓄がありますが、これはいわばマカロンさんたちの今後の生活を支える重要な資金。今後、収入面についてはまったくの未定です。働きたくても働けない時があるかもしれません。そう考えれば、国内にいる間は、できるだけ手持ち資金を減らさない、つまりマカロンさんが仕事を継続することが大事なポイントとなります。もちろん、ご主人のケアに時間を割く必要もあるでしょうが、できるだけ現在の収入をキープしてほしいと思います。

もし、マカロンさんの収入だけで生活費を捻出でき、手持ち資金の取り崩しがないとします。であれば、国内にいる間は、現在保有する金融資産4400万円は維持できます。ただし、母国に移り住むための準備資金は、別途必要でしょう。ご主人だけ(あるいはご夫婦で)一時帰国する場合の渡航費用、母国での新生活の費用、などを合計して、ざっと200万円とすれば、手元に残る資金は4200万円ということになります。
 

アドバイス2 「用意できる老後資金で過ごす」という発想を

そもそもマカロンさんが将来を不安に思う根拠は、ご自身で試算されたリタイア後の生活費、老後資金が、手持ち資金+年金では足りないということからです。
 
試算内容は、年間の生活費320万円×42年間=1億3440万円。これを保有する金融資産と年金でカバーするには、7500万円以上足りないとのこと。ただし、この計算は、現時点(ご主人51歳、マカロンさん48歳)でともにフルリタイアとなり、同じ生活費が40年以上継続して発生することを想定しています。しかしその設定、条件で試算すれば、マカロンさんに限らず、ほとんどの世帯でお金は大きく足りないでしょう。

マカロンさんも、ご主人の母国に移住し、どういう生活を送るかはほぼ手探りの状態かと思います。それでも、まずは収入を得ることを前提に家計を組み立てる必要があります。これはどこの国で暮らそうと、同じことです。

とくに、ご主人がどういう働き方ができ、どの程度収入を得ることができるのか。今度はご主人の地元なのですから、まずは日本でしっかり体調を戻して、母国では可能な範囲で頑張ってもらうことが、ご夫婦のマネープランには欠かせません。生活に慣れてくれば、マカロンさんも収入を得られるよう考えることも必要です。

もし、移り住んだ後、平均30万円の世帯収入が確保できれば10年間で3600万円。これだけで、マネープランは大きく変わってきます。

同時に、生活費を想定すること自体、生活環境が大きく変わりますから、かなり難しいと思います。少なくとも、実際に母国で生活を始めて、1年か2年は暮らさないと見えてこないのではないでしょうか。自宅を購入すべきかどうかについても、生活が落ち着くまでは、判断できないでしょう。

そして、ご相談を読んで感じるのは、老後をあまりに心配し過ぎるのは、マカロンさんやご主人の人生にとって、かえってマイナスの面が強いのではということ。不安が増大して、ストレスになって、ただ将来を思い悩むだけの日々を過ごすことが、精神的にいいとはとても思えません。ましてや、備えがまったくないというのではなく、現時点で4000万円超の貯蓄があって、ローンは一切ない上での不安です。

確かに、老後に必要な資金について認識しておくことに意味はあります。しかし、誤解を恐れずに言えば、足りないなら足りないなりに、その老後資金で送れる老後を送る。少なくとも、今のマカロンさんにとっては、それがもっとも無理がなく、健全な発想ではないでしょうか。

もちろん、働ける環境にあるならなら年齢に関係なく働く。私は、老後はできるだけ細く長く働くことが望ましいと考えますが、結果的にそうやって用意した資金の範囲内で生活する。足りない部分は、創意工夫でカバーしていく。それでも、ご夫婦なりの豊かな老後生活はきっと送れると、私は思います。
 

アドバイス3 事前に年金事務所で確認、相談をしておく

最後に公的年金について。

これまで加入されてきた日本の年金についての継続等については、ご主人とマカロンさんのそれぞれの国籍で大きく異なります。

日本国籍であれば、住所(住民票)が日本国内になくても、継続して国民年金保険料を任意加入という形で支払い続けることができます。払い続ければ、当然、受け取る年金の金額も増えます。また、外国籍である場合、住所が日本国内にないと、日本の年金制度からは脱退という形になり、保険料を継続して支払うことはできません。

ただ、国籍に関係なく、日本に住む20歳以上60歳未満の人は国民年金に加入する義務があるので、ご主人がリタイアしても、国内に住所がある間は国民年金の保険料は支払うことになります。

ただし、外国籍の人が年金受給資格(原則、公的年金10年以上加入。国民年金保険料の免除期間等も含む)を満たさないまま日本を離れる場合、それまで保険料を支払っていても、年金(老齢年金等)は受け取れません。その代わりに脱退一時金を受け取ることになります。ご主人がそれに該当する場合、手続きをする必要があります。

また、ご主人の母国と日本では社会保障協定が発効されています。この協定は、日本と母国での年金加入期間を通算できる制度で、結果的に日本で支払った保険料が母国の年金制度に反映されることを意味します。そもそも、母国に在住すれば母国の年金制度に加入することになるはずです。

マカロンさんとご主人の現在の国籍はこの場ではわかりませんが、年金加入期間や母国の年金制度の内容も含め、慌てないためにも事前に知っておく必要があります。まずは、年金手帳を持参して、最寄りの年金事務所に出向き、疑問点の確認や、不安部分を相談されることをお勧めします。
 

相談者「マカロン」さんから寄せられた感想

いつも先生のアドバイスを読ませていただいております。時には厳しい指摘ですが個々に合わせて、また心情に寄り添ってくださる深野先生にごアドバイスいただけてうれしく思っています。

元々比較的、楽天的な私ですが、主人の状況もあり、落ち着いて物事を見れなくなっていたのかもしれません。「同じ生活費が40年以上継続して発生する条件で試算すれば、ほとんどの世帯でお金は大きく足りないでしょう」のお言葉で、正直安心した、というか落ち着けました。

「老後をあまりに心配し過ぎるのは、かえって人生にマイナスの面が強いのではないか。足りないなら足りないなりに、その老後資金で送れる老後を送り、用意した資金で足りない部分は、創意工夫で夫婦なりの豊かな老後生活はきっと送れる」

今、私に必要な言葉をいただいたと思います。ちょっと背中を押していただけたと受け取っております。

そもそも人に聞くことが苦手な私がこちらに応募したことは、今までにない勇気のいることでしたが、思い切って一歩踏み出してみてよかったです。もう一歩頑張って年金に関しても、いただいたアドバイス通りきちんと確認してみます。

漠然としかみていなかった毎月の支出なども、もう少しきちんと把握して毎月の予算を決めようと思います。その上で主人のフルリタイアも現実的に考えていき、予算内で生活し赤字を出さず、現在の資金を移住した後の老後資金にとっていけるよう頑張りたいと思います。本当にありがとうございました。

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教えてくれたのは…… 
深野 康彦さん  
 
 
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金まわり全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。著作に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など

取材・文/清水京武


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