60代からの老後資金の貯め方は?
60歳から老後のお金を考えるときの注意点とは?
60歳になるまでにキャッシュフロー表を作って、老後までのお金の流れを調べてみることをおすすめします。長生きに自信がある方は100歳まで、それ以外の方も90歳くらいまでのキャッシュフロー表を作るといいと思います。(リンクからダウンロード可⇒便利ツールで家計をチェック | 日本FP協会)今後入ってくるお金(給料、退職金、年金など)と、出ていくお金(生活費、イベント費、医療費や介護費(平均額は500万円程度)など)や貯金額などをキャッシュフロー表に入力すると今後の選択肢が見えてきます。
60歳からのキャッシュフロー表を作って、将来のお金が足りなくなりそう、という予測がたった場合は、働き続ける以外に以下の2つの対策が考えられると思います。
【その1】将来受け取る年金を増やす
【その2】退職金を上手に使う
それぞれを詳しく解説します。
【その1】将来受け取る年金を増やす
60代前半で老後資金が心配な人は、将来受け取る公的年金を増やす方法があります。以下の2つの方法を検討してみてください。・将来受け取る老齢基礎年金を増やす
国民年金保険料の納付月数が480カ月未満の方は、任意加入(+付加年金)して年金を増やすことが可能です。国民年金保険料を前納すれば、通常の納付に比べて割引にもなります。また会社員なら70歳まで厚生年金に加入して年金を増やすことも可能です。
・老齢年金を繰下げ受給する
66歳からは年金(国民年金も厚生年金も)の受給を1年繰り下げるごとに、8.4%ずつ将来受け取る額が増えていきます。今の時代、年利8.4%の商品はなかなかありません。年金の繰り下げはお金を増やすうえでも有効な手段といえるでしょう。生活に困らない範囲で、ぜひ年金の繰り下げを検討したいものです。あまり年金が増えても税金や医療費、介護費が上がるうえ、短命だとトータルで受け取る金額も少なくなるので、そこは注意が必要です。
一方で、60代前半なら私的年金である「iDeCo」に加入ができます。60代前半で収入がある人は、iDeCoの掛金が全額所得控除となることから、節税になりますので、検討してみてもいいのではないでしょうか。
【その2】退職金を上手に使う
60歳になった人の中には退職金を受け取れる人もいるでしょう。この退職金もしっかりと活用することが大事です。減らさないための注意点もあわせてお教えします。まず退職金を受け取った人は、信託銀行などの「退職金キャンペーン」定期預金コースを活用するのもいいでしょう。
例としてある金融機関のキャンペーンを見てみます。
・申込金額 退職者:500万円以上1億円以内
定期預金・3カ月・年 0.80%(税引前)
とあります。
金利0.8%で、1000万円を3カ月預けると、利息は約2万円(税引前)になります。金利0.002%の定期預金に1年預けても200円(税引前)なので、退職者だけに与えられる破格の金利といえるでしょう。
また、退職金の運用について考える間、3カ月ごとに複数の銀行に預ければ、ちょっとしたお小遣いになると思います。
一方で退職金の取り扱いには注意も必要です。
銀行にお金を預ける時はペイオフ対策(※)のため、1行1000万円までにして、1000万円を超える場合は銀行を分けましょう。円定期とセットになった投信コースやファンドラップコース等もありますが、高金利の円定期の預け入れが短期間で、投資商品の購入が必要となり、トータルで手数料負けしてしまう可能性があります。退職金を預けるなら定期預金コースだけにしましょう。
また、退職金は、イザというときの虎の子ですから、基本は預貯金として、あまり大きなリスクをとらないようにしましょう。住宅ローンの繰り上げ返済を考えている方も、返済し過ぎないように気をつけましょう。生活資金が足りなくなって、住宅ローンより高金利の借金をしなければいけなくなったら本末転倒です。
※:銀行が破綻した場合、預金者一人に1000万円までの元本とその利息を保護しています。また、当座預金や無利息型普通預金など利息の付かない決済性預金については、その全額を保護しています
まとめ
60代からお金を貯めるメリットは、おもに老後の安心のためです。退職金を手にすると、もっと増やしたいと、リスクの高い資産運用をしたいと思う人もいるでしょうが、シニア世代は運用に失敗した時、取り返せる時間が短いうえ、損を他の収入で穴埋めすることも難しいのです。大金をつぎ込むべきではありません。老後の生活に影響を与えない範囲にとどめましょう。自分で投資の勉強をせずに、金融機関で勧められた商品を買うのは絶対にやめましょう。
最後に、お金は貯めるだけでなく、健康のため、人生を楽しむため、人に喜んでもらうためにも有効に使いたいものですね!
文:辻村洋子(CFP(R)認定者・1級FP技能士・証券外務員一種)
損保会社を定年退職後、ファイナンシャルプランナーに。「お金は人生を豊かにするためのもの」をモットーに、セカンドライフを充実させたい人への家計改善、老後資金の準備、遺言・相続などに関する相談を得意としている。お金の寿命をのばす専門家として相談者の不安や悩み相談を受けている。
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