・不妊に悩む夫婦は約5組に1組です
・不妊治療に健康保険が適用されることになりました
・健康保険の適用には条件があります
・不妊治療とはどのようなもの?
・健康保険の適用となる不妊治療の費用は?
・まとめ
不妊に悩む夫婦は約5組に1組です
国立社会保障・人口問題研究所が行った、社会保障・人口問題基本調査(2015年)では「不妊症の検査や治療を受けたことがある」と答えた夫婦は全体の18.2%、子供のいない夫婦では28.2%と報告されており(*)、現在の日本において不妊は決して珍しくはありません。*対象は初婚の夫婦かつ妻の年齢は50歳未満
《参考》2015年 社会保障・人口問題基本調査
不妊治療に健康保険が適用されることになりました
これまでは不妊原因を調べるための検査や原因が分かった場合の治療など、その一部にしか健康保険が使えず、原因が分からない場合に行う人工授精や体外受精・顕微授精などは健康保険の対象外であり金銭的な面から治療をあきらめる人が少なくありませんでした。しかしながら2022年4月より、これらの治療にも健康保険が使えることとなり、子供が欲しい夫婦にとって朗報となりました。
健康保険の適用には条件があります
健康保険の適用となる不妊治療には、年齢制限と回数制限があり、大前提として「治療開始時に女性の年齢が43歳未満」である必要があります。また回数については、初回治療開始時点の女性の年齢により2区分に分かれており、40歳未満の場合は通算6回(1子につき)、40歳~43歳未満の場合は通算3回(1子につき)とされています。不妊治療とはどのようなもの?
不妊治療はどのようなものがあるのでしょうか。不妊治療は「一般不妊治療」と「生殖補助医療」の2つに大別され、それぞれの治療法は以下のようなものです。一般不妊治療
・タイミング法:排卵のタイミングに合わせた性交の指導
・人工授精:精液を注射器で直接子宮に注入し受精を図る技術
生殖補助医療
・採卵・採精手術:卵巣から卵子を取り出す採卵術、男性であれば精巣内精子採取術など
・体外受精:精子と卵子を採取し体外(シャーレ等)で受精させ子宮に戻す技術
・顕微授精:体外受精のうち卵子に注射器等で精子を注入し人工的に受精させる技術
なお、2022年3月まで「生殖補助医療」には費用の一部が補助される「特定不妊治療費助成制度」がありました。しかしながら健康保険適用に伴い同制度は廃止となります。
健康保険の適用となる不妊治療の費用は?
健康保険の適用となった不妊治療ですが、そもそもどれくらいの費用がかかるのでしょうか。ここではその一部を紹介します。一般不妊治療
・タイミング法:2500円(3カ月に1回、一般不妊治療管理料としてかかります)
・人工授精:1万8200円
生殖補助医療
・採卵術:3万2000円+2万4000円(1個)~7万2000円(10個以上)
・採精術:12万4000円(単純なもの)、24万6000円(顕微鏡を用いたもの)
・体外受精:4万2000円
・顕微授精:4万8000円(1個)~12万8000円(10個以上)
受精が確認できた場合は、受精卵(胚)を培養し、分割が確認できたのちに子宮に戻す胚移植を行います。その場合は以下のような費用がかかります。
・受精卵・胚培養管理料:4万5000円(1個)~10万5000円(10個以上)
・胚凍結保存管理料:5万円(1個)~13万円(10個以上)
・胚移植術:7万5000円(新鮮胚移植)、12万円(凍結・融解胚移植)
上記は「採卵・採精→体外・顕微授精→受精卵(胚)培養→胚移植」の基本的な費用のみであり令和4年4月以降の診療報酬に基づいています。これだけでも不妊治療にかかる費用は高額であることがわかるかと思います。
実際の不妊治療にはこれ以外にも検査費用や各種の管理料、調整加算等が別途かかりますので、これまで健康保険適応ではない不妊治療を受ける方の費用負担は相当なものでした。
今回、不妊治療に健康保険が適用されるということは、上記に上げたような基本的な費用を含め、これまでかかっていた不妊治療の自己負担額がおよそ3割になるということです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は、2022年4月から健康保険の適用となった不妊治療について解説してみました。前項で示したように不妊治療には多額の費用がかかり、特定不妊治療費助成制度対象の治療を除くとこれまでは全額自己負担でした。今後は不妊治療にも健康保険が適用されることになりましたので窓口負担は3割となります。不妊に悩む夫婦にとって朗報といえるのではないでしょうか。
《参考》厚生労働省 不妊治療に関する取り組み