熱中症対策で冷やすと効果的な部位はどこ? 首、脇の下、股の付け根など
適度に冷えたペットボトル持って手のひらを冷やせば熱中症予防になる? どのようなメカニズムなのでしょうか
外の気温に対して体温調節がうまくできなくなると、めまいや筋けいれん、頭痛、倦怠感などの熱中症のような症状が現れます。このときにまず行わなくてはならないのは、体の深部体温を下げることです。
深部体温とは皮膚表面ではなく、体の核心部の体温のこと。私たちは普段、脇の下で体温を測定することが多いと思いますが、深部体温はより体の深部に位置し、実際には直腸温などを参考にします。
深部体温を下げる一般的な方法としては、大きな血管が通っている部位を冷やす方法が知られています。例えば首や脇の下、股の付け根、膝裏などの、大動脈の通り道になっている部分です。これらの部位を中心に氷や氷水を用いて冷やすことで、急激な体温上昇を抑えることができます。
手のひらや顔を冷やすと体が冷える? AVAという血管のメカニズム
上記でご紹介した大動脈の通り道の部分はとても効果的な部位なので、実際に熱中症になってしまったときの対処法として覚えておくとよいでしょう。あわせて、より手軽で日常的にできる熱中症対策法として最近注目されているのが「手のひら冷却法」です。専門的な言葉では「手掌冷却法(しゅしょうれいきゃくほう)」と言います。手のひらや顔には冷やしやすい大きな血管はなさそうですが、なぜこれらの部位を冷やすと効果的なのでしょうか? そのメカニズムのカギは、体の末端部分にある、動脈と静脈をバイパスのように結ぶ「AVA」という血管が握っています。AVAは「動静脈吻合」(どうじょうみゃくふんごう)ともいい、体毛のない手のひらや足裏、頬などに多く分布しています。AVAは普段は閉じられていますが、体温が上昇するとともに開通し、熱を放出して体温を下げようと働くことが知られています。手のひら冷却法は、このAVAを効果的に冷やすことによって血液の温度を下げ、その血液が全身を循環することによって深部体温を下げようとするものです。
手のひら冷却法の方法・やり方・逆効果になる注意点
具体的なやり方をご紹介しましょう。■手のひら冷却法のやり方
- 「やや冷たい」と感じる10~15℃程度に冷やされたペットボトルを準備する
- ペットボトルを手に持り、5~10分程度手のひらを冷やす
これだけです。ペットボトルはどこでも購入できて手軽ですが、もちろんペットボトルにこだわる必要はありません。手のひらが冷やせればよいので、例えば洗面器に10~15℃程度の冷たい水を張り、5~10分間両手をつけるといった方法でも、効率よく体温を下げることができます。
注意点としては保冷剤などの凍ったものや氷のうなど、冷たすぎるものを使わないこと。肌への負担に気をつけて使ったとしても、冷却刺激が強すぎることで、体温上昇によって開かれたAVAが閉じてしまい、逆効果になってしまうことが懸念されます。10~15℃程度のほどよい冷たさを守って行うようにしましょう。
例えば屋外活動やスポーツを行う前に、手や足を水に浸したり、ペットボトルを使って手のひらや頬などを冷やすようにすると、活動時の急激な体温上昇が抑えられ、熱中症予防にもつながります。また寝る前に実践すると、寝苦しい夜をより快適に過ごせることが期待できます。手軽に取り入れることのできる「手のひら冷却法」をぜひ実践してみてください。
■参考書籍
- スポーツ現場における暑さ対策 長谷川博・中村大輔/編著 ナップ