転職のノウハウ

五月病の次は「六月病」……働きすぎの日本人、不調が続くなら7月以降はどうすべき?(2ページ目)

5月に注目される「五月病」はよく知られているが、「六月病」なるものも話題になり始めている。5月には不調を感じなかったがその後不調を感じ始めた人、もしくは5月に生じた不調がいまだ続いている人がこれに当たるといえる。5月、6月と仕事の不調が続く場合、7月以降どうしたらいいのだろう。人材コンサルタントの小松俊明が詳しく解説する。

小松 俊明

執筆者:小松 俊明

転職のノウハウ・外資転職ガイド

プレーヤーとして優秀な人の“昇進うつ”の存在

中堅社員が感じる不調として、新米マネジャーがよく陥りがちな問題がある。自分が部下として仕事をしていた時と同じように、部下が仕事をしてくれないことにストレスを感じる例だ。

このパターンにも季節性がある。昇進した4月から約3カ月が経った頃、部下の顔とそれぞれの特徴も把握し、いよいよチームとして総合力を発揮していきたいと思った矢先に、部下が指示通りに動いてくれない現実に直面するのである。

原因を探してみると、本人の意識や能力の問題であり、話し合っても問題は簡単に改善できない。なぜなら、上司が現場上がりの優秀な社員の場合、日常業務で部下に求めるスタンダードが高くなりがちだからだ。当たり前だと思っていることが当たり前でないことに愕然とすることも多い。

たとえば、新規顧客を訪問する際に顧客についての事前調査を部下に指示したが、その調査が甘すぎて、訪問時に役に立つような情報がまったく仕入れられていなかった。具体的にどこまで調査する必要があるか、そこまで指示しなかったことが悔やまれるが、自分が部下だったときはそのくらいは自分で想像ができたし、わからなければ必ず先輩や上司に教えてもらっていた。このような基本動作は、これまでの仕事の中で身につけておくべきであり、過去の上司は何をしていたのか、恨み節を並べたくもなるだろう。しかしこれが現実なのだ。

優秀な人であればあるほど、自分ができないことの悩みよりも、部下を動かせないことの方をストレスに感じるものである。それもあって、優秀な人もマネジャーになった直後に調子を崩すことがある。6月から7月にかけてそのときが訪れることが多い。
 

7月以降に取り組みたい対処法

ではこのような仕事の不調を長引かせないために、どのような対処法が考えられるだろうか。これ以上のストレスがかからないよう、ストレスの原因を特定して、それを取り除くことができればそれに越したことはない。しかしそれがうまくできない場合、コーピングと呼ばれるストレス対処法が効果的である。

コーピングとは、ストレスをいい方向に転換させる行動のことである。英語の「Cope」=「問題に対処する」という意味から派生した言葉である。ストレスは外部からの圧力や負担を強いられた時に起きる緊張状態であるので、その緊張をほぐすために効果のある行動のリスト、いわゆるコーピングリストを日頃から事前に作っておくことが効果的である。

たとえばサウナに入る、ランニングをする、小旅行に出る、マッサージを受ける、親友と会う、甘いものを食べるというように。さらにできることなら、それぞれの項目に点数をつけておくといい。

たとえば、マッサージを受ける=30点、親友に会う=50点、小旅行に行く=80点という具合に、よりコーピングの効果が高いものには高い点数をつける。何でもやればいいというものではなく、大切なことはストレスの具合に応じて自分で自分自身をねぎらう習慣をつけ、それを自己管理することである。

企業では、社員のパフォーマンス向上やストレス解消のために、さまざまなコーピングを設けている。たとえば、メンター制度、カウンセリング、1on1ミーティング、社内の緑化活動、社員間のランチ会、オフィスにお菓子ボックスを置くなど、これらはすべて社員のために用意している仕組みの数々である。

このような取り組みを個人レベルでも用意して自己管理に役立たせることは、長引く不調を抱え、7月以降はどう過ごそう?と不安になった時に効果がある。
 

会社を辞めて職場を変えるという選択肢もあり

最後に、いろいろな対処法を試してはきたが、5月、6月を過ぎても症状が悪化して辛い・ストレスへの対処法では効果が見られないという場合。そのときは、一度諦めて、新しい職場に変えるというのも選択肢である。

まずは4月からの3カ月間、自分が頑張ったことは評価してほしい。1カ月、2カ月でなく、3カ月も経過したのだ。自分なりにいろいろ工夫して改善するために、十分な時間をかけてきた。つまり、ある程度やれることはやったということである。そのように納得できるならば、今の状態から一旦撤退して、もう一度やり直すことも選択肢に入れてもいいのではないだろうか。

場所が変わり、人が変われば、同じことをしても結果が変わることはよくある。もちろん自分で新たに挑戦したいことがあれば、それを試してみるのもいい。要は、六月病を忘れてしまうほど、大きな環境変化を起こしてもいいということなのだ。それは逃げるということではなく、再出発するだけのことである。

物事には相性やタイミングというものがあって、うまくいく時とそうでない時がある。五月病や六月病と十分付き合ってきた以上、もう一度新しい環境でやり直すことを考え、その準備を始めるには、7月や8月はいいタイミングになる。これからの時期、暑さをしのぎながら自分をねぎらいつつ、秋からの新たな再出発について思案してみるのもよいだろう。


【参考】
※1:世界16地域 有給休暇・国際比較 2021発表(エクスペディア)
※2:労働生産性の国際比較2021(公益財団法人日本生産性本部)
※3:世界の1人当たり名目GDP 国別ランキング・推移(GLOBAL NOTE)
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