男女のコミュニケーションを専門にしている筆者のところにも、その発言に関しての質問をいくつかいただきましたが、私は「昭和生まれが慣れ親しんできた、男同士で通用するちょいワル発言」の典型で、本人はあくまでウケ狙い、ちょっとオラついてみただけだった、と分析しています。
「内輪ノリの会話」に潜む勘違い
「生娘」という、若い女性を性的な対象として表現する品位がない言葉も、「シャブ漬け」という犯罪行為を想起させる言葉も、どちらも「男同士の内輪の会話」として使われるケースはあるでしょう。ウケ狙いのちょいワル発言に対して、同席している誰かが「おいおい(笑)」と軽く突っ込むお約束のやり取りを経てみんながニヤニヤして終わる……。この言葉を放った方は、そのような着地をイメージしていたのでしょう。実際に、この発言で会場内では笑いが起きたとの報道もありました。ところがこの会場には女性もいたので「内輪ノリの会話」にはならなかった。そして参加者女性からの抗議の声が炎上のきっかけになったことは既報の通りです。
こうしたセクハラ発言について周囲の女性たちに聞いてみると、「実は私もこんな言葉を言われたことがあります!」という意見が続々と出てきました。そこでご参考までに、炎上必至の「本当にあったセクハラ発言」をご紹介してみましょう。
事例1.「生娘」発言に類似するセクハラ発言
まずは今回の「生娘」同様に、絶対に言ってはいけないセクハラ発言の数々です。女性社員とのコミュニケーション、のつもりなのでしょうか……。「最近、色っぽくなったよねぇ。彼氏に抱いてもらったの?」
(50代部長に言われました@20代女性)
「○○ちゃんの、あの頑なな対応は絶対処女に違いないよね? 男を知ってたら、絶対あんな風には答えないよ」
(40代の先輩社員に話しかけられました@30代女性)
「経理部のあの人、40代の高齢処女らしいぜ。だからあんなにギスギスしてんだよ。誰かが股間に張ってるクモの巣を掃除してあげないと」
(30代の同期男性の発言が聞こえてきました@30代女性)
かつて某タレントが著名な女性スケート選手に対して「(早く彼氏を作って)女になって表現力を身に付けて欲しい」と発言したこともあったように、「性体験がある=女らしくなる」という固定概念は根強くあるようです。
事例2. 精力を誇示するようなセクハラ発言
この類の発言の主といえば中年層以上の男性を想起する人も少なくないと思いますが、実態はどうも違うようです……。「こいつはまだまだ若い娘をヒイヒイ言わせるような男だから、キミも気を付けたほうがいいよ」
(60代社長が同世代の副社長を指さして@30代女性)
「○○ちゃんがかわいいから、押し倒したくなっちゃうよ。俺のリトルミーが……」
(婚活パーティーで20代男性が笑顔でさらりと@20代女性)
かつて某フリーアナウンサーが大御所芸人Aを「まだ、○○○(某アイドルグループ)の1人や2人は妊娠させられますよ」と評して批判を浴びたことを思い出します。男性の若さや活力を性的な表現で示すのは、女性にとって、ただただ気持ち悪いものですが、男性側はまったくそれを理解していないことがあらためてわかります。
事例3. 犯罪行為を想起させるセクハラ発言
セクハラを通り越して、ただただゾッとする発言を浴びせられた女性もいます。こうした発言の主とは即刻、関係を断ちたいものです。「○○ちゃんってかわいいから、俺の部屋に永久保存しちゃおっかな」
(マッチングアプリで出会った30代男性に@20代女性)
「このインスタの写真、阿佐ヶ谷のお店だよね? 歩いて出かけたってことはあの近くに住んでるんだ。最寄駅がわかれば、あとをつけて住んでるマンションを特定するのは簡単なんだよ。今度○○さんの家、特定して見せようか?」
(30代の会社の先輩に真顔で言われました@20代女性)
「今日着ているVネックの服って、胸の大きさを強調するじゃん。いかにも痴漢してくださいっていうデザインで、男が勘違いするよね」
(付き合って数カ月の30代男性が言いました@30代女性)
発言の主=おじさん、は決めつけ
今回、多くの女性の実体験を通して判明したのは、セクハラ発言は決して「昭和のちょいワルおじさん」に限ったものではないということ。20代や30代の若い世代の男性も、ドン引きどころでなくゾッとするような発言をするのです。そしてその多くが、相手を馬鹿にしたり嘲ったりするつもりは全くないのに無意識のうちに女性を身震いさせているのです。経験豊富な昭和のちょいワルおじさんの場合と違って、この若年層のセクハラ発言は異性とのコミュニケーション経験の不足が原因となっている可能性もあります。
一般男性のみなさんにおかれましては、「なんで俺ってモテないんだろう」と思っているのならば、まずはご自分の無意識発言をチェックすることをおすすめします。
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