定年・退職のお金

コロナ禍でも働くシニアは増えている、年金世代も働く時代に

総務省のデータによるとコロナ禍で64歳以下の就労数が減少する一方で65歳以上の就労人口は増えています。少子高齢化が進む中で、シニアの労働力確保は大きな課題であり、働きやすい環境づくりは国にとっては大命題です。今回はシニアにとって働きやすい環境づくりについて解説します。

川手 康義

執筆者:川手 康義

ファイナンシャルプランナー / サラリーマン家庭を守るお金術ガイド

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《目次》
コロナ禍でも働くシニアは増えている
70歳まで働ける環境づくり
働くと年金が減る制度の緩和
働いた分の保険料が毎年年金に反映される制度の創設
まとめ
 

コロナ禍でも働くシニアは増えている

総務省の『労働力調査(基本集計)2021年(令和3年)平均結果』によると2020~2021年のコロナ禍において、64歳以下の就業者数は減少する一方で65歳以上の就業者数は増加しています。

・前年との増減数
2020年:64歳以下(-61万人)、65歳以上(+14万人)
2021年:64歳以下(-16万人)、65歳以上(+6万人)
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コロナ禍でも65歳以上の就業者数は増えています(出典:総務省「労働力調査(基本集計)2021年(令和3年)平均結果」)

少子高齢化が進む中で、シニアの労働力確保は大きな課題であり、働きやすい環境づくりは国にとっては大命題です。65歳以上の就業者数が堅調なのを後押しすべく、国も働くシニアに対する各種政策を推進しています。今回はシニアにとって働きやすい環境づくりについて、国がどのような政策を行っているのか、解説します。
 

70歳まで働ける環境づくり

少子高齢化を見込み、国は2021年4月から「70歳までの就業確保措置(高年齢者就業確保措置)」を取ることを企業の努力義務としました。

これまでも希望する全員が65歳まで働けるよう、何らかの措置(*)を取ることは企業の義務だったのですが、さらに年齢を70歳までに引き上げた措置を努力義務としたわけです。そのため近い将来「70歳までの雇用確保措置」が義務化されるのは間違いないと思われます。

*「定年の延長」「定年制の廃止」「継続雇用制度の導入」の3つの雇用確保措置
 

働くと年金が減る制度の緩和

働きながら老齢厚生年金をもらう場合、その合計が一定額を超えると年金が減らされる制度を「在職老齢年金制度」といいます。以前よりこの制度がシニアの働く意欲を削いでいるとの指摘がありました。

具体的には年金額と賃金の月額合計が60~64歳であれば28万円、65歳以上ならば47万円を超えてしまうとその一部もしくは全部が減らされていたのです。

これが2022年4月からは60~64歳の方も47万円に緩和されることになりました。60歳以降も雇用継続される場合は気力も体力も十分な方も多く、賃金月額をあまり気にせず働けるのは良いことではないでしょうか。
 

働いた分の保険料が毎年年金に反映される制度の創設

65歳以降の方が老齢厚生年金をもらいながら働く場合、年金をもらう一方で「厚生年金保険料」を払っている方もおられるかと思います。今まではその間の「厚生年金保険料」は退職もしくは70歳に到達しないと年金額に反映しなかったのですが、2022年4月以降は毎年10月からの年金額に反映することになりました(在職定時改定)。
在職定時改定,反映,10月

在職中でも保険料が毎年10月に年金額に反映されます(出典:厚生労働省)

働いた分の年金保険料が毎年反映されることは働く意欲の向上にもつながりますし、現役時代の昇給感覚で毎年収入が増えるのはうれしいことではないでしょうか。
 

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は国の政策であるシニアにとって働きやすい環境づくりを解説してみました。現役時代同様に働く意欲のあるシニアにとって、働くための環境や働いたことが評価される仕組みの整備は当然のことであり、これまで不利益を被るような制度があったことが不思議なくらいです。人生100年時代といわれる中、年金をもらいながら働くことも、充実した人生を得られる一つの選択肢ではないでしょうか。

〈参考〉
労働力調査(基本集計)2021年(令和3年)平均結果
高齢者雇用安定法改正の概要(厚労省)
年金制度改正法(厚労省)
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