「呼び方一つ」で意識が変わる! 既成概念を壊す呼び方改革
一般的な呼び方を変える狙いはどこにあるのだろう
「一軍・二軍」、「レギュラー・控え」、「メンバー・メンバー外」など、試合開始から出場する選手と試合開始時に出場することができない選手を分ける言葉はいろいろあります。しかし「二軍」「控え」「メンバー外」といった呼び方でまとめられる選手はどのように感じるでしょうか。プロとして活躍する選手であれば、「一軍になれるようがんばろう!」と意欲をかき立てられるかもしれませんが、ここには「一軍の選手を振り落としてでも、自分が這い上がるんだ」という一種の競争心が芽生えます。また一軍の選手がある日を境に二軍へと変更されると、どうしても「降格させられた」という印象を持ってしまいます。こうした心理が選手に与えるストレスは少なくないものです。
「チーム一丸」を実現するグループ分けのコツ
一方「BIG組」と「BOSS組」と呼ばれた場合はどうでしょうか。まずどちらが優れていて、どちらが劣っているといった優劣の印象がなく、どちらも対等でフラットな印象を受けます。新庄さんは「BIG組」「BOSS組」それぞれのキャンプ地にも宿舎を準備することから、どちらのグループに対しても選手をみる、指導する機会があることがわかります。選手としても、たとえば「BIG組」から「BOSS組」に変更されても、「BOSS組」で新庄さんにプレーを見てもらうことは可能ですし、「ここでできることをやっていこう」と前向きに受け止められるのではないでしょうか。脳神経外科医であり、多くのスポーツチーム、アスリートに対する指導経験のある林成之さんは、その著書の中で「チーム内での競争を生まないために」呼び方を変えることを提案されています。「チーム一丸となって戦おう」と選手たちを鼓舞したところで、「一軍」「二軍」と分けることはチーム内での競争を生み、真の「チーム一丸」は本能的に実現がむずかしいとわかっているからです。
「最後の砦」と呼ばれる選手のメンタリティ
最後の砦と呼ばれるだけで何とかチームのために活躍したいという気持ちが芽生える
呼び方一つで選手の受ける印象を変え、一人ひとりが大切な戦力であることを暗に示している新庄さんの改革は、スポーツにたずさわる指導者やビジネスの現場においても参考になるところが大きいと思います。普段何気なく使っている呼び方も、言葉を変えるだけで印象が変わり、チームとしてより大きな力を発揮するきっかけとなるかもしれませんね。
■参考書籍
『勝負強さの脳科学』林 成之著/朝日新聞出版