広島電鉄の路面電車について
広島電鉄(略称「広電」)は、JR広島駅前の広島駅電停から市内をめぐる6路線の軌道線(ほとんどが道路上を走る併用軌道)と広電西広島から広電宮島口までの鉄道線(道路上は走らない)を合わせ35.1kmの路線に路面電車を走らせている。広島電鉄では、系統(ルート)のことを号線で表記する。例えば、広島駅から本線を西に向かい、繁華街の紙屋町東を出て左折し、宇品線を走って終点の広島港に至る系統を1号線と呼び、電車の行先表示にも大きく「1」と書いてある。
あるいは、本線を広電西広島まで行き、そのまま宮島線に乗り入れて広電宮島口が終点となるのは2号線である。広電に乗車するときは、路線名よりも1号線、2号線という系統番号が重要なのだ。系統は、1号線から9号線まであるけれど、4号線は欠番なので、系統はすべてで8つになる。
広電を利用する旅行者の主たる目的地は「原爆ドーム前」と「広電宮島口」
広島を訪問する旅行者にとって広電を利用する機会が多いのは、広島駅から繁華街に繰り出してお好み焼きのような食事をするとき、あるいは原爆ドームや平和公園を訪問するときだろうか。紙屋町までのどこかで食事や買い物をするのなら、1(広島港行き)、2(宮島口行き)、6(江波行き)号線のどれに乗ってもよい。原爆ドーム前電停で降りるのなら、2号線か6号線だ。いずれも、行先表示に原爆ドーム前と書いてあるので、不慣れな旅行者にも安心だ。広島駅から原爆ドーム前までは、15分(道路事情により遅延が生じることがある)、運賃は190円でSuicaなどのICカードも使える。 世界遺産に登録されている厳島神社のある宮島への玄関となる宮島口へ行くには、広島駅からJR山陽本線と広電2号線の2つのルートが競っている。
ルート | 所要時間 | 運賃 |
---|---|---|
JR山陽本線 普通電車 | 27分(昼間は1時間に4本) | 420円 |
広電2号線 | 70分(昼間は1時間に6本) | 270円 |
所要時間では、JRの方が圧倒的に速い。しかし、原爆ドーム前から宮島口へ向かうとすると、以下のようになる。
ルート | 所要時間 | 運賃 |
---|---|---|
広電2号線 | 54分 | 270円 |
広電7号線、横川駅でJRに乗り換え | 42分程度(乗り換え時間含めて) | 520円 |
広電の超低床式車両たち
広電では新型の超低床式車両が目に付く。歴史を辿ると、1999年にドイツから最初の編成を空輸したことで話題になった5000形が始まりである。愛称はGREEN MOVER。5車体6軸の関節式連接車で全長は30mをわずかに超える。これは、国内の路面電車運行の規則を越えてしまうため、国土交通省の特認を受けている。5000形は、もっぱら2号線で使われている。 2004年に登場したのが5100形、愛称はGreen mover max。純国産でやはり5車体連接車だが、こちらは3台車連接固定編成になっている。法令に従って全長は30mぴったりに収めている。なかなかにスタイリッシュで、もっぱら1号線(広島駅~紙屋町~広島港)で使われる。 2019年にデビューしたのが最新の超低床式車両5200形で愛称はGreen mover APEX。見るからに斬新なデザインで近未来的な都市交通の乗り物として、欧米の新しい路面電車と比べても遜色のないスタイルだ。一部の例外をのぞいて2号線(広島駅~宮島口)を走っている。 Green mover シリーズは全長30mもあるので、1号線と2号線以外では走行できなかった。そこで、すべての路線で走ることのできる超低床式電車として2013年に誕生したのが1000形、愛称Green mover LEX(Light Excursion<小旅行>から作った造語)である。全長は18.6m、3車体2台車連接固定編成というミニサイズで、現在18編成あり、2号線以外のすべてのルートで活躍中だ。真ん中の車体がロングシート、そのほかはクロスシートを中心としたユニークな車内となっている。広電の単車も名車揃い
広電には、低床式ではない連接車両、単車と呼ばれる1両だけのオーソドックスな路面電車車両などバラエティに富んだ電車も走っている。 単車では、他の都市で活躍していた路面電車が第2の人生として広島で過ごしているものが何両もいる。そのひとつが京都市電だ。40年以上も前の1978年に京都市電は廃止されたが、その後、広島で1900形として15両も活躍している。いずれも、京都ゆかりの「東山」「比叡」「金閣」「銀閣」といった愛称をヘッドマークとして掲げているので、すぐ分かる。 元神戸市電だった1150形は1両だけ残っている。広島の姉妹都市であるドイツのハノーファーの路面電車を模し、楽しい動物のイラストが車体に描かれている。また、そのハノーファー市から譲り受けた車両が、通称「ハノーバー電車」(ハノーバーは英語読み)。異国情緒豊かな電車は、現在、12月にイベントとして走るクリスマス電車に用いられ、2021年も元気な姿を見せてくれた。 他には、1945年の原爆で被災したものの復興して広島のシンボルとなっているのが「被爆電車」だ。2両が今でも朝のラッシュ時を中心に活躍中だ。
広電の特色ある電停
広電の電停は他の都市のものと大差ないけれど、特徴あるものがいくつかある。まず、JR広島駅前の広島駅電停。「のりば」と「おりば」が分かれているので整然としている。「のりば」も1、2、6は同じ場所、すぐに左折してしまう5号線のみ別ホームとなっていて分かりやすい。 広電西広島(鉄道線の宮島線の起点ともなるので駅と称する)および広島港電停は巨大な屋根で覆われたユニークな造りで目を惹く。広島港電停は港の旅客ターミナルと一体となった構造で、瀬戸内海に浮かぶ江田島や四国の松山へ向かう航路の利用者には便利であろう。広電は電車のルートも多岐にわたっていて見どころが多く、わずかな字数では書き尽くせない。今回は車両を中心に紹介したが、また機会があれば、別のアプローチからガイドすることとしたい。
広島電鉄の公式サイト(電車情報)
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